一幕
昔々ある所に、とても立派な性格をしていて、他人や集落の事を常に案じ続ける慈悲深い、しかし右腕だけが異様に太い若者がおりました。
ある日、若者は言いました。
「ぁぁ、儂σ腕はと〃ぅUτこωなに太ぃσた〃Зぅか★農作業にUτも、考ぇ事をするにUτも不便τ〃ィヵ冫ゎぃ★」(注・ギャル文字;筆者の耳には若者の台詞回しが独特でこのように聞こえた)
若者は右腕だけが異様に太い事をこの上なくコンプレックスに感じておりました。
(・・・性格もルックスも完璧なのに、どうしてなのだろう。どうして右腕が大きいのだろう。
今ゆっくりと過去を振り返り、一瞥した限りでは、自分には何も特別なことはなく、罪など何一つなかったと思う。
例えば列に並ぶときは必ず端の方に立ち右腕を解放する良心を覚えているし、村の仲間たちと食事をするとき太い右腕を皆で囲み、その上に弁当を乗せ愛嬌をふりまきもした。失恋した後輩を手のひらで転がしつぶさにあやした時もあったな。
この右腕で決して人を傷つけたり法を破ったりしたことなどなかったというのにな。どうしてこんなに心がつらいのだろう。ああ神様仏様、この哀れな子羊を助けてください、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・)
ところが、いつまでたっても右腕は新品のドラム缶並みの張と艶を誇り、変わることはありませんでした。それ故に、若者はこの不条理な問いかけに出口を作ることが出来なくなって、ある日、自嘲気味に呟きましたとさ。
「右腕ょ、右腕ょ、もUゃぉ前は儂σ本当σ右腕τ〃はな<τ、右腕に似たなにかなσかぃ?」(注・ギャル文字)
「あぁん!?なんだって?良く聞こえないのだが!?」
右腕から突然、およそ73デシベルの声が聞こえ、若者は大層驚きました。若者はすぐに右腕に何か異常がないかよく観察しましたが、いつもの通りの異様に太い、丸太の様な右腕で、どこにも変わりありませんでした。
「今何か聞こぇたょぅた〃か〃★気Nせぃかな★」(注・ギャル文字)
「おおい!もしもしもしもし!まっとうな言葉でしゃっべってくれねえかなぁ、若者さんよぅ」
「!? 誰だ貴様は!?」
「まともに喋れるんじゃあねえかよぅ。もったいぶってかっこつけて話しているから、陰であれやこれやと囁かれるんでぃ」
どういうわけか、若者のこれまでの全てを見通したような言い方に真実味を感じ、若者は面食らいましたが、基本的なプライドが尋常ではないほどに高かったので、緊張感が吹き飛び、すぐさま怒鳴り返しました。
「貴様・・・この私に向かって詰まらん口上を、事もなしに上から目線でのべてたてるとはな。何者かは知らんが、くどくどと舐めへつらう者を生かし放っておいたことはない。命が惜しければ、手早く素性を説明するのだな。さもなくば・・・」
若者は右腕を振り上げ握り拳を創って見せましたが、どういうわけかいつものように力が入らず、そのままずるずると落下し、ついには動かなくなりました。これまでになかったおかしな状況にいよいよ若者は困惑しました。
「「いつも通り」、だなぁ?確かになぁ?おめぇは何か不満があるとコイツを・・振り回し、それを遠ざけようとする。何故だか、分かるかい?」
「何故だと?知ったような口を。言ってみたまえ、何故なんだ?さあ言ってみたまえ!」
「恐れだ。おめぇさんの裏側には恐れが眠っている」
「・・恐れ・・・だと・・?」
話が突然何か人間的というか、BLEACH的(KBTIT)な、本質的な雰囲気になりかけたので若者は疑問を一足飛びして本題に戻りました。
「チッ、下らん世迷言は後にしてくれ、結局貴様は何者なのだ。どこにいるのだ」
