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38話 俺と花火と夏の夜

久しぶりの更新


やっと更新できる…


今度から趣味を少し削って小説に回せるように努力します。

皆と合流して、再度祭りに突入する。



「そういえば、良く俺達の場所が分かったな」


「文月ちゃんのおかげ。ね、文月ちゃん」


「きゅう~ん!」



猫子の腕の中にいる文月は、威張るように胸をそらした。綺麗な白い毛並みが良く見える。



「そっか、お手柄だぞ、文月ぃ」


「んくあ~…」



猫子から文月を受け取り、俺達はまもなく行われる花火を見るため、猫子の両親に連れられてベストポジションまで移動した。

皆手にお好み焼きやらたこ焼きを持っている。

俺も買っておけばよかった…



「はい、丈君の分」


「え?あぁ、買っておいてくれたのか?サンキュ」



猫子から焼きそばとお好み焼きを貰い、文月にはジャガバター(バター抜き、つまりただの蒸かした芋)をあげた。

もちろん、やけどしないように良く冷まして適温にした。



ビニールシートに腰を下ろし、モクモクと食べながら花火が打ちあがるのを待つ。

濃い目に味付けされた焼きそばとたこ焼きを、瓶のラムネと一緒に食べる。

いかにも、夏!という気分をかみ締めながら待っていると、


パッ…と、空に赤い花火が打ちあがった。

遅れて…


ドーーーーーーン!!!


「きゅああああああああああああ!?」



驚いた文月は物凄い勢いで俺の服の中に無理やり入ってきた。



「うお、文月!?大丈夫だよ、ホラ…アレが花火だぞ」



甚平の隙間から恐る恐る顔を出した文月は、次に打ち上がった青い花火を、不思議そうに眺めていた。

俺はそっと、文月の耳を軽く手で覆った。



ドーーーーーーン!!!


遅れてやってくる音にまだ慣れないが、それでも、文月はすぐに花火に夢中になった。

まるで見とれるように花火を見つめている。俺も一緒になって花火を見上げる。



赤や青のほかにも、色々な花火が上がる。

久しぶりに見る花火は、以前見たときよりも格段に綺麗に見えた。


それは、大好きな文月のおかげか…それとも、彼女である猫子のおかげか…


隣に座る猫子に視線を移すと、猫子と目が合った。

手をモジモジさせながら、空を見たり俺を見たりを繰り返してる。


俺は黙って、猫子の手を握った。


猫子は嬉しそうにはにかむと、また空に視線を戻した。

花火に照らされるその顔はとても……



「綺麗だ…」


「うん…綺麗だね、花火」


「!!……~~ッ」



俺は急に恥ずかしくなり、猫子から顔を背けた。

そむけたそこには…



「「(あらあら、まぁまぁ)」」



にまにまと笑う光と結菜先輩が居た。





花火が終わる少し前に、俺達は別荘に帰る事にした。

終わった途端に帰る人や車でごった返すので、それを避けるためだ。

少し名残惜しいが、俺は手に持った水ヨーヨーやお面、そして文月を見つめながら・・・


(来年も、皆とお祭りに行こう)


そう心に決めた。





別荘に帰ってきた俺達は、バーベキューの準備を始めた。

時間もまだ8時と少し遅めだが、祭りでは食べたり無かったので皆大盛り上がりだ。

俺は倉庫に行って、炭と炭バサミを取りに向かった。



「え~っと、この辺だって言ってたよな?」


「きゅうん?」


「お!文月、それだそれ」



文月は炭の入った箱を前足でガリガリしながら俺に教えてくれた。

【最高級備長炭】と書かれている。



「ほう…中々良い物をお持ちで…うん、これは楽しみだ」



これから始まるバーベキューの味を想像しながら必要な物を持って廊下を通って庭まで行くと…



「「「ハッピーバースデイーーーー!!!!」」」


(パーン!パーン!)


「おわあああ!?」



皆の声とクラッカーに驚き、思わず炭を落とし尻餅をついてしまった。

何だ何だ!?何事だ!?



