28話 俺とお泊まりと猫子の家族
少し遅れました。
絵師のパートナーと音信不通になり、落ち込んでいました…
でも、遅れた分、今回は長めです!!
「はぁい皆ぁ、晩御飯できたわよ~」
ふと、そんな学美さんの声で起きた。
どうやら寝てしまったみただい。
「ふあっ…あぁ」
アクビをしてから時計を見る。どうやら30分近く眠ってたみたいだ。
皆密集して寝てたのに、暑く無いのは、エアコンが効いてるからだ。
俺の家とは大違いだ…いいな、エアコン…。
「にゃ!ご飯にゃぁ!!」
レオが一番早く反応し、食卓についた。
俺は猫子と一緒に立ち上がり、食卓についた。
「丈君はここに座って、そこはいつも学が座ってるんだけど…今日は部活で遅いだろうし、大丈夫よ」
「あぁ」
テーブルの上を見ると、そこには美味しそうな夕飯が並んでいた。
野菜の煮物に焼いた魚、出汁巻き卵に漬物、焼いた肉に、味付けの塩、タレ、レモン汁と小分けされた皿。
味噌汁にはシジミと炊きたてのご飯。
どれも普通の食べ物だが、とても美味そうに見える。
俺が作った食事とは大違いだ。
お婆ちゃんが作る食事とも違う。
何でも良いや、今はお腹いっぱい食べたい。
「さぁ、丈君、遠慮しないでいっぱい食べてね」
「ありがとうございます、学美さん」
「「「いただきます」みゃす」」
煮物を最初に食べると、やっぱりとても美味しい、食事の作り方と味付けを教わりたいくらいだ。
他のおかずも美味しい、どんどんご飯が進む。
「そんでね!そんでね!今日は丈といーっぱい遊んだのにゃ!」
レオは楽しそうに学美さんと話しながらご飯を食べている。
顔にいっぱいご飯粒つけてるが、全く気にしてないみたいだ。
無邪気で可愛らしいが…少し落ち着いて食べたらどうだろうか…。
(と、思いながらも、俺もそんなに周りばっか見てられないんだが…)
「クッ…(カチャカチャ)」
「丈君、どうしたの?」
「ん…何でもない…」
ただ魚の骨を取るのに苦労してるだけだ。
俺はどうも魚を扱うのが苦手だ。いまだに三枚下ろしも出来ないし…それどころかこうして箸で骨を取るのも一苦労だ。
「く…くっ…」
「…ふふ、ほら、貸してごらん」
「あ」
猫子は俺の魚を自分のほうに寄せると、馴れた手つきで魚を開き、骨を取って行く。
(どうやって…箸だけで骨が取れるんだ…)
「はい、取れたよ」
「うん、ありがとう」
「慌てないで、いっぱい食べてね」
ニコッと笑いながら言う猫子の顔は、どこかお姉さんっぽくてとても素敵だった。
(さすが、実の弟がいるやつは違うな)
その顔にときめいた自分がいたが、それは隠しておく。
恥かしいから。
でも、こんな顔を見てると思う。
(これがさっきまでボンデージ着て俺の頭踏みつけてた人と同一人物だとは思えねぇ…)
さすが、実の弟がいても、歪み無いな。
「あれ?文月は?」
周りを見ると、文月が見えなかった。
「文月ちゃんなら、ホラ」
猫子が指を指したほうを見ると、文月は誘波と一緒に…
「もぐもぐ…」
キャットフードを食べていた。
「………」
美味いのか…?キツネの舌でも、美味いのか?
