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5話 俺と文月のハチャメチャ騒動

いつのまにか消えていたので再投稿します。

2014.8/04に修正しました

文月を拾ってから数日、今日も学校がある。



「んじゃ文月、行ってきます」



「きゅん!」



この前みたく、俺は文月の頭を撫でてから、家の中を文月に散らかされるのを覚悟しながら学校へ向かった。

最寄の駅につくと、駅の中は通学や通勤する人達で溢れていた。いつもの風景だが、慣れることがない。

その人ごみの中をゆっくり進んでると、腹の辺りに何かがぶつかった。

見下ろすとそれは茶髪の小さな女の子だった。


制服を着ているがランドセルを背負っている。電車通学をしている小学生だろう。



「はう…すいません…すいません」



女の子はしゃがみながら何かを取ろうと手を伸ばそうとするが、たくさんの人が歩いていて取れないでいた。その女の子の視線の先にはピンク色の財布が転がっていた。

俺は人を押しのけて、その財布を拾った。



「ん…」



その財布を、女の子に渡すと、女の子はお辞儀をして財布を受け取った。



「はう、ありがとうございますぅ」



女の子はもう一回お辞儀をすると、駆け足で行ってしまった。

そしてまた他の人にぶつかっていたが、今度は落とさずに、しっかりとその手に財布を掴んでいた。

俺は何だか、文月を見ているような気分になった。


というより、小動物を見ている感じだ。

あぁいう、純粋な人というのは、どうも嫌いになれなかった。



(おっと、あぶねぇ。電車に乗り遅れるのはゴメンだ)





ギリギリで電車に乗れた俺は、少し遅めに学校に着いた。

今俺は、校門の前で少しだけ覚悟を決めていた。



(今日は進と…少し話をしよう)



そして、自分のクラスに着くまで同じことを頭で繰り返していた。

ついに…教室に着いた。



(よし…)



ドアを開けると、すでに大半の生徒は登校してきていて教室内は楽しそうな会話が広がっている。

俺はゆっくりと、自分の席に向かいながら進の側を通った。


そして…






「おはよう」



進は驚きのあまり席から倒れそうなほどの勢いで振り返った。



「え?…は?…」



挨拶された進はよくわからず困惑していた。



「……」



そして俺はそのまま自分の席に行き、座った。



「お…おはよう」



進がやっと挨拶を返してきたがその顔は驚きと困惑がまざっていた。



「うん」



進の顔を見て、俺は少し微笑んだ。

その後は結局話すきっかけが見つからずに、そして放課後になってしまった。



(文月のやつ…部屋散らかしてないといいけど…)



文月の事を考えたら、何だか突然文月の事が心配になったので急いで帰り仕度を始める。

そこに、進がやって来た。



「やぁ、丈」


「んぁ?」



振り向くと、進は少し緊張したように聞いてきた。



「今日は、何だか違うな」


「ん?まぁな」


「それって、この前言ってた文月ってキツネが原因か?」



俺は驚いて思わず叫んだ。



「何でお前が知ってるんだ!」


「いや、だったこの前、大声で文月が心配だ!…って叫んでたから」


「あぁ…そういえばそんな気が……あっ!早く帰らないと!!」



俺は急いで帰りの仕度を終わらせ、逃げるように走り出した。



「じゃぁな!!」


「あ…うん、じゃぁね」





家に逃げ帰った俺は、着いた途端に玄関に座り込んだ。



「ハァァァァァ〜。緊張したぁぁ〜〜〜」



こっちはこっちで力が抜けていた。

そこに、文月がやってきた。



「くう?」


「あぁ、文月ぃ…ただいまぁ〜」



俺は文月を抱きしめた。



「あ〜、落ち着く〜」


「くぅん?」



俺はしばらく文月を抱きしめて落ち着いていた。




玄関で。





---半日前---



「それじゃ、行ってきます」


「きゅぅん『いってらっしゃい』」



ガチャ(ドアが開く音)

バタン(ドアが閉まる音)



