表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sa ra i ra  作者: 白先綾
「太陽と月がそばに居て、それでも世界は夜を望んで」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/24

「黒と白、太陽と言う問い」

 もう彼女には森の時間潰しの為に提供する疑問と言う物もほぼ尽きて来た、だが最後に残っていた未解答事項は疑問と呼ぶには余りにも莫大な、そして深遠で揺るぎ無い空虚であり、その空虚を輝きの真実で埋め尽くされるのを今か、今かと待ち望んでいる赤子であるかの様に混じり気の無い知への欲望を含んでいた。それは、太陽とは何か、という問い、だった、勿論その問い掛けは森のざわめきを誘った、何故なら彼らにとって太陽とは忌むべき光の源である以前に根源的な部分で逆らいようの無い彼らの生への本能全てを裏付けるかの様な絶対的礎だったからだ、それは信仰心に因らない神、とでも言うべき抗いようの無い先天的信仰対象、偶像も何も要らぬ心の、細胞の核としての存在なのだ。だが、彼らはそれに意味の無い抵抗を試みる、彼らは闇の眷属としてのなけなしの誇りと自負で太陽の超越的な存在感を打ち砕く彼らなりの論理を彼女の心の中に生じた空虚に嵌め込もうとし始めた。意見の一、太陽とは、以前までなら天の太陽の事を指していたのだろうが今となってはそういう事も無い、我々を苦しめる地上の太陽花、あれこそが今のこの世界の太陽としての立場を預かっているのは想像に難くない。意見の二、しかし、我々はあの太陽を否定しようとしている、これからの世界は闇に落ちていくとして、その世界での太陽に当たる存在はでは何になるのだろうか、つまり、我々の存在意義を支える様な闇の輝きを放つ中心点は有り得ないのか、闇と言う虚無だけが我々と親しげに溶け合う静寂だけが残るのだろうか。意見の三、あの天の偽りの太陽、あれはもしかするとこの太陽花が太陽としての神権を手放した時にそれをまた新たに掴み取るべく存在しているのではないか、あの天の太陽はこの過程としての世界を経ての新生を試みているのではないだろうか。意見の四、闇の太陽、それは月と言い換えても良いか、つまり、天の太陽は、また新たに太陽に戻るか、それとも闇の光のみ放つ月になるか、その選択をしようとしているかも知れないと言う事か、勿論我々としては月以外に望む選択肢など無いのは明らかだが。意見の五、だがあれだけのやかましい輝きをそうそう太陽が捨てきれるとは考えられぬ、あれを封じ込めるだけの絶対的な質量の闇、それを天の太陽に流し込む事が必要ではないか。その意見と共に精神的存在の彼らによる意識の槍が彼女を一斉に突き刺した、彼女はその衝撃で気を失いそうになったが槍が余り深い所まで彼女を刺しきれずに居るのが分かった、彼女に鎮座する、太陽という真実への真っ直ぐな探究心が堅固であるせいだったが彼女はそこまでは理解しなかった、ただ彼らが太陽という事柄への扱いに対し非常な恐怖を抱いている事は良く分かった。意見の六、この人間は闇の固まりだと言う、もしかしてこの者があの太陽花と出会った時に我々に相応しき闇の太陽が生まれると言う事ではないだろうか、地上の太陽をこの闇の者が受け入れる事で両者が天に居る偽りの太陽の新しい心臓部として活動してくれると言う考え方は出来ないだろうか。その意見が森の総意となるまでにそう時間は掛からなかった、彼らはあの太陽花に対しての己の無力さを嫌というほど分かっていた、新しい方法に飛び付かない方が不自然という物だ。彼らは意識の槍で突き刺した彼女を立ち上がらせようと命令を送る、立て、そしてあの太陽花の所まで行くのだ。だが彼女は歩けなかった、体の緊張が極限まで達していたので上手く体を動かすことが出来なくなってしまったのだ。彼らは彼女を無理に追い詰め過ぎてしまった事を悔やんだがもう遅い、彼女が落とした硝子球が水になって太陽の花びらが風に飛ばされ邪魔立てする物が無くなった所で彼女を食べ闇を取り込み、その闇で最後の戦いを挑むしかないのか、そんな諦めにも近い考えが彼らを支配し始めたその時、彼らにとってのだろうか、彼女にとってのだろうか、場の停滞を破る救世主が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