わからん…心なしか、俺の作ったご飯より美味しそうに食べてる…
(もっと美味いご飯、作らなきゃな…)
しばらくしてから、レオが最初に食事を終えた。
「ご馳走さみゃでした!」
「あ、レオちゃん、チョットお使い頼まれてくれる?」
「解かったにゃ、行ってきますにゃ~~!」
「あぁ待って、まだ何も…」
レオは話を聞かないで、そのまま外に走って行ってしまった。
「もう、レオったら…お母さん、私が伝えてくるわ。何を買えばいいの?」
「食器用洗剤がもう切らしてて、お願いね、猫子ちゃん」
「はぁい、丈君、チョット待ってて、すぐ戻ってくるから」
「おう」
猫子はレオを追いかけるように外に走って行った。
「行ってきま~す」
「レオのヤツ、あんだけ遊んだのに、元気だねぇ」
「ウフフ、レオちゃん、丈君の事、凄く気に入ったみたい。ずぅっと話してるんですもの」
「レオは、良く遊びにくるんですか?」
「えぇ、長い休みになるといつも。猫子ちゃんも、レオちゃんが大好きだから、いつも楽しそうにしてるわよ」
「ふぅん、確かに、何か姉妹みたいですもんね」
猫子がお姉さんで、レオが妹かな。
ちょくちょく思うが、猫子ってやっぱりお姉さんみたいなところがあるな。
他人に世話を焼いたりするところとか見てるとそう思う。
(これじゃ俺の周り、姉さんばっかりになっちゃうな)
結菜姉さん
光姉さん
猫子姉さん
(俺ってそんなに頼りないかな…)
少し悩みながらも、食事の箸は止めない。
食べ盛りの高校生は滅多な事じゃその手を止めたりしない。
「あら、大変だわ、お使い、頼み忘れた物があったわ」「あ、俺が猫子に電話しますよ」
そこで箸を止めて(コレは用事だからノーカン)ポケットから携帯を取り出してかけた。
すると、着信音はソファーのほうから聞こえてきた。
『その猫耳、似合ってるぜ』
「……は?」
『手繋いでやるから、それで我慢しろ』
「……え?」
『ロープなんか学校に持って…イヤアアアアアアアアアアアア!!!』
「イヤアアアアアアアアアアアア!!!」
俺はすぐに電話を切り、携帯を閉じた。
そして猫子の携帯を掴んでポケットに押し込んだ。
「あらあら猫子ちゃん、携帯電話置きっぱなしで言っちゃったのね~」
「ぬわぁぁ…!!」
(アイツいつの間に俺の声を録音してたんだよ…って言うか何で着信音にしてるんだよ!!)
「しょうがないわぁ、私が行ってかってこよっと、丈君はご飯食べてて、すぐに戻ってくるから」
「あぁ…はい、どうぞ気にしないでください…」
学美さんが出たのを確認してから、俺は猫子の携帯を開いた。
「待ちうけ画面は…俺の顔写真…うん、まぁ、別にいい…コレはいいか…」
俺は着信音ファイルを開いた。
中には色々入っていた。
【丈君声】
【丈君寝言】
【丈君編集】
「…何だ?編集って…」
一つ開いて、聞いてみた。
『「猫子」「俺」「お前が」「大好きだ」』
「………」
会話を切り取って、くっつけて…そして編集したと…そういう事か。
『「なぁ…猫子…」「ハァ」「ハァ」』
「バカじゃねえの!?」
俺はこんな事言わん!
『「いらん!!」「らん!!」「ら」「ら」、「らん!!」「らん!!」「らん!!」』
「………!!」
わ…笑うな…こらえるんだ…!!
不意打ち過ぎる…コレは反則だっ…!!
俺はそこで携帯を閉じて、猫子の座ってたテーブルに戻して、食事を再開した。
「さて、そろそろ猫子はレオに追いついたんだろうか?」
あの足の速さだからな、追いつくかどうか、わからん。
「きゅうん」
「にゃぁ」
そこに、食べ終わった文月と誘波が、俺の足に寄って来た。
どっちも俺の膝に飛び乗ってきて、少し邪魔だ。
ガチャッ
「おっと、誰か帰ってきたか」
レオが何を買うのか解からなくて帰ってきたのかな?
それとも、猫子が携帯電話を取りに着たのか?
それとも、学美さんが財布を忘れたとか?