丈を見送ったボクは、リビングに戻って溜息をついた。



『あ~あ…暇になっちゃったなぁ』



丈が学校に行くと、この家にはボクしかいなくなっちゃう。

丈は夕方まで帰ってこない。だから、家に残されたボクは退屈で仕方なかった。



『最近はお昼寝して待ってたけど、今日は何しよっかな~』



ボクは、何か暇つぶしできる事を探す為にリビングを歩き回った。



『今日も暑いな~』



それもそうだよね。今は夏真っ盛りだもん。

昨日までは涼しい風が吹いてて快適だったけど、今日は雲1つ無い快晴。

風が吹いているのは、唯一の救いだったけど、お部屋の中はかなり暑い。



『ふぇ~~、暑いよ~~』



大きなお部屋は暑すぎる。ボクは丈の部屋に向かった。

丈の部屋がある2階は、窓が開いていて風が通る。だから大きなお部屋よりずっと涼しい。



『ふぅ~、涼しい~』



ボクは窓に近づいて、風に当たった。

そして、ケガをした腕を見て〝はぁ〟と溜息をついた。



『あ~あ、ボク…山に戻れるのかな~?』



ボクは、窓から山を見た。

そこは、ボクが生まれた山だ。



『でも…山に戻っても…どうせボクは…1匹…』



ブンブンと、思いっきり顔を横に振った。



『そうだ、どうせボクは1匹なんだ。一匹で生きていくんだ』


『仲間なんて…家族なんて…いらない…』



ボクは山を睨み、唸り声を上げながら怒った。

そして悲しくなって…憎んだ。自分を捨てた、家族を。


その時、ボクの頭の中に丈の姿が浮かんだ。そうしたら、いつの間にかボクの悲しい感じがなくなっていた。



『あれ?何でだろう?』



丈の姿が浮かぶたびに、ボクの気分は晴れていく。



『何だか良くわかんないけど…何だか気持ち良い♪』



ボクは気分がよくなって、何だか楽しくなってきた。



『もう少しこのままでも…良いかな』



ボクは丈との生活が、少し楽しくなってきていた。



『そうだ♪良いこと考えた♪』




---数日後---





「ただいまぁ」


カナカナカナ…と、ヒグラシが鳴く中、俺は学校から帰ってきた。

今日は、特に暑くて夕方になっても気温が下がらず、Yシャツが汗でぐっしょりだった。



「暑っつ~~…」



俺は汗で濡れたYシャツを脱いで、2階の自室に着替えに向かった。

部屋に入ると窓際では、文月が風に当たりながら眠っていた。



「窓開けておいて正解だったな」



俺は文月を起こさないように、静かに着替えた。



「ふぁー、サッパリした」



汗を拭き、簡単な短パンとTシャツに着替えた。

その時、足にこそばゆい感覚がした。



「ん?」



足元を見てみると、文月が俺の足に擦り寄っていた。



「おっ!起きたか」


「くぅ」



だが寝起きだからか、少しフラフラしていた。



「はは、良く寝たか?」


「きゅぅ~」



文月の頭を撫でると、文月は気持ち良さそうに目を細めた。

俺は文月を抱きかかえリビングに行き、文月と共に夕食を食べる事にした。


~今日の俺の晩御飯~


そうめん

麺つゆ

ネギ

以上





夕食後、俺は文月の怪我を洗い消毒をして、包帯を巻き変えた。

以前とは違い、今回は全く暴れなかった。



「賢いやつだな」



俺は文月の頭を撫でながら褒めた。

その後、手早く入浴を済ませて(だって電気もったいないじゃん!)寝るためにベッドを整えていた。

その時に、俺は特に何の意味も無く、文月に網戸の自慢を聞かせていた。



「んふっふっふ~、家の最強の網戸があれば…蚊なんて怖くないのだ!」



なぜなら…川野家の網戸は特別製の網戸である!

何と蚊どころか、虫一匹入ってこれないのだ!!