「ちょっと遅いけど、ハッピーバースデイ、丈君」


「ね…猫子?」


「丈君の誕生日って、7月の29日だよね?今は8月だけど…どうしても祝いしたくて」


「あ…そうか、俺の誕生日」



自分でもすっかり忘れてた…



「きっと丈は頭悪いから忘れてると思って、バースディパーティーをこの旅行でしようって、皆で相談してたの」


「ありがとう、星名。その毒舌が無かったら最高なんだけどな」



起き上がった俺は炭をバーベキューコンロのそばに置き、皆に向き合った。

皆はそれぞれ、後ろ手に何かを隠してる。

たぶん…もしかすると…



「はい!丈君にプレゼント」



猫子は小さな箱を渡してくれた。

中には腕時計が入っていた。


「ニャハハ!!猫子ちゃんとレオと学の3人で一緒にお小遣いを合わせて買ったにゃぁ!!」


「にゃはは…いつでも、丈と一緒にいられるようにって…思いをたぁっぷり込めてみたにゃぁ」


「おぉ…ありがとう!!猫子、レオ、学」



進、星名、酸橘、紅は一緒にプレゼントをくれた。



「皆で考えたんだけど、思いつかなくて…これ、新しいワイシャツ。結構ヨレヨレになってるみたいだから」


「ありがとう!進、星名、酸橘、くれな…巳茶、助かるよ」




「ふえ!?あぁ、いえいえ、どういたしまして」


巳茶は名前で呼ばれたことに少し驚きながら、礼をしっかりと受け入れてくれた。

そして結菜先輩はハンカチをくれた。



「ハンカチで手を拭くだけでも、女の子へのイメージは違うんだよ。って、本当は何が良いか思いつかなかっただけなんだけどね」


「ううん!凄い嬉しい!」



光は1冊のノートをくれた。

そこには【memories】と書いてある。



「開けてみて」


「うん…うわぁ~…!!」



そのノートは、光が描いてくれた絵のアルバムだった。

バイト中に時々光が描いてた俺の絵だったり、文月の絵だったり…沢山描いてある。

そして驚いたのが、この旅行中の絵もあった事だ。

皆と海で遊んでいる絵だ。



「うわぁ~~…ありがとう、光!!」


「うん、それじゃぁ、一回返して?」


「うん???」


「今夜と、そして明日の朝の分も描こうと思うから。また後でね」


「わかった。むぅ~…」


「どうしたの?」



皆が俺の顔を覗き込む…顔がにやけていく。

どうして良いか分からず、俺はしゃがんで顔を隠してしまった。

皆が少しオロオロする。



「うぅぅ~…な、何か恥ずかしいぞ…」


「嬉しかったんだよね?丈」


「結菜せんぱぁい…今は顔見ないで…恥ずかしいから…」




「きゅうん」


「文月?」



文月が顔を舐めて顔を上げさせようとする。

俺は真っ赤な顔で顔を上げた。

結菜先輩が肩を叩きながら言う。



「ほぉら、何て言うの?」



そして、改めて口から声を絞り出した。



「あ…ありが…とぅ…ぅーーー!!」


「うんうん!よし!それじゃぁ丈の誕生日パーティーを始めよっか!カンパーイ!!」


「「「カンパーイ!!」」」



猫子に立たされながら、貰ったジュースの入ったコップを上に上げる。

それを合図に、皆一斉に、猫子のお父さんが焼いたバーベキューを食べ始める。

肉や野菜のほかに、魚や貝などもあり、豊富な種類に目移りしながらどんどん食べていく。



「それでね~、アハハハハ」



少し離れた所で、酸橘と話している結菜先輩を見ながら、猫子に話しかける。



「なぁ…結菜先輩…初めて会ったときと…雰囲気違くないか?」


「あぁ、たぶん猫被るのに飽きたんだと思う」


「へ?」


「結菜先輩、気まぐれだから時々あんな事やったりするけど、1週間くらいで戻っちゃうのよ。それで、丈君と出合った時に猫被ってたけど、今は普通の状態って事…だと思う」


「あ…あはは…ん?あれ?でも前におまえ自身が『可憐で清楚で皆の憧れ』って言ってなかったっけ?」


「そう言う風に言って~って、本人が言ってたのよ」



いつの間にか隣にいた巳茶が補足してくれた。

そしてジュースを一口飲んでから続ける。



「でも、皆の憧れ、ってのは本当よ。結菜先輩、美人だし、人気があって人望が厚いし、頭も良いし、悪いと思ったらちゃんと怒ってくれる…皆のお姉ちゃんみたいな人よ」



「お姉ちゃん…かぁ」



再び結菜先輩に視線を戻すと、先輩と目が合う。



「丈ぉ~、何してるんだよぉー!」


「別に、ただ話してただけッスよ」


「私も混ぜてよー!」





しばらく食べ進めてると、猫子のお父さんとお母さんが何か話しこんでいた。



「ホラ、早く行ってきちゃいなさいよ」


「…いや、大丈夫だ」


「どうかしたんですか?」


「あぁ、丈君。お父さんがね、トイレに行きたいのに、焼き始めちゃったから我慢するって言ってて、代わってあげるって言ってるのに」


