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Sa ra i ra  作者: 白先綾
「太陽と月がそばに居て、それでも世界は夜を望んで」

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「赤、静けさ」

 夕方。赤い空。彼女はその空に一日の終わり行く様を示されている、彼女が生きる、光の昼から闇の夜へのたった一度の変換しか許されない時間の一区切り、一単位であるその一日の刻一刻と終わり行く様を。彼女はかつて終わりばかりを願っていた、だからこれは本当は望ましい事の筈なのだが彼女にはもはや終焉への望みは無くなっていた。彼女が欲した終わりと言うのはこの世界に属する事の終わり、もしくはこの世界側、自分の外側の終わりで有って自分の内側、自分そのもの自分の中に息衝く鼓動の終わりでは無かったのだ、かつては自分の存在の終わりを夢見ていたりもしたがそれはこの世界が到底終わってくれそうも無いと言う途方も無い絶望感から来た物であってもしこの世界を退ける事が、この世界に入り込んでしまっている自分をここから脱出させる事が出来るものならそんな自棄なる発想を持つ事は無かった、加えてそうしてこの世界が死んでくれないからと言うので自分の死を思ってみたりしたのは自分に無限としか思えない生命力が携わっている事に裏付けられた余裕有ってこその物だった。この世界で初めて見えて来た自分の死に彼女は脅えていた。体の気力がこの世界が昼であった明るかった時と比べて明らかに減退している事も彼女に確実な死が押し迫っている事を物語っているのだがそれだけではない、彼女は影を見る、この影、夕方だと言うのに彼女の等身を崩す事の無い黒き分身、これを彼女は今では自分の出血だと認識している、闇をこの光を代表する世界に於いて代表している、抱え込んでいるのが自分で有るのだから闇を外部に出してしまうと言う事は自分の命を削ってしまう事だったのだ。自分から途切れる事無く流れる血を感じて気力を失わない人間は居ない、彼女は実際に自分からエネルギーが奪われている事には元よりこの垂れ流れる黒い血への自覚にも精神的な余裕を剥ぎ取られ続けていた。そして赤い空は自分の血染めの空だ、清浄なる青き空気の海をそれを上回る圧倒的な闇の血で赤に染めてしまったのだ。これがあの太陽の赤子が望んでいた変化なのだろうか、彼女にはもう彼-と言うのもこの辛い状況下であの太陽の赤子に男性を求めてしまっているから-が分からない、そもそも彼が何故自分からこんなに遠く離れる必要が有るのかも全く想像が付かない。只分かっているのは今更彼の有効範囲から抜け出す事は出来ないと言う事だ、有効半径から出る前に確実に死ぬ、彼女はもう自分の命が半分以下に削られているのは良く分かっていた。なら、自分が死に至る前に少しでも真実に近付くためにも、今はただただ彼が居ると思しき場所を目指すしかない、彼女のその死を覚悟した力強い思いだけが更に質量の増した重石の括り付けられた彼女の足を動かし続けていた。

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