36話 俺と海水浴とお泊り
夏本番
ここ数ヶ月、創作意欲が薄くて…
久しぶりの更新です
先に着替え終わったのはやはり男子だった。
女子はなんだかワイワイしながら着替えをしている。
紅の指示で、男達は先に海に向かうことにした。
心なしか…学の息が荒い…?
「なぁ、学、もう場所取りはしてるのか?」
「ううん、これからです……ムフフ…」
「ふ~ん」
学はずっと進の体を凝視している。
進は脂肪が少ないから、少し腹筋が割れて見えるのだ。その締まった腹や足や腕を舐めるように見ている。
それを見ていた鼠須が、声を潜めた。
「なぁ…川野…」
「何だ?」
「学……九流の体、見すぎじゃねぇ?」
「うん…息も荒いな…」
「きゅん?」
文月は俺の腕の中で不思議そうに進と学を交互に見た。
「近くない?」
「そんな事無いッスよぉ、ウホォ」
海に着くと、すでにそこは海水浴客で埋め尽くされていたが、砂浜はとても広いから、場所取りにはそう苦労しなかった。
適当な場所にパラソルと折りたたみ式のビーチチェアを広げて、後は女の子達を待つだけだ。
その間、軽く柔軟体操をして、文月に小さな麦藁帽子をかぶせた。
「学~、体くっ付いてる」
「フヒヒ、サーセン」
そうして待っていると、女の子達がやって来た。
皆シャツや薄手のパーカーを羽織っていて、紅を先頭に歩いてくる。
「ゴメーン、遅くなっちゃった~。猫子ちゃんが恥ずかしがるから」
「だってぇ…皆がジロジロ見るから…」
そういえばチョクチョク忘れるが、猫子は恥ずかしがり屋だったな。
猫耳はつけたままだ。
「それじゃぁ、皆、水着…ご開帳ーー!!」
皆が一斉にシャツとパーカーを脱ぐ。
皆の肌があらわになり、俺の中から何かが込み上げ、体が熱くなった…
その瞬間、反射的に俺は同時に海に向かって走り出し、海面に向かってヘッドバッドを決めた。
ゴメン、あまりにまぶしすぎて…頭を冷やさないと何を口走るやら。
その隣に鼠須もいた…
「……鼠須も?」
「……川野もか…」
俺と鼠須は、お互いに見合って、それから、握手を交わした。
「水着って…凄ぇな…」
「あぁ、みんなのレベルが一気に跳ね上がったな…」
俺と鼠須は熱く手を握り合い、肩を叩いた。
「よろしくな、酸橘!」
「よろしく、丈!」
俺と酸橘は、一緒に振り返った。
そこには…まさに天国が広がっている…
水着って…こんなにも…うん……言葉では上手く言い表せないけど…ロマンだな!!
「ねぇ、丈…サンオイル塗ってくれない?」
結菜先輩はオレンジのビキニタイプの水着のパレオを取りながら、オイルの瓶を持つ手を伸ばした。
凄くオシャレだ。
「ぬ、塗るくらいなら…」
「ななななな!!何言ってるの先輩!!いいいい異性同士でそんな!!」
俺ではなく、鼠須がテンパっていた。
「えぇ~、酸橘ぃ~、何言ってるの~」
「とにかくダメ!!不健全なのじゃ!!」
「なのじゃ?」
結局、サンオイルや日焼け止めは女の子が女の子に塗る事になった。
だが、猫子が日焼け止めを持って俺の後ろに立っていた。
その猫子の水着は黒いワンピースタイプの水着だ。可愛いフリフリが付いていた。
やっぱり黒か、猫子らしいな。
「丈…えっと、その…」
「猫子、悪いけど、日焼け止めは他の女子に塗って…」
「これを…丈に……」
「だから…」
「塗る…!」
「え?」
「………塗る…!!」
「………あ〜、うん。頼む」
紅が持ってきたビーチボールでビーチバレーをすることになった。
その紅は、派手な赤いマイクロビキニを着ている。
かなり際どい…
「ビーチバレーって…どうやるんだ?」
「え?嘘でしょ?」
そう言われても、やった事無いから、分かんないものは分かんない。
まぁ、何となくは分かるが。
「このボールを落とさないように、腕を使ってパスしていくの。こう、えいっ!って」
黄色のホルターネックタイプの水着を着た光が、ジャンプしてボールを投げる真似をしながら説明してくれた。
………デカイ…
「…………」
その姿を、見ていた星名の水着は、チューブトップの水色の水着だ。
……無い…
星名は目を丸くして、口をぽかんと開けていた。
目が死んでる…
そして一番はしゃいでいたレオの水着は、白いパンツタイプの水着に、前にかぶっていた麦藁帽子だ。
動きやすそうだ。
そのレオは一通り泳いだ後、パラソルの下でビーチチェアにかけながら、パイナップルで作った器でトロピカルジュースを飲んでいた。
「ん~~、良い気分にゃぁ~」
夏を全力で楽しんでいるようだ。
文月は波打ち際で波と追いかけっこをしている
海に入るのが怖いのか?
