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クマさんのきぐるみ
僕はデパートの屋上のベンチに座りながら、ピンク色のクマのきぐるみが幼い姉妹に風船をあげているのを、ぼーっと眺めていた。
きぐるみのお腹にはファスナーがあり、クマはそれを開けて中へ入るように促す。
姉妹は喜んで、代わる代わる中へ入って遊んでいる。
その時、外へ出ようとした妹が転んでしまった。
すると母親が妹に気を取られているうちに、クマは中に姉を入れたまま、走って逃げ出した。
まだ母親は気付いていない。
中の女の子も、遊びだと思っているようだ。
しかしクマは、そのまま一人でエレベーターに乗る。
エレベーターの扉が閉まる前、クマの視線が僕と合った。
クマは、貼り付けられた笑顔を僕に向けて、手を振る。
僕も手を振り返して、去っていく姿を見届けた。
僕は犯罪コレクター。
面白い犯罪者から犯行予定を金で買って教えてもらい、奇妙な犯行をビデオに収めるのが趣味の、ただの一般人である。
脇に置いてある隠しカメラを回収した僕は、野次馬をさけて下り階段から帰途についた。
帰ってから映像を観るのが楽しみだ。