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魔法のペン
テスト開始から十五分経過。
私の目の前には、氏名だけが書かれた解答用紙が置かれている。
これでは、憧れの彼と同じ高校には行けないだろう。
(親友のマユも彼が好きだって言ってたし、諦めるしかないかな)
そう思った瞬間、私の筆箱から一本のペンが宙に浮かび上がった。
それはおととい拾ったペンだった。
驚きの余り声を失った私の前で、ペンは白い紙を解答で埋めていく。
心の中で、私は歓喜の声を上げた。
もしかしたら、これはあるかもしれない。
私は自信満々で解答用紙を提出した。
翌日、先生は不安そうに私の顔を覗き込んだ。
「お前、どうした?」
まさか変な解答でもしてしまったのだろうか。
「急に勉強ができるようになったな! よくやった!」
以来、私はそのペンを”魔法のペン”と呼び、テストのたびに使った。
入試本番。
いつものように魔法のペンを机の上に置く。
しかしペンは答えを書かずに、向こうへ飛んで行ってしまった。
なぜ?
その答えはすぐに分かった。
ペンは、同じ高校を受験している親友のマユの手の中へ収まったのだ。