「文月~!海入ろっか!」
「きゅぅ~ん」
「大丈夫だって、ほら」
「きゃうん!?…きゅん、きゅん」
文月を抱えたまま、水面近くまで降ろすと、文月は前足でかくように水面をいじりだした。
そしてゆっくり水面につける。
「どうだ?冷たくって気持ち良いだろ?」
「きゅぅぅん」
まるで水風呂に入ってるかのようにくつろいでいる。
その落ち着いた表情を見てると…
「えい」
「きゅうん!?」
ついイタズラしたくなる。
文月の顔に水をかけると、文月はムキになって追いかけてきた。
「あはは!ほら文月!」
「きゅあん!」
「ほらこっちだ!あはははは!」
「きゅうあん!きゃん!」
「ああはははは!」
【進目線】
「猫子ちゃん、落ち着きなって」
「大丈夫…私は平常心です」
「だったら、その手に持ってるフルーツナイフを置こうよ」
「これはフルーツを食べたいだけです」
「そんな滅多刺しにしなくてもパイナップルは逃げないよ…」
紅さんが鈴鳴さんをなだめるその光景は、まさに異様だった…
水色の水着を着た丈は文月ちゃんと楽しそうに追いかけっこをしている。
まるで、恋人同士のようだ。
「丈と文月ちゃんが、な・ん・だ・っ・て・?」
「いだだだだだ!!おおおおおおおお俺に当らなくてももも…!!」
鈴鳴さんって、握力強いんだね…
アイアンクローで掴まれた俺の頭はミシミシと嫌な音を立てる
【丈目線】
深い青の水着を着た進が猫子にアイアンクローをされているのが見えた。
何か猫子に失礼な事でも言ったのか?
それとも、猫子が勘違いをしてるか…だな。
「困ったねぇ、文月ぃ」
「きゅうん」
緑色の水着を着た学が猫子をなだめ、進を助けていた。
それを灰色の水着を着た鼠須が面白そうに見ていた。
そろそろお腹も空いてきたし、皆で昼食を食べることにした。
海の家に行く話もあったが、混んでいると言うことで、出店で買ってくることにした。
猫子、結菜、光、星名がみんなの昼食を買いに行き、進がコテージから、飲み物の入ったクーラーボックスを持ってきて、鼠須と学が小さめのテーブルを運ぶことになった。
俺と文月、紅、レオは留守番をしている。
レオはチェアに寝転がって寝てしまい、文月もレオと一緒になって寝ている。
「で、川野、どうなのよ?」
「どうって?」
「だから!猫子ちゃんの事!どうなの?」
「どうって…そりゃぁ…好きだけど…」
「そうじゃなーーい!!だ!か!ら!…ヤったの?」
「何を?」
「いや、だから…ヤったのかヤってないのかよ」
「だから、何を?」
「…あぁ~、その調子だと…ヤってない…みたいね?」
「???」
良く分からない紅の話を聞いてると、猫子達が戻ってきたが、何かおかしい。
知らない人が声をかけていた。
「ナンパだね、あれは」
「ほぉ~、アレがうわさに聞くナンパってやつか」
「関心してないで助けに行く!それが彼氏の役目!!」
「うお!そんなに押すなって!!」
そばまで行くと、話し声がすぐに聞こえてきた。
「なぁいいだろ?ちょっとブラつくだけだって」
「いえ、でも…」
「行きません。友達が待ってるので」
「まーまーまー、とにかく俺達のことろに行こうぜ」
え~っと、紅のアドバイスだと、まずは…
(猫子ちゃん達を心配して声をかける!)
