剣士スキル解放
モンスターとは集団で行動し尚且つ群れの長が必ずいる。
この状況で見ると群れの長はあの体中傷だらけの奴で間違いない。
俺は静かにベールハウンドを観察していた。
「クソ、今動いてあいつらが襲ってきたらフィールが危ないどうするべきか」
思い出せば俺はこいつらを氷漬けにしただけで倒しはしなかった。
考えが甘かった。
あの状況でフィールを助けることを優先したため、助けたことに満足して倒すことを忘れてたからこんな状況になってしまった。
これは俺の不始末だ。
ただこの場でフィールが目を覚ますと厄介だ。
下手に叫ばれたりしたら困る。
なるべく静かに攻撃だ。
そう思っていると突然ヘルプが表示される。
「馬鹿! なんでこんなときに……ん?あいつら気づいてないのか?」
ベールハウンドはヘルプが見えていないらしい。
好都合だ。
それで何が書いてあるんだ。
『04 照準操作
魔法を発動時、使用者は照準を操作することが出来ます。
魔法とは体内で魔力を手に集め放つのですが、それを連魔の応用で手以外からも発動させることが可能です。
その場合は、発動させたい場所に意識を集中させ魔法陣を展開します。
そうすることによりそこから魔法を発動可能にできるのです』
なるほど、この状況に持って来いのヘルプだな。
えーっと、確か、意識を集中させて魔法陣を展開させるんだっけな?
「こうか?」
宗一郎の頭上に小型の魔法陣が展開された。
次に発動したい魔法は、取り敢えずルーンファイアで、集団攻撃に変えよう。
無詠唱で魔法を発動させる。
魔法陣に魔力が流れていくのを感じる。
魔力が溜まったのか体から流れていく魔力が止まった。
「――ルーン・バイト・ファイア」
強く心のなかで叫ぶ。
すると魔法陣から龍のブレスの様に炎が燃え広がる。
ベールハウンドは抵抗する間もなく焼かれ消えていく。
そこにドロップしたアイテムが転がっていた。
静かに立ち上がりそれを拾いにいく。
「集団攻撃にするとブレスみたいになるんだな」
初期のルーンファイアは火球が敵に飛んで行くスキルだが、バイトで集団攻撃化するとブレスに変化する。
予想では火球が無数に乱射されるのかと思ったが違ったようだ。
一先ず、危険は去った。
フィールは未だに起きる気配はない。
まぁ、疲れているのなら起こす必要はない。
それに焦って街に行く必要もないし。
フィールが起きるまで俺は実験をすることにした。
さっき覚えた照準操作とバイトスキルの実験だ。
「意識を集中すればどこにでも魔法陣は展開出来るみたいだな」
試しに背中に意識を集中して見ると背中に何か浮かび上がった感じがした。
「展開できる魔法陣は最大で3つかこれは厳しいな」
一応魔法陣は連魔も同じ数であった。
使い方を後で考えておかないと。
「次はバイトスキルだな。さっきルーンファイアで使ったし今度はルーンブリザードでやってみるか」
練習として魔法陣を展開させそこから発動させる。
腹部に意識を集中させ魔法陣を展開させ、そこに魔力を流し込む。
魔力が溜まったのか供給が止まる。
そして強く心のなかで魔法を叫ぶ。
「――ルーン・バイト・ブリザード!」
魔法陣にトゲのようなものを感じる。
すると魔法陣から氷柱のような柱が飛び出す。
飛び出した氷柱は地面に突き刺さると、そこから無数の氷のトゲが突き出る。
あれは少し危険だ。
魔法陣に意識を集中させ、展開した魔法陣を消すとトゲのフィールドも消え、ただの地面に戻る。
結果としては冷気ではなく氷のトゲが出てきた。
魔法はそれぞれ形が違うようだ。
だが今回の実験でそれなりに新要素は覚えた。
今回は良い収穫があったと一人思っていると、フィールが目を覚ました。
「おはようございます。少し眠りが深かったようです」
「そうみたいだな」
「あれ宗一郎様、いいことでもありましたか?」
「ん? なんでだ?」