振り返ると、そこに居たのは。
「……」
「ッ………!」
大柄な厳つい顔の男性だ。
渋い男性俳優のようなカッコイイ顔立ちに、キッチリ着ているスーツが似合っている。
その人は、スーツの上着を手で持ち、ネクタイを緩めてる途中の姿勢で固まっている。
俺も、箸を持ったまま固まっている。
多分…この人は…
「猫子の…お父さん?」
「……(コクリ)」
うわああああああああああああああああああああ!!!
やべええええええええええええええええ!!
着信音を学美さんに聞かれた事なんか吹っ飛ぶくらいやべええええええ!!
何で気付かなかったんだ!!そりゃぁそうだろ!?お父さんいるだろ!?
何で俺が家に残った!俺が猫子を追いかけてお使いに行けばよかったじゃねぇかああああ!!
「君は…」
「あっ、挨拶が遅れマシた!」
「丈君…だったかな?」
「へ?あ、はい…川野丈です」
俺の事を知ってるのか?
そりゃぁ、猫子が写真で見せたかも知れないが…普通そういうのは隠しておくものじゃないのか?
「話は猫子から聞いている」
「…はい」
猫子のお父さんは、俺の前の席に座った。
「私は、鈴鳴獅子雄だ」
「…はい」
うわぁ…なんて重たい空気…まるで猛獣に威嚇されてるみたいだ…。
目付き怖ぇよ…
獅子の名は伊達じゃない…冗談じゃなくて本当なんだよ!
名前負けしてないんだよ!
「猫子たちは?」
「か…買い物です。お母さんが、レオにお使いを頼んで、レオが聞かずに行ってしまい、猫子が追いかけて、その後お母さんが別のものを買いに…」
「そうか…」
早く帰ってきてぇ…!!
こんな時に限って…なんで文月と誘波、お前達は…!!
「くうん」
「にゃぁん」
俺の膝でくつろいでるんだぁ!!
色々とおっかねぇよ!
足もしびれてきたし!
出来れば降りてくれぇ!!
「丈君…」
「はい…(声震えてる)」
「猫子の事…どう思っている?」
「はい?」
え?猫子の事?
難しいな…好き…だけど、その好きが何の好き、なのか、自分でもまだ解かっていない事だから。
それに質問自体も…何だか何処を突いてるのか…
やっぱり、好きか嫌いか…って事だよな、この場合。
猫子のお父さんは、俺の答えを待たずに、喋りだした。
「あの子にとって君は…初めての存在なんだ」
「え?」
「知っての通りあの子は、とても恥かしがり屋で、ずっと友達が居なくてね…小学校でも、女の子の友達は少しできたけど、男の子の友達は、結局一人も出来なかったんだ」
「……」
そういえば、すっかり忘れてたがそうだ。
あいつは初対面の人と話すとなると、全く喋れなくなるんだ。
眼鏡を両手で押さえるようにして、うつむいて。
「中学生の時に、あの子はその恥かしがりな性格の自分が嫌で、何度も泣いていた」
『私…こんな自分が嫌…もっと友達が欲しい…もっと話をしたい…!』
『私…もっと勇気が欲しい…誰にでも話せる勇気が…!』
『私…人を好きになりたい…この気持ちをわかってくれる人が…欲しい…』
「…アイツ、そんな事が」
「高校生になって…あの子は君を見つけた。詳しい事はわからないが、自分と同じように、人との関わりが薄い、君を」
「…はい、あの時の俺は…誰とも関わりたく、無かったですから」
「あの子は、君を見つけて変わった。君に話しかけられるように、勇気を出すことを目指した…そして、同じクラスで女友達を作り、他の沢山の友達を作ることができた」
「……」
「紅巳茶、という女の子に、自分から話かけたそうだ。でも…声をかけたのはいいけど、どうしても次の言葉が、出てこなかったみたいだ。それでも、紅巳茶は、猫子の気持ちに気付き、友達になってくれたんだ」
「ははっ、アイツは、クラスでも中心で動いてるやつだから、猫子にとっては、運命の出会いってわけですね」
