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Sa ra i ra  作者: 白先綾
「太陽と月が泣いたのは、どうしようもなく昼で」

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「黒、理由」

 歩き続けてきて、世界を歩きながら観察する事を初めてしてみて、彼女は気付く、この世界には、影が無い。太陽の光にぶつかった時物体が光を遮る明確な形状を持った存在である事を示す事になるその物体の輪郭内領域、影、その有るべき彼女が光に対して弛み無く歩き続けている事の証は彼女の瞳には与えられては居なかった。その事は当然の事ながら彼女の足に括り付けられた重石となった、唯でさえ足取りの快活さを呼び込めないこの状況下に在って更なる異様さは彼女を流れに逆らって進む力強い水魚とした時の低水温に当たる程に、無視出来ない。彼女と言う水魚の体温は、今彼女の心に生じた勇気の熱であり、希望の火であり、生命の夏である訳だが、影が無い、と言う不気味な冷風は彼女が泳ぎ進む水の流れに溶け込んで徒に彼女の体を凍えさせ、泳ぎを止めさせようとしている、そして泳ぎを止めて水面に浮かんだ彼女を直接嬲りたい欲求を押さえ切れずに徒労にも水面を蹴散らしている。彼女が眺める殺風景は、その冷風が世界の調和を乱すからだ、世界を冬に留めようとするからだ、太陽の光と地上とがしっかり噛み合っていれば光に包まれたこの世界がこんなにも荒廃した冷たい印象に支配されている筈は無いのだ。それでも彼女は、その冷風に身を切り刻まれながらも彼女は進む、自分の心の火が十分に暖かく、頼りに出来る存在だから。その心情の強さは、間違い無く先に見た太陽の赤子が放つ光の強さだった、あの光を身に受けた事で手にした心の光、これだけは、真実の光だ、影を生み出す事の出来ない偽りの光が狂喜乱舞する白昼夢の只中において。彼女はこの強さをくれた、この強さのもう一人の持ち主であるあの太陽の赤子を探す、探さなくてはならない、何故なら私は光の衣を着るだけが精一杯の月だから、あの太陽の赤子と一緒に居なくてはこの真実の光を見失ってしまう、永劫の光と言う闇に包まれた孤独な彷徨い人だから。彼女の瞳の月は今、自分の真の立ち位置は永劫の光が見せる悪夢の真昼では無く、光の道標足らぬ夜であると自覚した上での、満月を示している、眩しい位に輝いていて、そして充足している瞳だ。だがこの満月は、新月から三日月、半月を経てやっと満月になった、と言う風に自然な物ではなかった、それまでの真実の光に全く照らされていなかったと言う意味での永遠の新月から突然に満月を迎えたのだ、恰も満月の裏側の暗部が今まで彼女の示していた暗闇の姿であるとでも言う様に。だから、彼女の今示している満月の瞳、満ち足りた勇敢な瞳は、危うい、その裏側にはまだ重く深い新月を抱え込んでいる、と言う事で有るからだ。彼女は自分の力で新月から満月を迎える術を知らない。あの太陽の赤子に出会って突然に訪れた満月、それを自分の力で獲得できる状態とすべく、彼女はどうしても太陽の赤子を探し出す必要が有るのだ。

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