20話 俺と猫子と夏休み、の前に
第2部の1話です!
これからも俺とキツネの恋物語を楽しんでください。
因みに丈君のテストの点数は、実際い青空が高校時代に取っていた点数です。
文月との事があってから一晩、晴天高校での放課後。俺と猫子、そしてカバンに入った文月は図書室にいた。
本を読みに来てるわけじゃない、猫子から勉強を教えてもらっているんだ。
もうすぐ期末テストという事で昨日から教えてもらってるが、昨日は昨日で文月の事を忘れるために教えて欲しいと言ったが…
「なぁ…猫子、休憩にしないか…?」
「さっき始めたばかりじゃない…」
この通り、今は全くやる気が出ない。
猫子の事だから、俺を見すぎて勉強に集中出来ないと思いきや、以外にも猫子は真面目に教えてくれている。
(こういうところは真面目なんだな)
「丈君が教えてって言ったから教えてあげてるのよ」
「いや、それは…まぁ、そうだけど」
「それに、丈君の平均点…35点よ。赤点ギリギリ」
「な…なんでお前が俺の平均点をしっている…!?」
「ウフフフ、私が丈の平均点を把握して無いと思ってたの?」
猫子は眼鏡の横を押さえながらトロンとした表情になった。
何だか、こう言う時の猫子、凄く楽しそうだな。猫子が危ない目になる時が目印だな。
「国語30点、数学27点、社会35点、理科32点、英語10点、歴史33点、保健体育80点」
「何で全部知ってるんだよ!?」
俺だって覚えてないのに…
「何で保健体育だけ80点なのよ?」
「いやぁ、何でだろうなぁ…?って話をそらすな!?」
「大丈夫、私がしっかり教えてあげるから!」
そう言うと猫子はフフッと笑った。
「ハァ…お前の平均点は何だよ?俺に教えられるくらいはあるのか?」
「95点」
「……はい?」
「95点よ」
「…スゲェな…お前」
「フフフ、丈が褒めてくれたぁ」
95点って…普通の高校生がその点数を取れるものなのか…?
こんな頭いいヤツなのに…なんで…
「ウフフフフ、嬉しいなぁ〜、丈に褒められたぁ」
(何でこんなアホみたいに顔がふやけてるんだ…!もうアホな顔通り越して怖いぞ!?)
「それよりも、赤点ギリギリなんだから、そこを脱出しないと。ここで赤点だと夏休みに補修になっちゃうよ」
「はいはい…」
「はい、は一回よ」
「は~い」
勉強のやる気は出なかったが、とてもはかどった。猫子の教え方はかなり上手い。
わかりやすい、と言うより、頭に残りやすかった。
最初にやり方や答えを教えて、その後にやらせて…コレを繰り返してやるやり方だ。
わからないところを聞くと、ちゃんとどこがわからないのかもわかってくれるし、とても勉強しやすかった。
「ココはどうするんだっけ?」
「え~っと、もしかしてこの方程式の後半?」
「あぁ、ちょうどそこだ」
「ここは、数を合わせて…そして計算するの」
「あぁ、そうか」
「ハイ、やってみて」
「ん…こうかな?」
「う~ん、ハイ、正解」
今日は数学を中心にやった、数学は方程式のやり方と特定の計算方法を覚えれば大丈夫、と言ってたから、まず覚えさせるらしい。
「さて、そろそろ終りにしましょうか」
「はぁ~…疲れたぁ…」
「丈君、文月ちゃんは?」
「ん?あぁ、カバンの中で寝てるよ」
カバンを開けると、その中で文月は大人しく寝ていた。
前は文月を家に一人ぼっちにさせていたが、今は連れてくるようになった。
「文月ちゃん、幸せだろうなぁ」
「あぁ、一緒にいるからな。俺も幸せだ」
「へぇぇ~~…そぉなぁんだぁ」
猫子の目がまた危ない目になった。
しかも今は不満そうな顔だ…
「お前のおかげだ…ありがとうな、猫子」
「あ…うん。えへ…えへへへ~」
猫子の目がトロンとした。
「どうした~」
「さっきのキス…思い出しちゃったぁ~」
「!?…も…!もうしないからな!!」
「えぇ~…」
「ほら!帰るぞ!」
「あ、待ってよぉ」
俺が歩き出すと、猫子が隣に並んだ。
そして猫子は、自然な仕草で俺の手を握り、俺も握り返した。
「嬉しい…やっとどこでも丈君と手繋げる」
「これから変わるって決めたからな。お前を少しずつ知っていく」
「うん」
横でピコピコとゆれる猫耳を見ながら、俺は心に決めた。
(夏休みは、猫子と…文月と…いっぱい遊ぶぞ。今までの分、全部取り戻すんだ)
「あ、そうだ」
「何だ猫子?キスならしないぞ」
「夏休みの宿題は、7月に片付けちゃおうね!」
「……ハァ」
どうやら今年は、面白い夏休みになりそうだ。本当に面白い夏休みに。
その前に期末テストが待ってるけど、心強い彼女のおかげで、それは安心だ。