表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫耳メイドは勇者の夢をみる―Brave Rune Online―  作者: 五月猫
第一章 ようこそBrave Rune Onlineの世界
21/67

01 陽菜ビフォーアフター

陽菜の変化についてと、管理者倉井の計画。

 空を見上げる。

 綺麗な青空に眩しい太陽、現実と何にも変わらない空。

 手をギュっと握り締める。

 ちゃんと握っている感覚がある。

 少しづつだが、ゲームの世界に自分が入り込んだことに実感が湧いた。


「先輩! 凄いですよ! ゲームの中です! あれ? 先輩?」


 先輩と呼ぶが返事がない。

 無視されたのか辺りを見回すが、姿がない。


「あの、さっきまで私と一緒にいた男の人を見ませんでしたか?」


 近くにいた男女二人組に駆け寄り聞いてみた。


「見てないですよ」

「宗一郎のことか? どこ行ったんだ」


 宗一郎と言う名の男はそこにいなかった。

 どこを探してもいない。

 どこか心がもやもやし始める。

 一人になってしまった不安と、それとは別の何かが心の中を蠢く。


「どうしよう、とにかく先輩を探さないと!」


 今はまず先輩を探さないと、と言い聞かせ不安を押し殺す。

 それからすぐに次の街を目指すことにした。

 もしかしたらルーデリアにはいないのかも知れない、そう思い冒険の準備をする。

 まずは武器と防具が必要なので街にある武器屋と防具屋に向かう。

 

「お、いらっしゃ! 可愛いねえ何かお探しかい?」


 気さくそうな店主が出迎える。

 店内は剣や槍、斧など様々な武器が売ってある。

 どれもよくRPGゲームで見掛ける初期装備だ。

 銅の剣に鉄の槍、石の斧などだ。

 その中で一際目立っている剣に目が止まった。

 丁寧に壁に掛けられ、見るからに高そうなである。


「おじさん! あの剣は売り物ですか? それとも展示品?」

「あれか? あれは売り物ではあるが展示品だな、お嬢ちゃんはあれが気になるのか?」

「少しだけですが、美しい物だと思いまして」

「そうか…………」


 武器屋の店主は腕を組み考え始めた。

 そして、突然何を思ったのかいいだろう、と言った。


「その剣お嬢ちゃんにくれてやる! 俺が持ってても飾りにしかならねえしな、使ってくれ!」

「いいんですか? 値段を聞いてもいいですか?」


 一応初期からそこそこの金額は支給されているが、ずば抜けて高い物だったら買えない、なので値段を聞く。


「お代はいいって、飾りだからな、お嬢ちゃんが大切に使ってくれたら俺は満足だ!」

「そんな申し訳ないですよ!」


 店主はすぐに壁から取り外すと、鞘にしまい陽菜に渡す。

 少し思うところがあるが、店主の心意気に感謝してありがたく受け取る。

 

「それは冥剣ファリスとかいったはずだ」

「ありがとうございます!」


 深々とお辞儀をし店を出た。

 いまいち満足は行かないが、一応武器の確保は出来た。

 次は防具だ。

 隣に立つ店に入る。

 店の中に入ってすぐに思うのは初期の街なんだなあ、ということだ。

 品揃えは悪くもなく良くもない、武器屋と変わらず様々な材質の防具が目に入る。

 だがその中でも一際目立っている防具が合った。

 取り敢えず近寄って色々な角度から鎧を見る。

 全てが白い。

 鎧・小手・足 全パーツが白く染め上げられていた。


「それが気になるのかい?」

 

 さっきとは対照的な感じの店主が現れる。

 

「はい、これは売り物ですか?」

「一応はね、でも買う人はまずいないね」

「そうですか……」

「それあげようか? 正直店にあると他の防具が目立たなくてね、困っているんだよ」

「いいんですか?」

「ああ、いいとも、ほら」


 鎧を木製の台座から取り陽菜に渡す。


「お金はいいからね」


 武器屋と同じことを言った。

 正直これも満足はしないが貰った物なので使わないでおくのは勿体無い、なのですぐに装備する。

 店主は喜んでいる。


「毎度! またここに来な次は作ってあげるから」


 ここでも深々と礼をし、店を出た。

 すると誰からかメッセージが届く、先輩のかもしれないと思いすぐに確認する。

 送り主は倉井十三と書かれていた。

 