「猫子、どうした?」
「あぁ、丈君」
「あんだよ?誰だよ?」
猫子は泣きそうな目で俺に助けを求める視線を送る
ナンパ男は不機嫌そうに睨むが、俺も睨み返すと、少し視線をそらした。
(自分が彼氏だという事をしっかり伝える)
「コイツの彼氏です。何か御用でしょうか?」
「あっ…そうなん?いやいや、ちょ~っと声かけただけだから」
そう言うとナンパ男はすぐに去って行った。
紅の言うとおりだった。あっさり帰って行った。
(ナンパするやつは女しかいないと思ってるのがほとんど!だから、男、特に彼氏がすでにいるのが分かれば大体諦めるわよ)
「丈くぅぅん…怖かったよぉ」
「よしよし、怖かったな。ほら、帰ろうぜ」
「うん!」
「丈、私はぁ~?」
「先輩も無事で何よりです。光も星名も大丈夫だったか?」
「私は大丈夫。助けに来てくれる丈君が見えたから、すぐに安心しちゃった。星名ちゃんは?」
「凄い」
「何が?」
「今時複数の女に一人でナンパする人無謀な人って始めて見た」
その言葉が聞こえたのか、ナンパ男は胸を押さえてうずくまっていた。
心に刺さったんだな。
昼食後、 レオに誘われて海で泳ぐことにした。
文月は俺の頭にしがみつきながらついてきた。
「星名ちゃんと巳茶ちゃんも来るにゃ~~!!」
「ちょっとぉ!?引っ張らないで!!」
「私は男ナンパするから遠慮します!!」
「ニャハハハ、遠慮は無料にゃ!」
「無用、な」
にしても、星名と紅は何でこんなにもレオを怖がるのか。
俺にはよく分からない。以前一体何があったのか。
「じゃぁレオと競争にゃ!あそこの島まで泳ごうにゃ!」
レオが指差す先には確かに小さな島が見えていた…が…
どう見ても泳いで行く距離ではない。
「素潜りで貝を2個拾ってくるのがルールにゃ!」
「「今年も…………」」
なるほど、この様子だと去年もやらされたみたいだな。
これは放っておくと本当にやりかねない。
「レオ、せっかく紅がビーチボール持ってきたんだから、立ち泳ぎしながらバレーしないか?」
「きゅうん」
「にゃ?丈と文月ちゃんがそう言うなら、レオもそっちにするにゃ!」
ニッと笑うと、レオは急いで浜辺までもどってビーチボールを取ってきた。ついでに猫子もつれて。
「丈君……レオちゃんを…止められるの?」
「ん?あぁ、前に思いっきり遊んだら、懐かれてな」
「川野!!頼む、この旅行の間、暴走するレオを止めて!!お願いだから!!」
「わわわわわ!!分かったから!そんなに揺らすな!!」
反動で文月が前に傾き、紅の胸に向かって落ち…前足の爪が水着に引っかかった。
「あ…」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「おわあああああああ!?みみみみ!!見てないから!!」
「見ないで!!水着!水着!!」
「あ…あっちあっち」
「キャアアアアア!!」
「おわあああああ!?」
「猫子ちゃん、何でいきなり潜水してるにゃ?」
その後、赤面する紅と、妖怪の如く俺を海中に引きずり込もうとする猫子をなだめ、バレーをして、砂浜に戻って大きな砂の城を作ったり、綺麗な貝殻を集めたり…本当に楽しい時間をすごした。
赤い夕日が砂浜を照らした頃、俺達は別荘に戻るため、帰り支度をしていた。
と言っても、パラソルとチェアー、テーブルを片付けるだけだから、そこまで時間は掛からない。
その間、俺は見慣れない海の景色を眺めていた。
青いアロハを羽織り、潮風を受けながら、この時間をかみ締めていた。
隣では文月が同じように夕日を眺めている。
「信じられるか?夏が始まる前…俺は友達がいなかったんだぞ?」
「きゅうん」
「親に捨てられて、誰も信じようとしなくって………だけど、お前と出会ってから、全部が変わった」
「きゅぅぅん」
文月の頭を撫でながら続ける。
「…こんなに楽しい時間をすごせる……普通の人ならなんでもないこの時間だけど…今の俺にとっちゃ、掛け替えのない時間だ…幸せすぎて…バチが当るんじゃないかな?」
「そんな事、ないよ」
「猫子…聞いてたのか?」
「皆聞いてるよ、ホラ」
振り返ると、皆すぐそこにいた。
気恥ずかしくなり、俺はまた海を眺めた。
「だって丈君、もうバチは前にもらってたじゃん」
猫子・・・
「そうそう、だから今度は、幸せを回収しようよ」
星名…
「遠慮することないよ、貰えるもんは貰っておけ」
進…
「ニャハハ、もっとレオと遊ぼうにゃん!」
