3話 俺と俺の過去
2014.8/04に修正しました
~10年前~
小学1年生の俺は、親に捨てられたという事実を祖父から聞いた。捨てられた次の日だ。
俺の両親は、詐欺に会い、大きな借金を抱えて夜逃げした。
その時は、俺は置いていかれたと聞かされた。
俺は母方の祖父母引き取られたが、俺はこの町を離れたくはなかった。
だから仕方なく、祖父母はこの町で俺が中学生になるまで面倒を見ることになったのだ。
当時の記憶は薄いが、なぜこの町を離れたくなかったのかは自分でもよく分からない。今となっては、この町を離れて、祖父母とずっと暮らしていれば、こんな性格にはならなかったのだと思う。
そして、俺が小学6年生の時のだ。
俺は偶然見つけてしまったのだ。自分に脳障がいがあると書かれた母子手帳を。
その中には医者のコメントと、まだ幼い俺の状態が書かれていた。
『川野 丈、脳に障がいが見つかった』
『この子は小学生に上がったらどうなるか分からない。脳障がいのため、障がい者と同じ学級に進めるのが良いだろう』
『親は否定しているが、普通に育つ見込みは薄いだろう』
見つけなければ良かった…
これを見てしまったから、俺は捨てられた理由も分かってしまった。
(母さん達は…俺が普通じゃないから捨てたんだ…)
そして……聞いてしまった。
祖父母が話していた、俺が捨てられた真実を。
あれは、母子手帳を見つけた次の日だった。
『ねぇ、丈に…丈に本当の事を言わないんかい?』
『いや…まだ早すぎる…』
『でも、あの2人は…丈は自分達の子じゃない…と言って…丈を捨てたんでしょ。あの二人は、自分の子供を否定したなん…』
『言うな!!・・・まだ丈は幼い…もう少しぐらい、幸せに生きてほしいんじゃ…』
「うそ……お父さんとお母さんが………?」
親から捨てられたという真実は…小学生には衝撃が大きすぎた。
故に、俺は人間を…信じられなくなってしまった。
(信じてたのに…いつか戻ってくる…迎えに来てくれるって……もう…何も信じない…信じない!)
「そうか…お父さんとお母さんは…僕がいらないから捨てたんだ!!」
(所詮…人は一人なんだ…僕はもう……俺はもう…誰も信じない!!)
その日からだった。俺が人を信用しなくなったのは。
数年後、脳障がいは検査ミスだという事が分かったが、すでに遅かった。
検査ミスという事実が、心の傷を、より大きくしてしまったのだった。
これが、俺の人を信じられなくなった理由だ。
そして中学生になった俺は。
「………」
教室の窓から外をずっと見ていた。
俺は周りで自分のことを噂している奴らがいるのに気づいた。
『川野君って…性格悪くなったよね~』
『小学生まではニコニコしてたのに』
『何だか気味悪いな』
「………ッチ…!」
俺は周りの人を睨みつけて、黙らせた。
そんな事の繰り返しの毎日を送っていた。
だがそんな俺に対し、頻繁に仲良くしようとした人もいた。
九流兄妹だ。
「なぁ丈、一緒に帰らないか?」
「今日はね、私がお菓子焼いたから、3人で一緒に食べよ。」
だが、それはその時の俺には逆効果だった。
「うるさい。あっち行け」
「「……丈」君」
九流兄妹の気遣いは、逆に俺を追い詰めていた。
そして中学卒業頃には…まったく会話をしなかった。
そして、俺と九流兄妹は同じ高校へ行き、今にいたるのだった。
~現在~
「お~い、文月~!おいで♪」
だが、今の俺の心の傷は…少しずつ癒えてきていた。
キツネの文月と会って、少し変わったんだ。自分でもわかるくらいに変わった。
表情が増え、笑うようになった。
「きゅん」
俺は文月から、何か自分に近いものを感じていたのだった。
そして一人ぼっちだった文月に、孤独だった自分を重ねていた。
名前を呼ばれた文月は、ソファーに座ってる俺の膝の上に乗っかった。
俺は文月の頭を撫でた。
「文月、俺…今何だか懐かしい気分だ。昔もこうやって笑ってたな…俺」
文月の頭を撫でながら自分の過去を思い出していた。
「進のヤツ…よく話しかけてきたな」
(今度…話してみるかな)
「そういえば、何でお前、道路に倒れてたんだ?」
文月は耳をピコンと動かしただけで、起きようとしなかった。
(まぁ、いっか)
『…助けてくれて…ありがとう』
「へぁ!?」
突然の事に驚いて、文月を見下ろした
「今…お前、しゃべったか?」
「ZZZ」
「……気のせいか」
(…ありがとう…)
続く
投稿が遅くてゴメンんさい。ちょっと一緒に書いてたやつに彼氏が
できてデレデレしていて、そいつとゴタゴタがありまして。
もう大丈夫ですから、これからは更新スピードを速めていきます。