最終話 俺とキツネの恋物語
※2015/10/16
読みやすいように編集しました
皆さんのおかげで、最終話を無事書けました。
今回も、最後のページまでご堪能ください!!
最後のページまで…!
最後の…!
「丈君…遅いなぁ…」
晴天高校、2年5組。
ここが私達のクラス。いつもなら丈君が来てる時間なのに…今日はまだ来てない。
外は晴れてて日差しが強いけど、風が冷たくて気持ちいい天気だ。
私、鈴鳴猫子は窓から外を見ながら頬杖をつき溜息をついた。
「猫子ちゃん、川野君がまだ来てなくて心配なの?」
「あ、巳茶ちゃん」
そこに、友達である紅巳茶ちゃんが来た。
ショートヘアーの茶髪に、化粧をバッチリ決めて女の子らしさを磨いている。
巳茶ちゃんは、恥かしくてクラスに溶け込めず、誰とも話せないでいた私に話し掛けてくれた。そして今ではたくさんの女友達が出来た。それに、巳茶ちゃんのおかげで丈君に声を掛けられる勇気が出たし。巳茶ちゃんは、友達であり、恩人でもあった。
「うん…遅いなぁ…」
巳茶ちゃんと話していると、教室のドアが開き、今話していた丈君が入ってきた。
だけど…その顔は酷かった。
「丈君…どうしたんだろう…。目が真っ赤…」
「顔も、何か赤いし…泣いた後…みたいだけど?」
目は真っ赤に充血し、まぶたは腫れている。泣いてからしばらく経ったようだが、その充血と腫れがとても酷く泣いた事を物語ってるみたい。
丈君は何事も無いように歩き、自分の席に着くと机に突っ伏した。良く寝ているところを見るけど、今はそんな雰囲気じゃない。
(何か、嫌な予感する…)
教室の何人かが気付いたようだが、特に気に留めた人はいない。
巳茶ちゃんが顔を寄せて小さな声で言った。
「昼休み、いつも川野君と食べてるんでしょ?聞いてみたら?」
「…うん」
今はそっとしておいた方が良さそうだった。
進も星名も、今日は話し掛けてこない。さすがに声を掛けられなかったんだろう。
それもそうだ…この顔じゃ当たり前か。
鏡を見るまでもない、酷い顔だ。
文月を山に帰したのが、数時間前。俺、川野丈は机に突っ伏して顔を隠した。
他のやつらは気付いて無いようだったが、進と星名と猫子は気付いてるみたいだ。
(猫子には…なるべく早くに説明しよう…)
休み時間になると、俺は猫子を連れて屋上に行った。
「猫子、ちょっといいか?」
「え?…あ…うん……」
教室を出てから屋上まで、猫子は一言も話さなかった。
「どうしたの?学校じゃ話したがらない丈君が…それに、朝の…」
「……文月を山に帰した」
俺は猫子の話を切り、事実を一言で言った。
「…え…?」
案の定、猫子は唖然としている。
何か言いたいが、何を言えばいいかわからないようだった。
「傷が完全に塞がってな…今朝帰した」
「帰したって…文月ちゃんは丈君にとって大切な存在じゃないの…?」
「いいんだ…アイツは…俺の所有物じゃない…元々自然の生き物なんだ」
こう言いながらも、目からは涙が出そうだった。
「でも…」
「今の俺には、猫子がいるからな。寂しくはないよ。猫子も、嬉しいだろ?」
俺はそう言って、猫子を抱きしめた。抱きしめて、心の穴を埋めようとした。
猫子は複雑そうな顔をしたが、頬が赤くなっていた。
(コレでいいんだ…コレで…)
俺はさらに強く猫子を抱きしめた。
昼休みは屋上で、猫子と一緒に食べた。
だが、猫子はチラチラと俺を見るだけで、話そうとしなかった。
仕方なく、俺から話をふった。
「どうしたんだ、猫子。いつもはもっと喋るのに」
「えっ?…いや…何でもない…。」
「あははっ…そうか」
そこで話は終わってしまったが、猫子に笑いかけると猫子はさらに複雑そうな顔をした。
放課後になると、期末テストが近いという事で、俺は猫子から勉強を教えてもらうために近場の図書館にいた。
「ここは…これを当てはめてから計算するんだよ」
「あぁ…」
「こっちは、約分してから計算して」
「うん…」
猫子の教え方は簡単なものだったが、熱心に教えてくれるので、俺も真面目に教わった。