レオ…
「人生楽しまなきゃ損だよ」
紅…
「何があったか詳しくは聞かないけど、今は今を楽しもう」
酸橘…
「まだまだ丈君の知らない楽しい事がいっぱいあるんだよ」
光…
「私達が一緒だから、ね」
結菜先輩…
「男肉パーティー」
「台無しだよ!!!」
学のトンデモ発言にツッコミを入れる。
思いっきり学の頭を叩くと、皆笑った。
叩かれた学も、楽しそうに笑った。
俺も大声で笑った。
別荘に戻った俺達を出迎えたのは、料理の数々だ。
食前酒を味わいながら座って待っていた猫子の両親と共に、美味しい夕食に舌鼓を打った。
お腹いっぱいで浅い眠気が襲ってきたが、寝る前にお風呂に入る事にした。
「はあぁぁぁぁぁぁ…良い湯だ…」
「鈴鳴さんに聞いたけど、温泉らしいよ」
「ほぉぉ~…それはありがたいなぁぁ~」
「九流も丈も、オッサンみたいだぞ~ああぁぁぁ…」
「そう言う酸橘も~…オッサンみたいな声でてるぞぉ」
効能は分からないが…何となく体に良いという感じはする。
疲れがお湯に溶けていくみたいだ。
「きゅぅぅん」
「文月も気持ち良いかぁ?」
「きゅん」
「頼む姉ちゃん!!このカメラだけは持って行かせてくれ!!」
「ダメェェェ!!私もこの気持ち抑えるので精一杯だけど、それはダメ!!」
何か遠くから猫子と学の声が聞こえるが…どうでもいいか…
「はぁぁぁぁ、良い湯だ」
「「だな~」」
「きゅう~ん」
「後生だぁぁぁぁぁ!!」
「わ”だじだっでみ”だい”よ”お”お”お”!!でも絶対嫌われるぅぅぅ!!」
そして気持ちいお風呂から上がった俺たちは、事前に話しておいた部屋割りどおりに部屋に移動した。
男子と女子に分かれ、男子は大部屋で皆で、女子は小部屋に分かれ、2人ずつで寝る事にした。
女子の部屋割りは
猫子&レオ
光&結菜
星名&紅
となっている
~光&結菜部屋~
「えぇ~、丈君の弱点知らないの?」
「何何!?丈の弱点って!!」
「んふふ、じゃぁ見せてあげる。お~い、じょ~~くぅ~~ん」
向かいの部屋から光の声が聞こえて、俺はその部屋に向かった。
「何、呼んだ?光」
「ちょっと来て~」
「あ、うん」
言われたとおりそばまで行き。光がベッドに座るように促す。
少しためらいながらも、隣に座った。
「見ててね、結菜ちゃん」
「え!?光!何するん…!!」
光は俺の耳に手を伸ばし、優しくマッサージするように触れた。
その瞬間、俺の体から力が抜けていく。
「はあぁぁ~…」
「ウフフ、丈君、耳弱いんだよねぇ」
「や…やめ…んはっ……あぁ…」
光の手は容赦無く俺の耳を揉んでいく。
力が抜け、体を寄せられて立つことができない。
「うわぁ~、丈って耳弱かったんだ」
「せ…せんぱぁい、み、見ないでぇ…」
「結菜ちゃんもやってみなよ!楽しいよ」
「こ、こう?」
「だ……らめぇ…んあぁ…あぁあ…」
両方からの耳マッサージにどんどん力が抜けていく。
「嬉しいね~、お姉さん達に耳マッサージしてもらって気持ち良いね~」
「どう?丈、気持ち良い?」
「ん…んふ…んっ…!んんっ〜…」
子供をあやすような光の声を聞いてると、全く力が出なくなる。
「こうやって気持ち良くなると、丈君素直になるんだよねー?」
「どんな?どんな?」
「たとえば〜……ねぇ、丈君、可愛く……お姉ちゃん、って呼んでごらん?」
「んっ…お…」
「おねぇ…ちゃん……はぁっ…」
「楽しそうな声が聞こえるにゃあああああああ!!」
ドカーーン!!
とドアを蹴破ってレオがベッドにダイブしてきた。
「うおわああああああ!?」
ガッシャーーーン!!
俺は転んでぶつけた額をこすりながら部屋に戻った。
あの時レオが突っ込んでこなければ光と先輩に懐柔されていただろう。
ドアを開けると、敷き詰められた布団に進、学、酸橘が座って話しをしていた。
だが、進は布団に包まり、今にも寝そうだ。
文月は俺が寝る布団の枕に座っている。
「今日は疲れたし…もう寝るか…」
「そうだね…ふわ…あぁ~…」
酸橘が大きなあくびをして、布団にもぐる。
学も同じようにだ。
「電気消すぞ~、おやすみ」
「「「おやすみ~」」」
その後は、特に何かを話すでもなく、皆眠りに落ちた。
深い寝息が、皆本当に疲れていたと感じた。
普通なら、ここでバカ見たいな話や、将来の話などをするのだろうが、それよりも睡眠をとるほど、疲れていたんだ。
俺も、丸まる文月に顔をうずめて、眠りに落ちた。