「それも、全ては君に声をかけたいという気持ちからだ」
「……」
これも、運命の出会い…か…
「猫子が彼氏を作ったと聞いたときには、もちろん、私は怒りが出てきた…けど、その後の話を聞いて、安心に変わった。あの子が自分で選んだ人なら、その人を信じたい…そう思った」
「……俺は…そんな大した人間じゃありません…ただ、いままでスネていただけの…矮小な人間です。自分に無い物を、他人が持っているのが羨ましくて、妬ましくて…自分は誰からも見られていない…そう考えてるやつでした…。でも、猫子…アイツは、俺の事を、本気で好いてくれている」
俺は、文月を撫でながら続けた。
「最初俺は、猫子の事なんか、何にも思っていませんでした。でも今は…アイツが俺を好きでいてくれて、俺の気持ちは、変わりました。いえ…変われたのは…コイツのおかげでもあります」
俺は膝に乗ってる文月を抱き上げた。
「コイツ…文月って言うんです。コイツに出会ったから…猫子も俺に声をかける決心が出来たんです…あの時は、猫子の勘違いでしたけど、それでもきっかけになったんです。そして、猫子と出会い、友達と仲直りできて…新しく友達も出来て…全部、コイツとの出会いが始まりでした。それでもやっぱり、猫子との出会いが無かったら、俺は引っ込んだままだったでしょう」
俺の一呼吸置いて、言った。
「俺は、猫子の事が好きです。俺を変えてくれた…俺の大切な人です」
ふぅ…と息を吐き、猫子のお父さんは口を開いた。
「…あの子は…どうも自分を押し付けるように人を好きになっている…君は、それを知っているかね…?」
「はい…もちろん。でも、そこを含めて、アイツが好きなんです。良い所も悪いところも全て。確かに猫子の愛は…とても重いです。でも、そこが全て…好きなんです」
「……そうか」
猫子のお父さんは一旦止めて、タバコをふかして、話を続けた。
「それと…他にも聞きたい事が…」
「もぉ、レオ、何で何も聞かないで行っちゃうのよ」
「ニャハハハハ!ゴメンゴメンにゃぁ!」
レオをやっと見つけて、頼まれた物を買い、家の目の前で止っていた。
「まったく…あれ?」
レオと話していると、前のほうから、お母さんが歩いてきた。
「お母さん、どうしたの?」
「あらぁ猫子ちゃん、お母さんすっかり忘れてて、もう一つお使いあったのよ」
「丈君は?」
「家で待ってるわよ」
「…え?もうお父さん…帰ってきてるんじゃ…?」
「あらん?もうそんな時間ねぇ」
「マズイ!!」
急いで家に入り、リビングのドアを開くと。
「ハッハッハッハ!!君もそうか!」
「はい!俺もそこが良いんですよ!」
大声で、丈君とお父さんが楽しそうに話している。
「おう!猫子、おかえり!」
「遅かったなぁ!すっかりおじさんと話し込んじゃったよ」
「え~…っと…どういう状況?」
それからしばらくして、俺は猫子の部屋でくつろいでいた。
(楽しい…)
人と接するのが楽しくて仕方が無い、そう思うのは久し振りだ。
最近はそれを“悪くない…”と思っていたが、今は楽しくてたまらない。
俺は猫子の布団に座りながら猫子と話をしている。
進と親友になった時の話や、好きなゲームの話、逆に、猫子の趣味なども色々だ。
「猫子ちゃ~ん、お風呂開いたにゃー」
そこに、髪がビショビショのレオがやってきた。
というか…
「何で裸なんだよ!!」
俺はとっさに後ろを向き、猫子は急いでレオを他の部屋に移動させた。
「レオ!髪をちゃんと乾かして!服を着てから来なさい!」
「んにゃ?髪は後で乾かすにゃ、服は髪を乾かしてから着るにゃ」
「それが終わってから言いにきなさい!」
「はぁ…ビックリした…」
一応言っておくけど、見てないよ?