…ほら…見てくださいこの網目の小ささ…風を通し、虫も入ってこない、そしてなんと、お手入れも簡単なんです。すごいでしょう、この網戸…。


(語り、川野丈)



「………」


「文月よ…そんな冷ややかな目をしないでくれ」


(いつか自慢してみたいと思っただけなんだよ)



一通り語った俺は、何だかむなしくなって、そのまま寝ることにした。



「おやすみ、文月」


「きゅぅ」




「きゅうん(明日が楽しみだな~♪)」




---次の日---


俺は手早く朝食を済ませ、学校に行く準備を終わらせていた。

いつもならここで文月の頭を撫でてから学校に行くのだが、今日の文月は、朝食を食べ終えるなり丈の部屋の窓の前に座ってしまった。

故に、今ここに文月は居ない。



「文月のやつ…俺の部屋が気に入ったのかな?」



靴紐を結びながら自室がある2階を見た。



「今日は見送り無しか。いってきま~す」



ちょっと寂しい気持ちになりながらも、俺はそのまま学校に向かった。



「ん?」



歩いていると、自分のカバンに何か違和感を感じたが、気にしないでそのまま登校した。

そして俺は、また校門の前で気合を入れていた。



「よし…今日も少しで良いから、アイツと話すか」



少し気合を入れた俺は、そのまま教室に向かった。

教室のドアを開けると、進がこっちを振り返って、急いで目を逸らした。



「……」



俺はそのまま進の席に向かった。



「おはよう」


「ぉはょう!!」



見事に進の声が裏返った。

そのまま気まずくなり、俺は自分の席に向かった。



「…ふぅ…」



とりあえず、俺はカバンを下ろさずにイスに座った。



「はぁ~」



イスに座ってひと息ついた時、違和感に気付いた。

カバンがいつもより明らかに重たかった。

教科書は学校においているから、中には本しか入れてないが…新しく本をつめた記憶は無い…



「なんだ?」



俺はカバンを開けて見た。

その中には…




「きゅ~~ん」




ガバッ!!


