31話 俺と日差しと公園
丈「……何か言い残す事は…?」
青空「すみませんでしたごめんなさい許して下さい」
丈「3ヶ月だぞ3ヶ月!!どんだけ放置してるんだよ!!」
青空「だってだって、インスピレーションとか、イメージがちっとも湧かないんだもん!」
丈「黙れ、ネットゲームばっかりやってたから書く時間無くなっただけだろうが」
青空「はい…反省してます…」
無事、やれるだけの宿題を終わらせたのが1時間前。
今は鈴鳴家の風呂につかっている。
この広い風呂で一人ゆっくりするのは、ちょっとした贅沢に思える。
「きゅうぅん」
いや、二人か。
今日は文月と一緒だ。
猫子の了承を得て、こうして二人で風呂に入っている。
「文月ぃ、夏休みはどこに行きたい?」
「きゅうん?」
俺は学校でしたのと同じ質問を文月に問いかけた。
文月を腹に乗せて、背中を撫でながら続ける。
「夏は楽しいぞぉ。川とか山とか海とか、お祭りとか花火とか…いっぱいいろんなところ行こうな、文月」
「きゅうん!」
「きっと楽しい…だって…もう一人じゃないから…」
「そうだね、私も丈君と一緒にいれて、幸せだもん」
「うわああああああああああ!!!???びっくりしたぁ!!!」
声の主は猫子だった。
ドア越しに話しかけてきただけだが、死ぬほどびっくりした…
風呂を終えて、就寝時間、今日は空き部屋で寝ることにした。
「んで猫子、何でこうも準備良くベッドが用意されてるんだ?」
「そんな疑いの目で見ないでよ…コレはたまたまよ、前につかってたベッドだけど、壊れてないから捨てないで取っておいただけよ」
どうやら今回は本当にたまたまらしい。
しかし…壊れていないのに新しいベッドと交換するとは…鈴鳴家はかなりのお金持ちみたいだな。
そのベッドで文月は早くもくつろいでいる。
「はい、携帯電話の充電器、コンセントはあっちね」
「おう、ありがとう」
「はい、明日の着替え、涼しげなアロハを選んでみたわ」
「ありがとう、その件ではもう突っ込まないぞ」
「はい、私の枕、隣に置いてね」
「それは自分の部屋に持って帰れ」
俺は枕を猫子に投げつけた。
その後、俺が寝る部屋に猫子とレオの二人が集まって、俺と文月と4人で、明日の予定を話し合った。
「明日はいーーっぱい遊ぶにゃぁ~~!!」
「はいはい、んで、レオはどこか行きたい所ある?」
「ん~っと、レオは丈と猫子ちゃんと文月ちゃんが一緒ならどこでもいいにゃぁ!」
「また大雑把な…」
俺は文月の耳の裏をかきながら、どこに行くかと考えていた。
(思えば…もう数年、遠出で遊びになんか行ってなかったなぁ…お婆ちゃんとお爺ちゃんが気を使って出かけに行った事はあったけど、自分で行くことなんて、本当に何年ぶりだろう)
「ねぇ、丈君はどっか行きたいところなぁい?」
「うん?そうだなぁ~…」
(海や川は、水着を持ってないし…山と言っても、一晩で計画できるもんじゃないしなぁ…)
「そうだなぁ…どっか近くに、大きな公園みたいの無いか?)