なぜならレオが入ってきた瞬間、文月が俺の顔面にへばりついて来たからだ。
「前が見えん、離れろ」
「うきゅ〜」
しばらく文月と遊んでると、学美さんが部屋にやってきた。
「丈君、服洗ってあげるから、お風呂に入るときに洗濯カゴに入れておいてね」
「え?いいッスよ。悪いし」
「ウフフ、遠慮しなくていいのよ。今日、レオちゃんと遊んでだいぶ汚れちゃったみたいだし」
「う…確かに…。それじゃぁ、お願いします」
「はぁい」
学美さんは用を終わらせると部屋から出ていき、入れ替わりに猫子が戻ってきた。
「ふぅ、なんとか髪を乾かせた…。あ、丈君先にお風呂いいよ」
「猫子先に入れよ。俺は後でいい」
「遠慮しないで、先にどうぞ」
「そうか?なら先に……」
その時!!俺の頭の中にある推測が浮かんだ!!
1、俺が先に風呂に入る
2、服は洗うため、洗濯カゴへ
3、俺が上がり、猫子が風呂に入る
4、俺の制服と下着が猫子の魔手に………
「いや!!やっぱりお前が先に入れ!!」
「ッチ、感づかれたわ」
――1時間後――
髪をタオルでふきながら猫子が戻ってきた。
「丈君、お風呂どうぞ〜」
「…………」
「どうしたの?」
今の猫子は、いつもの猫耳をつけておらず、しかもパジャマを着ていて、髪もまだ少し濡れている。
いつもとは違う、色っぽい雰囲気で………
「い…いやぁ!何でも無いぞ。んじゃ、入ってくる」
(何だ今日は……いつも以上に猫子が可愛いぞ…)
「きゅうん」
「文月は待ってろ。今度風呂入れてやるからな」
風呂場のドアを開けると、脱衣所も広い。
バスタオルが綺麗に畳まれてるし、何だかホテルみたいだ。
服を脱ごうとすると、洗濯機の上に何か黒いものがある。
「こ…これは…」
洗濯機の上には…あからさまに広げてある黒い下着が…。
(あぁ、猫子のだな)
「………」
俺はその下着をつまみ上げ、そしてそれを………
「(ポイッ)」
洗濯カゴへ落とした。
「さて、風呂に入るか」
背中にみみず腫のハートマークをつけたまま、浴場のドアを開けた。
(ってか、背中のキズ、みみず腫ですんでたのか…)
てっきり血くらい出てるのかと…
シャンプー台を見ると、大きく分けられてた。
「女、体」
「男、体」
「女、髪」
「男、ハゲ止め入り髪」
最後は可愛そうだろ…。
多分お父さんのだな。
でも、そんなはっきり書かなくても…。
俺は男用を使い体を洗った。
良いものを使ってるのか、体がすべすべになるのがわかる。
さすが…金持ち…。
洗い終わって、湯船に浸かり、今日を振り返った。
(一日でいろいろあったな…レオと遊んで、猫子に愛されて…学美さんの御飯食べて…お父さんと息が合って…夏休み、この先が楽しみだ。文月や猫子、レオや進、星名皆と遊べたらいいな…)
湯船は手足を広げてもまだ余裕があるほど広い。
ふぅっと息をつき、くつろいでいると
「丈君、パジャマ忘れてるから、ここに置いておくね」
「あぁ猫子、悪い」
脱衣場から猫子が言った。
「じゃぁ、私は」
「おう、もうすぐ上がるからな」
「このまま突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「ギャァァァ!!入ってくるんじゃねぇぇぇ!!」
「むふふ…丈君が裸……じゅる…うへへへへ…」
「いい加減にしろぉ!!この変態猫!!」
バコッ
「ギニャ!!」
