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目が覚めるとそこは何もない原っぱで、他には何もなかった。どう考えても今までいた俺の部屋でもないし、日本でもない。
「おー……綺麗な空だなーって、ここどこだよ!」
起き上がり見渡せば、見たこともない石像がこれでもかってくらいたくさん置いてあった。
「え? なにこれモアイ?」
俺はいつの間にか、モアイのあるところまで来てしまったのか。いやいや、そんなわけあるわけない。じゃあ、ここはいったい……
「おい、そこのガキ! なに寝そべってんだよ!」
「は?」
茂みから現れたのは浅黒い肌をした強そうな男たちだった。
逃げ道はなく、逃げたとしても追いつかれるのが関の山。相手は三人で勝てる気がしない。
(叶音、助けにいけなくてごめんな)
ただの会社員の俺があんな強そうなやつらに勝てるわけない。
「何だ? びびってんのか」
「ガキだからしかたねえーっすよ」
やっちゃいましょうと三人は各々、武器を持ち俺に近づいた。
それにしても、ガキって誰のこと言ってんだ?
「俺はガキじゃない、もう三十手前だバカ!」
俺は足元に落ちていた木の棒を拾い上げ、適当に振り回した。
「おいおい、どう見てもガキじゃねえか」
オラッと男は勢いよく殴ってきた。俺は避けられず思いっきり当たった。
痛い、痛すぎる。今までこんな痛さを味わったことがない。近い痛みなら、小学校の頃階段から真っ逆さまに落ちた時くらいだ。
「くそっ!」
ここで何とかしないと殺されちまう。そう直感した俺は木の棒を振り回す。何の作戦もないがそうすることしかできなかった。幼稚な考えしか浮かばないのだ。そう、例えば……
「俺の力をお前らにぶっ放してみせる!」
真ん中にいた男に、まるで刀のように真っすぐ降ろした。その棒は俺の心と反応したかのように火がついた。
「な、なんだよこいつ!」
「な、なんなんだ……一体」
木の棒はいつの間にかゲームやアニメに出てくる剣になっていた。
それに驚いた男たちはヒソヒソと何かを話していた。
“……見つけた”
男以外の声が聞こえた。その声は耳の中をそっと過ぎ去った。
「チッ、覚えてろよ!」
男たちは尻尾をまいて逃げていった。俺は変身した剣を眺めていた。すると、剣はみるみるうちに元の木の棒へと戻った。
「なんだよこれ……」
まるで、中学生の頃憧れていた世界に来たみたいだ。
「中学生……俺が?」
近くにあった池を覗きこむ。そこには中学生の俺がいた。