『ようこそテスターの皆さん 私はこのゲームの管理者倉井 十三です。


 これよりあなた方には私達の実験に付き合ってもらいます。

 皆さんは実験体モルモットなのです。

 ログアウトされると困るのでこちらで不可に変更させてもらいました。

 ではしばし実験が終了するそのときまでゲームをお楽しみください』


 内容に驚く。

 そこにはログアウトが不可になったと書かれていた。

 

「え、何?これ……」


 さらに下にスクロールするとそこには何やら宗一郎について書かれていた。


『間宮陽菜さん、桐梨宗一郎はあなたとの約束を忘れ、現在は一人で冒険をしています。

 さらに彼は、「陽菜と一緒にいるとこっちは疲れるんだよな、あんなのとは縁を切った方がいいかもしれないな」と話しておりました。

 いつまでも共に居たいと願うなら、これをお使いください。

 きっと素晴らしい結果をもたらしてくれます』


 すると一つの小瓶が手元に出現する。

 

「先輩がそんなことを思っていたなんて……あのとき約束したのに……」


 もやもやが次第に大きくなっていく。

 は、と気付き手元に握っている瓶に目を移す。

 

「これがあればもう一度先輩との仲をよく出来る、なら!」


 正常な判断は出来なくなっていた。

 普通の人が見たら、そんな得体の知れない物を飲むなんて気が引けるはずだが、今の陽菜には飲むだけで仲を戻せる素晴らしい物しか見えてはいなかった。

 蓋を開け一気に中身を飲み干す。

 飲んでからすぐに、もやもやが脳を侵食する。

 自我が保てず、もやもやに飲み込まれる。

 やがて目の前は暗くなり何も見えなくなってしまった。

 ただ体が動く感覚は残っていた。

 今体は何処かに向かって歩いていた。

 それが何処なのかは分からない、自分の体なのに言うことを聞かない。

 歩みを止めようとするが、足は勝手に前に進む。


「どうして!」


 まるで操られでもしたような感覚になる。

 現に陽菜は操られていた。

 さっき飲んだ薬は、倉井が開発した特殊なアイテム。

 飲んだ者は別の人格に支配され、体ごと乗っ取られてしまう。

 

「ふふふ、成功したぞ!」


 倉井はモニター腰に乗っ取られた陽菜を監視していた。

 モニターに映るのはこれまでとは違う陽菜だった。

 姿形こそは同じだが、能力が違う。

 

『アンスキルド――レジスト』


 反則に近いそのスキルは、倉井が対宗一郎用に作り出したオリジナルスキル。

 他のプレイヤーが覚えることのできなエクストラ能力。

 計画の最終段階で恐らく光の巫女と現れるであろう宗一郎を抑える為の抑止力。

 ただ欠点があった。

 それは宗一郎以外にはめっきり効果がないこと。

 それは倉井も後から気付く最大の弱点。

 使用者・製作者ですら知らないことである。

 

「これで計画の初期工程はクリアだ、役者は揃った。あとは役者共が成長するのを、待つのみだ」

 

 不敵な笑みを浮かべモニタールームを後にした。



 +



 その頃陽菜はすでに複数人の兵士を集め部隊を作っていた。

 竜剣士リルド・紅炎エルキルド・絶影リノア・雷帝ガルシッド・水霊ミティス世界各地で名を馳せている精鋭を仲間に率入れ来るべき時に備えて準備をしていた。

 その五人は神に最も近い人間であり、人類最強の五人。

 そんな者達が何故陽菜のような冒険者に従っているのかと言うと、どれもが倉井が裏で動いているからだ。

 本当は敵になるはずの五人は、倉井のプログラミングによって、陽菜に従うようにプログラムされていた。

 それは倉井の計画において最大の障害になるであろう光の巫女と対等に戦う為だ。

 光の巫女は倉井の計画では宗一郎と共に陽菜の前に立ちはだかる。

 対宗一郎戦士の陽菜にとって宗一郎は雑魚だが、光の巫女は強敵となり得る。

 その為の五人なのである。

 光の巫女と対等に戦えるであろう五人を味方に付けておけば、いい勝負が出来る。

 すべては計画通りに進んでいたのだった。

 


 

誤字・脱字などがありましたらお知らせください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