22話 俺と文月とお風呂
おそらく2012年最後の更新!
もしかしたら、番外編を更新するかもですが、とりあえずは…今年一年間、俺とキツネの恋物語をありがとうございました。
来年も、よろしくお願いいたします。
「ただいまぁ…」
あの後、猫子をなだめながら帰るのは、少し面倒だったが…それより…。
「き…緊張したぁぁぁ……!!」
俺は玄関でへたり込んでしまった。
先輩…というより、初対面の人とあそこまで話すのは初めての事だったから、凄く緊張した…。
緊張が解けた途端、膝の力が抜けた…。
「きゃう?」
文月がカバンから出て、不思議そうに俺に擦り寄った。
「大丈夫だよ、それより…抱っこさせて……はぁぁ〜〜ん、落ち着くぅ〜…」
文月を抱きしめて、撫でてると凄く落ち着く。
これが温かく迎えてくれる家庭か…。
ちょっと違うか?
(………アホな事思ってないで…風呂でも洗おう)
俺は立ち上がって、風呂を入れる準備を始めた。浴槽と床を洗い、お湯を張った。
壁は週に1度、休日に洗うことにしてる。
「待ってろ~文月、晩御飯食べ終わったら、一緒に風呂に入ろう」
「きゅん!」
昨日知った事だが、どうやら文月は水浴びとか雨とか、濡れる事を極端に嫌ったりしないみたいだ。
泥だらけだったから風呂に入れたら、普通にゆったりと入ってたし。
ちなみに前までは、夏はシャワーだけで済ませていた。水道代を節約できるからな。
「ご飯食べよっか」
「くうん!」
晩御飯はまた素麺だが、コレだけだと栄養が偏るので、夏野菜を使った野菜炒めも作った。
そして文月には、動物も食べて大丈夫な野菜を使った野菜炒めを作った。
今日図書室で借りた本を参考に、油を使わずに野菜とおからと鳥ささみをあわせた炒め物だ。
「きゅうん、きゅうん!」
「待ってろ〜、すぐに出来るからな〜」
初めて作ってみたが、人間の食べ物と同じものを使ってるし、中々上手く出来たと思う。
火傷しないように少し冷ましてからあげると、文月はガツガツと勢い良く食べ始めた。
「美味しいか?」
「ハフッ、ハフッ」
「うんうん、美味しいのか」
味気ないドライフードとは大違いの食べっぷりだった。
(作って良かった。今度から作ってやるか)
何だか今日の食事は、特別美味しく、温かく感じた。
食事も終り、風呂に入ることにした。脱衣所で服を脱ぎ、洗濯機を回してから文月と一緒に風呂場に入った。
「文月、まずは体洗ってからな」
「きゅう~~ん」
文月は大人しく座り、全く暴れなかった。
動物用のシャンプーを使い、しっかりと洗う。
「きゅ~~ん」
「気持ちいいか?」
「きゅん」
「そうかそうか」
文月を洗い終り、自分の体も洗ってから湯船に入った。
俺の足の上で文月は座り、しっかりと浸かっていた。
「ふぅ~~~」
「きゅ~~~」
二人でゆっくり風呂に浸かり、今日の事を思い出していた。
「犬飼…結菜先輩…か」
何か不思議な人だった。
見た目は活発そうなのに、中身は清楚。少し矛盾した感じだった。
でも、とても優しそうな人だった。
それに、楽しそうに笑ってた。
「お姉ちゃん…か」
「きゅうん?」
不思議そうな顔で文月が俺を見ていた。
「お前は妹…かな?」
「きゅうん」
文月は目を閉じて、まったりしだした。
俺も今日は疲れた。
少しだけ、目を閉じよう。
『ありがとう…じょう…ボクをかぞくにしてくれて』
「え?」
今、誰かの声が聞こえた気がしたけど…。
「文月、お前か?」
「きゅうん?」
「んな訳無いか」
何て言ってたっけ…?
(覚えて無い…まぁ、いっか)
この後、俺と文月はしばらくお風呂でくつろいだ。