「お顔がとても緩んでおりますので」
「まぁフィールが寝ている間に色々とな」
「もしや私の…………」
「それはないから心配するな」
「そうですか残念です」
子供のくせにどこで覚えたんだその知識。
「では参りましょうか!」
「そうだな」
フィールは立ち上がりゆっくりと前へ歩き始める。
足取りが軽いように見える、疲れは取れたようだ。
少し歩くと先に街が見えた。
マップを開くとコルンと表示されていた。
今日の目的地にはなんとか着いたようだ。
「あれがコルンの街らしいぞ」
「とても大きいですね! 宗一郎様は行ったことありますか?」
「ないな。初めてだ」
この世界に来てからロクな場所に行ったことがそもそもないしな。
最初は森の中だし、街では追い払われるし困ったものだ。
「私も初めてなので楽しみですね! 何があるのでしょうか」
興奮も抑えとけよまた疲れるぞと心なかで言っておく。
あの街ではルーン種のことは内緒にしておかないといけないな。
下手に漏らすとまた追い払われるかも知れない。
「あ、金どうするかな……」
そういえばこの世界の通貨が銅貨や銀貨などに対して俺は何故かRだ。
このままでは買い物が出来ない。
ロクに食べ物を食べていない腹が減っては何とやらだ。
そうだ、フィールに渡したら通貨変わるかな?
試しにフィールに持たせてみることにした。
「フィール、このコインを持ってみてくれないか?」
「何でしょうか? これは? あれ、銅貨に変わりましたよ!」
よし成功。
これなら食べ物が買える。
手元にあるコインを全てフィールに管理してもらうことにしよう。
「魔法のコインだ。悪いがこのコイン全部管理してくれないか?」
「いいですけど、多いですね」
ざっと五百枚はあると思う。
「どうだ重くないか?」
「大丈夫ですよ。銅貨は軽いので大丈夫です」
「そうか」
この世界の銅貨って現実での一円位の重さだろうか。
力のないフィールが軽々と持ち上げている。
街に入ると真っ先に目に止まったのが街の中心にある樹だ。
近寄って見ると看板で神樹と書かれていた。
「まずは食べ物と泊まる所を探すか」
「そうですね」
街は広くどこに何があるのか探しに行くのが面倒だ。
街の中でルーンファストを使用しようとしたが、人目が多いのでそれは止めた。
適当に歩いていると宿屋のような店を見つけた。
中に入ると受付があってわりと作りが現実の旅館に近い。
「あの二人で一部屋お願いしたい。空いてるか?」
「はい、空いております」
「じゃあそこに二日程泊まる。いくらだ?」
「銅貨30枚になります」
普通に安かった。
もっと高額かと思ったが以外に安くさらに三食お風呂ときた。
なんか現実の世界で泊まりに来たように思えるが、ここはゲームの中だ。
一応三食付きなのでご飯は買う必要がなくなった。
あとは特にすることもない。
夕飯まで街をぶらりと回る。もちろんフィールも一緒だ。
「あんちゃん! ちょっとうちの武器どうだい?」
このセリフどこかで聞いた気がしたが気にしないでおこう。
武器屋の親父に呼ばれ見に行くと、剣や斧、それに槍といった武器が豊富に揃っていた。
だがどこを見ても杖がない。
おそらくルーン種はここでも嫌われる存在なんだろう。
ひと通り目を通して気になったのは剣だ。
「あんちゃん。目がいいねぇ、それは俺が制作した剣の中でも強化がすごいやつなんだぜ! どうだ買うか?」
買うかって言われてもな俺魔法しか使えないしな。
そう思っていたら急に何かが解放された。
メニューを開くと、
『剣士スキルが解放されました』
は? 剣士スキル解放?
驚くことに新たなスキルを解放させてしまった。
普通転職とかしないと解放できないはずなのになんでだ。
そう思っているとヘルプが表示された。
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