「その服はお気に入りなんだろう?汚したら大変だ」



俺は小さく手を上げた。



「なら、俺が代わりますよ。料理ならできますし」


「そ、そうか?なら…頼む…!」



そう言うなり猫子のお父さんはトイレに駆け込んだ。

文月を肩から調理台の邪魔にならない所に降ろし、髪や汗が落ちないように肩に掛けていたタオルで頭を縛って、そばにあったヘラを掴んだ。


大きな鉄板の前に立つと、熱気とやる気で、燃えてきた。



「よぉ~し、やるぞぉ!!危ないから、文月はそこで見てな」


「きゅう~ん」



既に焼き途中のお好み焼きをひっくり返し、その隣で蒸し焼きにされていた焼きそばにソースかけ、混ぜ合わせる。

両手に持っていたヘラを置いて右手にトングを持ち、焼きそばを混ぜ、開いた左手でバーベキューでおなじみの串焼きをひっくり返す。

焼きそばが混ぜ終わった所でまた両手にヘラを持ちお好み焼きをひっくり返し、ソースとマヨネーズをかける。



「きゅうん~」


「うん?何だ?文月」



文月が指す場所には、オニギリがあった。

あれはみんなが食べやすいようにと、学美さんが用意した物だ。



「そうだ!!」



そのオニギリを数個取り、両面にハケを使って醤油を塗る。

そして網に油を塗ってから、オニギリを網の上で焼く。



「ん~…良い匂いだ」


「きゅ~…ん」



焼き終わった物を端っこに寄せて、バターを敷いてから、今度は魚介類を取り出し鉄板に空けた。


ジューー!!と良い音を立てる魚介をへらでかき混ぜ、火が通った所で醤油を掛ける。

同じようにジューー!!と共に、たまらない醤油と魚介の香りが辺りに広がる。


その匂いに釣られて、みんなが集まっていた。

巳茶が俺を不思議そうに見てつぶやいた。



「丈君、料理できたの?」


「当たり前だ。俺が一人暮らしをしながら、どうやって食ってきたと思ってる。自分で作ってたんだよ。バーべキューは初めて、だがな」


「ま…まぁ、そうよね…」


「巳茶ちゃん。丈は一人で色々作っちゃうのよ。和食なら煮っ転がしとか手巻き寿司とか、中華なら天津飯とか飲茶とか、フランス料理ならテリーヌやポトフなんか…」


「待て猫子!!何で俺が作る料理をお前がそこまで知ってる!!!???」





大いにバーベキューを楽しんだ後、出てきた俺のバースデーケーキにみんなで舌鼓を打ちお腹いっぱい担ったところで、ささやかに手持ち花火で、今日を締めくくる事になった。

浜辺に集まり、しっかりとゴミ袋と水の入ったバケツも用意した。



「2泊3日…あっという間だったな…文月」


「きゅうん…」



様々な色に変わる花火を見つめながら、今回の旅行を振り返る。

たった数日なのに、友達も増え、さらにもっと仲良くなれた気がする。



「本当に楽しかった、今回の旅行。友達と旅行なんて初めてだから…実はスゲェ緊張してたんだけど…でも、みんな優しくて、暖かくて…何か、俺の心の氷が溶けてくみたいだっ。その心の氷を溶かすきっかけは…やっぱりお前だ。文月」




「また…絶対またみんなで、旅行しような」


「きゅん!(うん!)」




「その時は、また私たちが場所の提供をするわよ」



猫子が隣にしゃがんで、俺の花火と自分の花火をくっつけた。

二つの花火が雨のように砂に落ちて行く。

猫子は小さい小箱を俺に手渡した。



「はいこれ」


「??」


「私から、誕生日プレゼント」


「え?でもさっき…」


「やっぱり、私から個人的にあげたくて…嫌?」


「ううん、ありがたく受け取るよ!」



中には、銀の猫のネックレスが入っていた。



「うわぁ~!!ありがとう!!」


「私と、おそろいなんだよ」



猫子も、銀の猫のネックレスをしていた。

俺はプレゼントを貰った喜びと、今までの感謝で、少し恥ずかしくなりうつむいた。




「猫子…。……なぁ、猫子も…その…あ……ありがとうな…その…俺の…さ、心の氷を、溶かしてくれて」



「「「どういたしまして」」」


「へ?」



振り返ると、みんなが俺のそばにいた。

つまり、今の、全部みんなに聞かれてたわけで…



「いいねぇ、心の氷を溶かす…酸橘ぃ!次の軽音部の新しい曲の歌詞に入れようよ!!」


「丈君、面白い言い回し、するねぇ」


「へいへい、丈が、キョドってる~」


「わぁーーー!!やめてください結菜先輩!!光は面白がらないでぇ!!星名はヤジを立てるなぁ!!そしてレオと文月は訳も分からずはしゃぐなあああああ!!」


「にゃぁ!!鬼ごっこにゃぁ!!夜の浜辺で捕まえてニャー!!」





ドタバタした最後だが、今までで一番楽しい夏休みの思い出になった。


みんなが笑う、俺も笑う。


ほんとに楽しい旅行だった。




続く

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