俺はカバンをものすごい勢いで閉じた。



「ま…まさかな……幻覚だよ…幻覚…」



頭にそう言い聞かせ、もう1度開いてみると

そこには…



「きゅ~ん」



文月が居た。


「何やってんだお前ぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」






「あ…」



突然大声を出した俺を、クラスの全員が見ていた。



「アッハッハッハ!!何でもない、ナンデモナイ!」



俺はそう言いながらカバンを掴んで屋上に走った。

屋上の扉を開けて、誰もいないことを確認してからカバンを開けた。



「何やってるんだよ文月…学校に来ちゃダメだろ!勝手にカバンの中に入りやがって!!」


「きゅぅぅ~~ん」



文月は嬉しそうの俺の手に顔を擦り付けてきた。



「はぁ…お前を叱っても仕方ないよな」



そう言って俺は文月の頭を撫でた。

その時、ガチャッ…と、扉が開く音がした。

ギギギ…と、まるで首がさび付いたかの用にゆっくりと後ろを向くとそこには。



「丈…どうしたんだ…?」


「し…進?」



進がそこには立っていた。

そして進の後ろからひょこっ、と顔を出したのは妹の星名だ。



「いきなり走りだして、どうしたの?」


「い…いや……な…なんでもないぞ」



文月を抱きしめて隠そうとするが、星名が回り込んできた。



「何何…あーーーー!!」


「な、なんだ!?…あーーーー!!」



進もそれを見て、二人は大声を出した。



「き…キツネ?」



進が驚きながら聞き、俺はコクリと頷いた。



「その子、前に病院に連れてきた子だよね?」


「あ、あぁ…」


「コイツが前に星名が言ってた?」


「うん、ちょっと前にね…」



星名が文月を病院に連れて行った時の事を話した。



「とにかく、この子をここに置いてくと危ないから、どっか別の場所に移さないと」


「星名、別の場所って、どこがあるんだ?」



九流兄妹が相談し始めた。

俺は少し驚きながら話に割り込んだ。



「……黙っててくれるのか?」



二人はキョトンとし、それから微笑みながら答えた。



「「当たり前じゃん(ない)友達でしょ?」」


「とも…だち…。友達……そっか…」



俺はその後が口から出てこなかった。



「そうだ!美術室なら今日は授業無いから、安全だよ!」


「美術室?何でわかるんだ?」


「私の友達、美術部の部長だもん。そのくらいの情報ならすぐにわかるよ」


「あぁ…わかった。なら早く文月を美術室に連れて行こう」



俺は文月をもう一度カバンに入れて、美術室に向かった。

鍵が掛かってなかったのは幸いだった。すぐに文月をカバンから出して、床に降ろした。



「きゅぅん?」


「文月、ここでおとなしくしてるんだぞ」



立ち上がると文月は足に擦り寄ってきた。



「くうん、くうん…」


「大丈夫だよ。ちゃぁんと休み時間に会いに来るから」



俺は文月の頭を撫でて、美術室から出た。

その時ちょうど、星名が階段から走って近づいてきた。



「友達から美術室の鍵借りてきたの。これで安全だよ。はい、丈君が持ってて」



星名が鍵を俺に渡した。そして、俺はゆっくり口を開いた。



「あ…あ……」


「「…あ?」」




「あり…がと…」



俺は数年ぶりに友達に感謝の言葉をかけた。

九流兄妹は笑いながら頷いて、教室に戻った。


俺は少し遅れてから、何事も無かった顔をして教室に入った。

チラチラ見てくる人が何人かいたが、諦めて自分の席に座った。



(仕方ない…あんだけ怪しい行動したんだ…)



その後、担任の先生がやってきて間もなく授業が始まったが、俺の頭は文月でいっぱいだった。

休み時間のたびに美術室に行き、文月に会いに行った。

俺は何回も文月を撫でたり、モフモフしたりした。



「きゅうう~~~~ん!!」


「文月ぃ~!」



文月はよっぽど寂しかったのか、今までに無いくらい俺に甘えてきた。



「きゅぅぅ~んきゅぅぅ~ん」



昼休みになると、俺はまた美術室へ行き、今日はそこで昼食を食べることにした。

文月に購買で買ったパンをちぎって食べさせていると、九流兄妹が来た。



「一緒に…いいかな?」


「…(コクリ)」



進が聞き、俺はそれに頷いた。

二人は弁当で、中身は同じだった。



「星名が作ってくれたんだ」


「だってお兄ちゃん料理あんまりやらないじゃん」



そういいながらも、星名はしっかり進にくっついていた。



「懐かしいね。前はよく3人でゴハン、食べたよね」


「あぁ…そうだな」


「……」



俺は以前の事を思い出した。



(そうだったなぁ…前はよく進の家で食べたなぁ)



机の上の文月を撫でながら、俺は黙って食べ続けた。

昼休みの終りギリギリまで美術室にこもり、5、6時間目の2連続体育という地獄を終えて、待ち遠しかった放課後になった。


俺と九流兄妹の3人で、美術部部員が来る前にと、急いで美術室に向かった。

美術室に来ると、部屋の中から声がした。



「マズイ…!」



俺は一気にドアを開けた。

そこには数人の女子生徒が、囲むようにして何かを見ていた。



「文月!」


「きゅぅん!」



俺が叫ぶと、女子生徒の間から文月が走ってきて俺に飛びついた。

そして俺は文月を抱きかかえると走って美術室から離れた。


進の隣を通り過ぎる時、俺は小声でもう一回お礼を言った。



「ありがとう。二人とも」







家に着くと、足から力が抜けて、俺はまた玄関の床に座り込んでしまった。

もぞもぞとカバンが動き、チャックを押し開けて中から文月が出てきた。



「きゅぅ?」


「あ、文月…」


「…ペロペロ」



文月が俺の頬を舐めた。



「ありがとう、文月。元気が出てきたよ」


「きゅぅん」



文月を抱きしめようとして…その時、思い出した。



「待てよ…元はといえば…お前が勝手にカバンに入ってたからじゃないかぁぁぁ!!!」


「(ギクッ!)ダダダダダダ」


「待て文月ぃぃぃぃぃぃ!!!」



俺は精神的に疲労し、そして2時間体育で疲労した体の事を忘れて、文月を追いかけた。

そして何で追いかけてるのかわからなくなるまで追いかけっこは続いた。



解ったこと、文月は走れるくらいケガが良くなってきた。



続く

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