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そういえば、さっきから歩いていると言うのにほとんど景色が変わらないのはどうしてだろうか? 俺の気のせいだろうか?
「なあ、さっきから景色変わらない気がするんだが……」
「この辺は皆こんなもんよ。まだ開拓されてないの。まだ、道があるだけましよ」
道……ねえ? 道は道でも獣道だと思う。
周りを見渡しても木ばっかり生えている。まるでどこかの森に迷い込んだ感じだ。ああ、田舎暮らしって一度はしてみたいもんだ。田舎って言ってもドがつくほどの田舎じゃなくて、ほどよい田舎がいい。まあ、夢のまた夢の話だけれど、ここで住んでみるのも……ってあれ? 俺は今何を考えていた? ここに住む?
「主人の言う元の世界って所に帰りたいならここの世界に染まらないこと。いいわね!」
「あ、ああ……分かった。気をつける」
疑いの目を俺に向けるノイル。俺の顔は引きつっているに違いない。もうこの世界に染まり始めている。さっさと叶音と元の世界に帰らなければ。時間はあまりない。そうと決まれば、ここで休んでいる暇はない。
「よし、さっさと行こうぜ」
「もう少し行けば大きい道に出ると思うから頑張りましょ」
ノイルは浮かびあがり先頭に立つ。正確には浮いているのだけれど。
ノイルの言う通り、少し歩いただけで大きな道に出た。今までの獣道ではなく、ちゃんとした砂利でできた道。これまた歩くのが大変だ。
「しっかし、王都って遠いんだな」
「そうよーここはニハウィー王国の中でもまだ開拓されていないし、移動する手段と言ったら馬くらいね」
ノイルは、馬車が通れば乗せて行ってもらうことができるけどと、夢も希望もないことを言った。
「こんな未開拓の場所に運よく馬車が通るわけねーだろ!」
目の前にはただ真っすぐな道。しかも、舗装されていない道をただひたすら進む、ただそれだけだ。アニメやドラマみたくピンチの時に助けが来るわけない……か。
「……来るわ! 味方よ!」
ノイルはあちらこちら飛び回り嬉しそうに見えた。
「馬の足音か?」
しかも、一頭じゃない。たくさん来ている。
思わず俺は唾を飲んだ。なぜなら、俺の目の前には黒衣の騎士が現れたからだ。