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~騎士クロウの旅路(仮)~

 私はニハウィー王国の騎士隊長のクロウ・オーディール。朝方に三姉妹の未来を司る少女、スクルドから報告があった。


「異世界、未開拓地、ニハウィー王国の救世主」

 それを聞いた王は私に未開拓地に急げと命令を下した。もちろん、未開拓地は一つだけではないので、少数精鋭で行くことになる。私が任されたのは敵国ウォールリにほど近い未開拓地。そこは盗賊がまだ頻繁に出るといわれている危ないところだ。

 そんなところにこの国の救世主が、この世界でない別のところからやってくる。それはそれで興味がある。


「クロウ様! 本当にこちらでいいのでしょうか?」

 先頭を走っていた私に声をかけたのは部下の一人だった。

「あっているに決まっている! この私の古傷がこの獣道に行けと導いている。それに私たちは従わなければならない」

 そう部下たちに言うと何も言わなくなった。きっと部下たちもこの導きに感化したのだろう。

「ほら、見ろ! 大きな道じゃないか」

 私の顔の古傷と言っても、今は隠れて見えないが。この傷は私が物心つく前についた。両親はこの傷を天からの授かりものだと言っていた。だから、私はこの傷が消えたら死んでしまう。この間、鏡を見たら驚いた。傷が薄くなっていたからだ。

 死んでしまうのか、私は。ならば、悔いがないように、この国のために尽くそう。今は救世主を探さなければ。


「あれは……もしや!」

 この辺では見ない格好、そして宙に浮く木の棒……完璧な異世界人だ。きっとこの少年が救世主に違いない。

「ご無事ですか!」

 大声でそう叫んだ。少年は私のことを見ている。もしや、私の顔の古傷を透視したのだろうか! さすが救世主! やはりこの人で間違いない。挨拶をすませ、救世主と握手を交わした。こんな光栄なことは一生ない。私は一生手を洗わないだろう。


「俺は□□□□□って言います。クロウさん、これからよろしくお願いします」

 名前がよく聞き取れなかった。だが、もう一度言ってもらうのは申し訳ない。

「クロウとお呼びください。我々の救世主であるあなたにお会いできて光栄です」

 私は左膝をたて、片膝をつけた。私はあなたに尊敬の意を現すという意味で。

「じゃあ、俺のことも気軽に□□□って言ってください」

「申し訳ありませんが、聞き取れないのですが」

 やはり、名前の部分だけ聞き取れない。私の名前は聞こえているらしいが。くっ、もしや、私の古傷の力が弱まっているからなのだろうか? まさか!


「……もしかすると主人の元の世界の名前はここの人間には通じないのかもしれないわ」

 私との間に入ってきたのは木の棒。もしかすると、これは救世主様の守護精霊なのかもしれない。さすが救世主様! こんな身近な物に憑依させるなんて天才だ。

 救世主様は守護精霊との話が終わったらしい。

「じゃあ、俺のことジンって呼んでくれ」

「分かりました、ジン様」

 ジン……なんて良い名前なんだろうか。素晴らしい!

 ジン様を馬車に乗せ走っていると、一角犬の様子がおかしかった。何か一角犬が操られているような気がした。

「私の命に代えてもジン様をお守りする」

 ジン様を馬車に残し、外に出た。そこには一角犬が群れをなしていた。やはり、誰かに操られているようだ。


「異世界人の力をみせてもらおうか」

 紫色のマントを羽織り、仮面をかぶったふざけた男。異世界人、ジン様のことを狙う者を生かしてはおけない。

「私の魂の一振りを受けてみよ! 黒衣(ブラック)波動(ウェーブ)!」

 何だと! 私の攻撃は見事にかわされた。なんて男だ。一進一退を繰り返している間、体力の限界が来ていた時だ。光が溢れ、鈍い音が聞こえた。目を開けるとそこには男が倒れていた。

「ジン様は魔法も使える勇者でしたか。さすが我が国の救世主」

 ジン様は呆気にとられていた。

「さ、先を急ぎましょう、ジン様!」

 ジン様を馬車に乗せ、先を急いだ。なんせ、時間が経ちすぎている。馬車に乗っている時、ジン様は静かだった。何か思いつめた表情をしていた。まさか、私の薄くなった古傷を透視して私の死を予言して悲しんでいるんじゃ……


「ジン様、こちらへどうぞ」

 王都に着き、私が先導し、部下が後ろにつく。なぜか部下たちは不安げだった。

「ここを曲がると城の近道になります……ジン様っ!」

 どこへ行ってしまったのか。部下もジン様を探しに行ったのかいなくなっていた。

「ジン様、何処へ!」

 薄暗い路地に迷い込んでしまったのか、中々出口に着かない。

「まずい、早く探さなくては」

 その前に私は今どこにいるんだろうか? 古傷が薄いからなのか真の力が発揮できないのだろう。


 紆余曲折あり、部下を見つけ、ジン様も見つけた。

 部下たちは皆疲れた顔をしていた。まったく鍛錬が足りないようだ。

「どうぞこちらへ」

 ジン様はゆっくりと城の中に入っていった。


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