俺の投げた洗面器が猫子の額にぶち当たった。
バシャァ
「ニャァァァァァ!!」
威力を上げるために、風呂のお湯を入れたが、綺麗に猫子に全部かかった。
「うにゃははははぁぁぁん…丈の汗が溶け込んだお湯にゃぁ……」
「キショイ!!」
パコーン
「ギャッス!!」
もう一個の洗面器が猫子のアゴにクリーンヒットした
「もぉ、丈君は恥ずかしがりなんだからぁ」
「やかましいわ変態」
結局あの後無理矢理入ろうとする猫子をシャワーで撃退し、今はまた猫子の部屋だ。
猫子はドライヤーで髪を乾かしている途中だ。
俺は膝に文月を乗せ、撫でながら猫子を見ていた。
「ウフフ、丈君とお泊まり〜」
「……」
サラサラの黒髪をクシでとかしている猫子。
当たり前だが、今も猫耳を外している。
いつもあの猫耳をした姿を見てたから、なんだか猫耳をしてない猫子が新鮮で、見とれてしまった。
「ん?なぁに?」
「何でもねぇ…ふわぁぁ〜…」
「きゅわぁ〜〜…」
俺と文月は、大きなアクビをした。
時計を見ると、まだ10時だというのに、今日はレオと走り回ったから何だか凄く眠い。
夕食の前に少し寝たけど、それでもだんだんとまぶたが重くなってくる。
「眠いの?」
「あぁ…今日はレオと遊びまわったからな…」
すると猫子は、ボソッと呟いた。
「私は遊んでもらってないもん…」
「猫子……」
そういえば猫子は、俺とレオが遊んでる間、家で待ってたんだったな。
レオに俺を取られちゃうし…
一緒に勉強するつもりだったのに、俺は遊びに行っちゃうし…
何だか…申し訳ないな…
「よし!猫子!一緒に寝るか!!」
「はにゃぁ!?」
「今日のお詫びだ。それで今日の事は水に流してくれ」
「にゃにゃにゃ………」
予想外の誘いに、猫子は動揺しまくっている。
ドライヤーを床に落とし、眼鏡は曇っている。
「じじじ…じゃぁ…寝よ?」
「お、おう…」
(うわぁぁ…やべぇ、勢いで言ったは良いが…メチャメチャ恥かしい…)
布団に入り、電気を消す。
文月は俺の枕元で早くも寝息を立てている。
「文月も、きょういっぱい遊んだもんな。おやすみ…文月」
猫子のほうを向き、俺は話しかけた。
「ゴメンな…猫子」
「……」
「寂しくさせて、悪かった」
「うん…」
暗くて良くわからないが、猫子は多分、俺に背を向けてる。
「ねぇ…丈君…」
「何だ…?」
「………ぎゅって…して?」
「…はいはい」
俺は猫子を抱きしめた。
やっぱり猫子は背中を向けていた。
「丈君の心臓の音が…伝わってくる」
「あったかいな…猫子は」
文月の時に感じたのと同じだ…暑苦しいけど…悪い気はしない…むしろ凄く幸せな気分だ。
猫子は、俺の手を握った。
「おやすみ、猫子…」
「おやすみ、丈君…」
続く
「ねぇ…丈…」
「何だ…?」
ガチャッ…
「がちゃ?」
「ニャハハハァ〜ン、おやすみはまだにゃぁ。夜は長いにゃぁぁぁん」
「うわあああああああ!!このための手錠か!!」
「ニャハハハ〜〜〜!!」
「やめろおおおおおおおおお!!離せえええええええええええええ!!」
今度こそ、続く!!
パートナー募集中
絵師、作文師誰でも可
青空「よし、これでいい」
丈「また性懲りもなく…」
青空「うるさい…これでも立ち直るのに精一杯なんだよ…」
丈「絶対に誰も集まらないぞ。たまには覚えろ」
青空「うるさいわ!このリア充!!」
丈「涙、ふけよ…」
青空「……ありがとう…」