「公園?そういえば、隣町にある自然公園の入場割引券がチラシに挟まってたわね。でも何で公園なの?」
「文月を、思いっきり走らせてあげたいんだ。ケガしてる時も、結構走ってたけど、全力で走らせたこと無かったし。だから、一日中、思いっきりね」
「レオもいーーっぱい走り回りたいにゃーー!!」
「それじゃぁ、明日は隣町の自然公園でいい?」
「「うん!」」
「きゅん!」
「OK~、それじゃぁ…明日は8時には起きて、10時に出発よ!」
---次の日---
電車に揺られる事数十分、隣町までやってきた。
移動中、文月はずっとカバンの中でおとなしく待っていたが、今はカバンから顔を出してキョロキョロと周りを見回している。
「自然公園はこの先よ」
隣を見れば、黒いワンピースにフリルが付いた服を着ている猫子がいる。
黒い日傘に大きめの黒い帽子と裸足に黒のウェッジサンダルという、以前よりは涼しげな服装だ。
「ニャハハハ!早くい〜っぱい遊びたいにゃぁ!」
さらに隣を見れば、白いワンピースのレオがいる。
夏らしい麦藁帽子と、裸足に白いフラット・サンダルと、猫子よりさらに涼しそうな格好だ。
ちなみに俺は、昨日猫子は用意してくれた、青いアロハに白いシャツ、ハーフジーンズにサンダルという格好だ。相変わらず、猫子のセンスとコーディネイトは俺の趣味に合ってると思う…
どこで俺の趣味を調べたのか…
「きゅう~ん」
カバンから顔を出している文月は、俺のアロハと同じ色のスカーフを首に巻いている。
暑いのか、カバンから出たがっているが…もう少し我慢してもらおう。
それから歩く事数分、目的地の公園についた。
「ニャハハハハ!!広いにゃあああああ~~~!!」
レオは入場してすぐに、広場で走り回っていた。
「レオったら、嬉そうね」
「それを言ったら、文月だって」
レオは飛んだりはねたりピョンピョンはしゃいで麦藁帽子がそばに落ちている。
文月は全速力で走って、巻いたスカーフがなびいている。
「おぉ、スゲェな文月…あんなに速く走れるのか」
「ニャハハハハハハハハハハ!!」
「おぉ…すげぇアイツ…側転からバク転して飛び上がって空中で3回まわってハンドスプリングして正座で膝すべりしてどっか消えたぞ…ってレオおおおおおおおおおおおお!?」
レオは丘を滑り降りて俺達の視界から消えた。
「行くぞ猫子!!レオ追っかけるぞ!」
「もう!レオったら!」
「きゃううううん!!」
丘を下ると、レオはうつ伏せに倒れていた。
駆け寄って見ると、結構大丈夫そうだった。
「ニャハハハ!!ニャハハハハハハ!!」
何がそんなに楽しいのか、走り回れるだけでも嬉しいのかな?レオは大声で笑っていた。
「レオ、あんまりはしゃぎすぎるなよ?」
「はーいにゃ!」
さっき走って落とした麦藁帽子を、レオにかぶせながらその頭を撫でた。
その後は、ひたすらレオに振り回されっぱなしの連続だ。
「アレ何にゃーーー!?見るにゃああああ!!」
「待てぇぇぇ!!レオォォォォ!!」
「待ちなさぁぁい!」
「きゅぅぅん!!」
俺達はひたすら、レオを追いかけるしかなかった。
レオは池を見ていたと思ったら今度はアイスクリームの屋台を覗いたかと思ったら今度はいきなりかくれんぼをはじめてしまった。
「ぜぇ…ぜぇ…アイツ……どんな体力してんだよ……」
「はぁ…はぁ…あの子はちょっと元気…良すぎるのよ…」
レオについていけるのは今のところ文月だけだ。
コイツも久しぶりに思いっきり走れるのか、体力の底がまだ見えない。
「文月、コレでもまだ子供なのになぁ…」
「きゅん?」
「レオは子供じゃないにゃあああああ!!」
自分の事を言われたと勘違いしたレオがものすごい勢いでやぶの中から出てきた。
そしてそのまま俺に飛び掛った。
その後、捕まえたレオを引きつれひとまず昼食を取り、今度は3人で遊ぶことになった。
猫子は日傘をして俺達を見ている。
俺は、手に持ったゴムボールを思いっきり投げる。
それを文月が追いかけて
そしてレオもそのボールを追いかける…
「取ったにゃあああああああ!!」
「よ〜し、もって来い〜」
ドドドドドドドド!!
「にゃん!」
「よ〜し、もう一回行くぞ〜」
「きゅん!きゅん!!」
「次も負けないにゃ!」
レオはコレで楽しいみたいだ。
って言うか、文月の足についていけるレオがすごい…
「それ!」
ボールは遠くに飛び、レオと文月は互いに競い合いながら走る。
「ニャハハハハハハ!!」
「きゅうううううん!!」
ボールが落ち、一直線に二人がそれに近づく。
「あぐっ!」
「あ!取られたにゃ!」
捕球のため減速したレオの足の間を縫うように走った文月がボールを咥え戻ってくる。
「くぅん!くぅん!!」
「よ〜しよし、えらいぞ〜、すごいぞ〜!可愛いなぁ!」
俺は文月を抱きしめ、頬ずりした。
「レオも!レオも!ぉ!!」
「じゃぁ、次取れた方はいっぱい撫でてやろう」
「負け無いにゃ!」
「きゅう〜ん!」
「コレを聞いて黙ってられないわ」
なぜがさっきまで見ていた猫子も混ざっていた。
執念にのこもった猫子の脚が、まぁ速い事速い事。
続く