「俺のことかい?まぁそう焦らずともすぐにわかるさ・・・・おっと、そう眉間にキツいしわを作ってくれなさんな。はあ、わぁったよ、言うよ、つまり、俺は右腕だよ。よぉう、若者さん、改めてこう話すのは、全くすったもんだにこっぱずかしいねい?」
流暢な言葉を若者に受け渡すその右腕とやらは実に、一人の人間を相手しているかのような、達者な印象を若者に与えました。言葉の一つ一つが確かで、慣れていました。しかしそれでもどこかで何かが欠けている様な危うさを、無意識の深い部分で感じました。
若者は目をつむりうなります。どのような時でも事態を冷静に傲慢に把握することは、異様に太い右腕ゆえのお茶目な環境に培われた若者の素晴らしい慢心の一つではありましたが、それはすぐに定まった考えをもたらしました。
「貴様、私の右腕だといったな?どれ、そこに材木が置いてある。今月分の薪割をまだしていないのだ。私の右腕を名乗るのであれば、役に立って見せるのだな」
「薪わりぃ?なんだってそんな肩のこるようなことをしないといけないんでぃ。」
「フン。ならば貴様は「私の」右腕ではなく、右腕に関係した何者かという訳か。つまり・・・目的がある」
「・・・へぇ・・・奴さん、なかなか頭を回せるようで」
双方押し黙り、疑い深い、張り詰めた空気が家屋の中をぬるぬる流れだしました。どちらからも言葉の封を切る気配がありません。若者はいやしくも場の空気に押され字数を埋めるために喋ったのであり、特に頭は良くないので、この先に来る怒涛の展開に対処する自信がなく黙秘を選ぶしかありませんでした。先ほどの発言は何かの読み本の四コマか何かで使っていたセリフであって、悲しい事にオリジナリティなどありませんでした。しかしまた右腕と自称する者も同様に、意外な洞察力を見せた若者の反撃にうかつな動きを見せられず、室内は微妙にべたべたした静けさに支配される事を選ぶしかありませんでした。
木の板に付いた四枠の窓から見える、楠木に伸びるオレンジの日差しがだんだんとその傾斜を緩やかにし、ようやくカラスがかあからと鳴き始めて、二人はハッとしました。
「「晩御飯だ!準備をしないと!」」
終
{略注}
σ→の U→し τ→て ω→ん З→ろ ★→。 N→の <→く
(作者・気まぐれな部分 編集 左指 出典・筆者の脳内)
(この作品は筆者が夢で見たつまらない出来事を文章化したものであり、いかなる絶対の解釈・意味は存在致しませんのでご了承ください。また、筆者がこの夢の続きを見ることができ、それも第三者的な視点で観察することが可能であり、朝起きたときに覚えていた場合のみに続きがありますので、続刊をお求めの場合はご注意ください。尚、ギャル文字については、若者の発音にくねくねとした気色悪さがありうまく聞き取れなかったため、個人的に手を加え編集して記述致しました)
「筆者の見解」
右腕の肥大化した人間とはいったい何を意味するのか、定かではない。心理学的に言えばストレスとか欲望の顕現した状態でもいうのだろうか。さらにその右腕を自称する何者かが、意志を持って、若者に語りかけているところをみればそれ自体が強い意味を含んでいる気がしてならない。
しかし、あの時の現場を起こしてみれば、より明らかなる物的証拠を思い出す事が出来た。筆者は起床時に左腕を枕にして寝ていたことに気が付いたという事・・・そう、痺れていたのだ!この事実は夢における深い影響をもたらしたのではないかと筆者は考えている。麻痺した左腕に対する、右腕の警句の様なものなのだろうか?だが、若者の実情を初見で何故か知り得ていることについては、全くの謎だとしか言いようがない。夢ほどに自由で滅茶苦茶なルールを持っている現象を筆者は他には知らない。もしこのgdgdの続きを知ることが出来たならば、興味の残っているうちは編集作業を前向きに検討するところではある。




