23話 ボクと丈と山
2013年最初の更新
1月は修正などで、更新しませんでした
修正したのは1話です。
より読みやすくなっていると思います。
2話や3話なども修正していくつもりです。
それでは皆様、2013年も、「俺とキツネの恋物語」をよろしくお願いいたします。
今語ろう、ボクの昔…昔ってほど前じゃないけど…丈と出会う前…。
まずは、ボクが産まれた時だ。
ボクの生まれた山では、キツネは一つの群れを作り生活していた。
産まれた子供は皆で育て、群れが家族のようだった。
その中でボクは産まれた。
最初は皆から祝福された。
兄弟もいて、一緒に産まれた友達もいた。
お父さんとお母さんは暖かくて、優しかった。
それからしばらくして、毛が生え始めると、ボクは仲間外れにされ始めた…。
簡単な事だ、毛の色が違うんだ。
普通のキツネは、耳の先が黒くなり、足の先も茶色の毛で覆われている。
だけどボクは…耳の先も、尻尾の先も、足の先も真っ白。首からお腹にかけての毛も雪のように真っ白だった。
それに、身体の毛も茶色ではなく、山吹色に近い色。
最初はその毛並みから、周りのキツネに褒められ、羨まれたが…しだいにそれは、警戒に変わった。
「気持ち悪い」
「変な色」
「狂っている」
「おかしい」
皆、ボクから離れていく。
小さいボクは、何故かわからなかった…。
「何で…ボクだけこんな色なの…?」
お父さんもお母さんも、答えてくれなかった。
教えてくれなかった。
苦しかった…。
寂しかった…。
そして最後には…親にも見放され…群れから追い出された。
訳がわからない者を、群れから追い出す…。群れを危険から守る…。
その為にボクは、右足を咬まれ、歩けなくなったところで、山から落とされた。
斜面を転がり、道路に落ちた。
人間が歩いたりする道だ。いつも見てたからわかる。
痛い…悲しい…苦しい…暑い…。
夏の夕日が、照りつける。
寂しい…怖い…お父さん…お母さん………
ボクは一人ぼっちで死んじゃうんだ……
寂しさと不安と恐怖で、諦めかけたその時、優しい声が聞こえた。
『仕方ない、助けてやるか』
その夕日が陰り…ボクは、丈に出会った。
暖かく、包み込まれた。
暑かったけど、不思議と嫌じゃない。
丈はいつもボクを気にしてくれて、遊んでくれて、いっしょにいてくれた。
学校に行ってる時は遊べないけど、帰ってくるといつもボクを抱きしめてくれた。
もう、寂しくない。
だってボクは…
本当の家族を手に入れたんだもん。
でも、別れはやってきた。
丈はがっこに行く服なのに、ボクをつれて山に入った。
ボクを捨てた、群れがいる山に。
でも、木の匂い…土の感触…吹き抜ける風…全部が心地よかった。
丈を見上げると、泣きそうな目をしていた。
「文月、お前は自然に帰らなきゃいけないんだ」
「きゅうん?『どういうこと?』」
「その方がお前は幸せなんだよ。皆、生きるべきところで生きるんだ。お前が生きるべきところは、自然の中が一番だ」
「きゅん『うん』」
ボクは、泣きそうな丈の顔を舐めようとしたが、丈の顔が離れた。
「だから、もうお別れなんだよ、文月」
「きゅうぅぅん『どこ行くの…』」
丈が優しくボクを撫でてくれた。
温かい手…優しい声…その声は、震えていた。
「じゃぁな、文月。さようなら…!」
「きゅ!?『え!?』」
丈がボクを置いて走って行ってしまう。
「きゅううん!!『待ってよ!!』」
ボクは必死で丈を追いかけた。
(嫌だ…行かないで…ボクを置いていかないで!!)
「来るな!」
「(ビクッ!)」
「帰るんだ…山に…!!」
「きゅう…『丈…』」
また丈は走って行った。
ボクは追いかけなかった…追いかけれなかった。
不安…寂しい…悲しい…
その思いを、ボクは鳴き声にした。
「きゃああうん…きゃああうん…」
目からは涙が出た…声を出して…出して…丈の姿はもう見えない…。
涙が出なくなり、しばらく山を歩き回った。
「丈…」
しばらく歩き続けて、疲れたら休んで、また歩くを繰り返した。
空は雲が厚く張り、雨の匂いもしてきた。
ガサッ…
近くで物音がして、振り返ると…
「こんにちは」
「……」
そこには、僕とほとんど大きさが同じの、子ギツネがいた。
ボクの毛並みと違い、普通のキツネだ。
「あら?その毛並み…あなた、追い出された子じゃない…?」
「ぅぅ……」
頭の中に、追い出されたときの記憶が…突き落とされた時の事が浮かんだ。
「生きてたのね、傷も無くなって…。人間に治してもらったんだ」
「う…うん」
「さっき見てたのよね、でも…捨てられちゃったんだ」
「!?」
「やっぱり…あなたは何処へ行っても、追い出される邪魔者なのよ」
追い出されてなんか…
「その気味悪い毛並みだから、その人間も嫌がったのよ」
そんな事無い…
「どうしようも無く、嫌われ者なのよ」
「違う!!丈はそんな人間じゃない!!ボクを助けてくれて、ボクを助けてくれて、ボクを大好きだって言ってくれた!!丈はボクの家族なんだ!」
「…人間が…家族…?」
そのキツネは、信じられないという目でボクを見た。
「丈は…ボクが好きだから、ボクを山に帰した…」
「追い出された山に?」
「丈は、ボクが捨てられたなんて…しらないもん」
「結局その人間も追い出しただけなのよ!あなたは何処にも帰れない、追い出されたんだから」
「丈はそんなんじゃない!丈はボクに『帰らなきゃいけない』って言った!でも、山の皆はボクに『出て行け』って追い出した、そんなのボクの家族じゃない!ボクの家族は丈だけ!」
目から涙が溢れ出し…空からは雨が降りだした。
そこで気付いた、ボクは…捨てられたわけじゃない。
『皆、生きるべきところで生きるんだ』
そうだ…ボクが生きるところは…。
「ボク、帰る…」
「誰も受け入れないわよ、ここは」
「ボクは、丈のところに帰る」
ボクは走り出した。
泥でグショグショになりながら走った。
微かに感じる、丈の匂いをたどって、道路に下りた。
「ハッ、ハッ、ハッ」
すぐ横を車が通り過ぎ、思いっきり泥水がかかった。
それでも、走り続けた…丈に会いたい…丈と一緒がいい…丈と、ずっと一緒がいい。
そしてついに…お家についた。
窓から丈が見える…泣いてる。
カリカリ…
カリカリカリ…
(丈…気付いて…)
ボクは窓を引っ掻いた。
カリカリカリカリ…
「きゅーん(丈、ボクだよ)」
ガラッ!
「きゅぅん(ただいま)」
「文月…!」
丈はボクを抱きしめながら泣いた。
「ゴメン…文月ゴメン…!俺……お前がいないと…!不安で…寂しくて…悲しくて…どうにかなりそうだ……!」
「くぅ~ん(泣かないで…)」
「これからも、俺と…一緒にいてくれ…」
「きゅぅん(うん、ずっと)」
「むぅ!?」
ボクは丈に、キスした。
この前"てれび"で見た。
好きの気持ちを伝える方法。
丈…大好き。
ずっと一緒だよ。