1/10
プロローグ
結婚してから早半年、俺は幸せに暮らしている。あんまり稼ぎはないけれど、美人で家事が得意な妻、叶音は文句も言わずいつも楽しく生活をしている。
そんな叶音がこの頃変なことを言い出した。それは夢の話でにわかにも信じられない話だった。
「あのね、毎晩ニハウィー王国って言う世界でお姫様って言われるの、それに日がたつにつれてどちらが本当の現実なのか分からなくなって……」
深刻な顔をして叶音はため息をついた。俺は最初その話を聞いたときはただの夢だから気にするなと言った。だが、こうも毎晩同じ夢を見て、どちらが現実なのか分からなくなるほど魅力的なのか。
「俺がついているから大丈夫だ。何があっても俺がいる。な?」
うん、と小さく叶音は頷いた。
「電気消すぞ」
俺は電気を消し、布団に入った。叶音は寝息を立てて寝ていた。
「心配しすぎか……」
夢のことであれこれ悩むことはない。俺の考えはそれだけだった。
叶音の手を握り眠りにつこうとした。その時、叶音が突然大きな声をあげた。「行かなくちゃ」と。
そして、体は光り俺もその光に吸い込まれた。一瞬のことだった。