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二人の瞳

 少年は淡々と話し始めた。


「僕が考えているのは、ゲーム内で自らの精神に衝撃を与えることで現実の自分を目覚めさせる方法です」

「そんなことが出来るのか?」

「出来るか出来ないかは僕には分かりませんが、自信はあります」


 少年は出来ると思っているみたいだが、俺には無理に感じる。

 だが一応は最後まで聞いておく。


「それでその方法は?」

「簡単です死ねばいいんですよ」

「え?」


 またもや少年の口から驚きの一言が飛び出した。

 

「何を驚いているんですか、どうせ人間なんて死ぬ生き物なんですし驚くこともないじゃないですか」

「そうかもしれないが、いきなり死ぬって言われてもな」

「怖いんですか?」


 死ぬのが怖くない人間なんているはずがない。

 俺は普通の人間だ、なら当然の如く死ぬことに対して怖い位は思うのが当たり前と言える。


「お前は怖くないのか?」

「僕は怖くないですよ、これどうせゲームなのでね」


 少年は言い切った。

 その瞳には何の恐怖も感じられない。

 少年の瞳を見た瞬間、忘れていたと思っていたはずの記憶が蘇った。


「悪い」


 それだけを言い残しそこから離れた。

 俺は急に少年が怖くなったのだ。

 俺と同い歳かそれよりも少し歳下の少年に恐怖を抱いた。

 たった少し会話を交えただけなのに、底知れない恐怖に襲われた。

 その場から逃げるように三人と歩き出す。

 すれ違う人々の声が耳に響く。


「一家心中ですってよ」

「可哀想にね」

 

 決してそんなことは言っていないはずなのだが、そう聞こえてしまう。

 次第に俺は一人駆け出していた、多分あの場から逃げたかったのだろう。

 小高い丘の上で座り込んで、うずくまる。

 あの時の少年の瞳が、昔の出来事を思い出させる。

 


 ――――宗一郎悪いな父さんと母さんはもう疲れたんだ。


 今でもあの時の光景は鮮明に思い出すことが出来る。

 俺の両親は今から五年前に火事で死んでいた。

 父親の会社が倒産し、生活は厳しくなっていき最後は一家心中とまるでドラマのような出来事だった。

 それにあの時の二人は本当に疲れていたのだろう、今にも死にそうな目をしていた。

 徐々に燃えていく家。

 息が苦しく意識が薄れていく中、薄っすらと見えた二人の瞳は死への恐怖など微塵も感じさせなかった。

 そしてそれを見たが最後、俺は意識を失った。


「クソが…………」


 あの少年の瞳は火事場での二人を彷彿と思い出させる。

 あの火事のなか奇跡的に生き残った俺は、親戚にお世話になることになったのだが、何もかも全てを失った。

 友達は皆俺を避けるようになっていき、一人になった。

 今思えば俺のボッチの始まりはその頃だったのだろう……。

 結局忘れたつもりだったが、俺はあの出来事を完全に忘れることは出来なかったみたいだ。

 

 



 

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