だが、ちっとも頭に入らなかった。文月の事で頭がいっぱいだ…。
しばらく進めていると、猫子がシャーペンを置いた。
「どうしたんだ?」
「丈君…文月ちゃんの事…」
「……」
猫子は眼鏡の奥で心配そうな目を見せた。
「寂しいんでしょ?丈君、文月ちゃんの事大好きだったから、別れが辛いんでしょ?」
「いいんだ…これでよかったんだよ。きっと文月だって…」
「でも…丈君は…」
「文月は…文月は自然の中で生きるほうが…」
その時、猫子が突然立ち上がって俺の胸ぐらを掴み叫んだ。
「そうじゃないよ!!もう!!」
猫子の顔がグッと寄った。その目は、心配しながらも、怒っていた。
「文月ちゃんがじゃない!丈がどうかって事!!」
「猫子…」
「丈は文月ちゃんが好きなんでしょ!?だったら、今すぐに迎えに行きなさい!!自分の事を…自分の幸せを、たまには考えなよ…!!そんなの…私の好きな丈じゃない!!」
「……」
猫子は泣いていた。まるで自分の事のように俺の事を心配している。
そして、泣きながら猫子は続けた。
「私が…私が好きな……丈は…無愛想で…私を…見てくれなくて……それだから…私は丈をいつか……私のモノにしたい…そう思える…でも……今の丈は好きじゃない!私の好きな丈は自分に嘘を付いたりしない!!」
それを聞いて、俺は走り出した。
「猫子、ありがとう!」
「行っちゃった…」
丈君が出て行くと、私はイスに座り込んだ。
眼鏡を外して涙を拭いてると、どこからか弟の学が出てきた。
「いいの?姉ちゃん」
私は持っていた眼鏡を置き、学のほうを向いて言った。
「うん…だって、私が好きな丈は…無愛想で、他人に嘘は付いても自分に嘘を付かなくて、そして…文月ちゃんにベッタリな丈だもん。恋は、ライバルがいたほうが燃えるのよ」
「文月!!文月ぃぃ!!」
今朝文月を帰した山に着き、俺は山に入り文月の名前を叫んだ。
「どこだ!?文月!!」
さきほどから雲が多くなり、雨が今にも降りそうだ。雷もなっている。辺りが暗くなって探すのも困難になってきた。
「文月ーーー!!どこだ!!文月ぃ!!」
ずんずん山の中に入って行き、俺は叫び続けた。
(どこだ文月!どこにいるんだ!!嫌だ…文月と別れるなんて…絶対に嫌だ!!)
(文月は、俺にやっと出来た、俺の家族なんだ!!)
「文月ぃぃぃぃーーー!!!」
その時、オレンジ色の何かが視界の隅に入った。
「文月!?」
走って近づき、それを確認するとそれは…ただのボールだった。
それを思いっきり蹴飛ばして、さらに大声で文月の名前を呼んだ。
何分…何時間経ったか、いつの間にか雨も降ってきた。
「文月ぃぃぃーーー!文月ぃぃぃーーーーー!!」
雨と雷にかき消されながらも、俺は叫び続けた。
朝に聞いた、文月の鳴き声が頭で響いてる。
不安そうな…声
寂しそうな…声
悲しそうな…声
俺も、親に捨てられて…悲しみの叫びを何度も上げた。
あの時の悲しみを…もう二度と味わいたくなかった。
制服も靴も泥だらけになり、全身ずぶ濡れだ。あたりも真っ暗で、目の前を見るのも困難だった。
仕方なく俺は…重い足取りで山を降りた。
家に着き、リビングで俺は力なく座り込んだ。
「文月…文月ぃ…」
俺は膝を抱えて泣いた。
俺は寂しかった、悲しかった。文月と別れるのが嫌だった。
その事に今更正直になり、結果後悔している。
「文月…文月ぃ…」
カリカリ…
カリカリカリ…
何処からか何かを引っ掻く音がした。
カリカリカリカリ…
外から雨音に混じって何かが聞こえてくる。
「きゅーん」
「!?」
俺は急いで窓を開けた。
そこには…
「きゅぅん」
「文月…!」
そこには泥だらけでびしょ濡れになった文月がいた。
俺は文月を抱きしめた。
「ゴメン…文月ゴメン…!俺……お前がいないと…!不安で…寂しくて…悲しくて…どうにかなりそうだ……!」
「くぅ~ん」
「これからも、俺と…一緒にいてくれ……文月…大好きだ…」
「きゅぅん」
「むぅ!?」
文月は俺の口に自分の口を当てた。
今俺は…文月とキスしていた。
だけど、俺は拒否しなかった。それを受け入れた。動物とか人間とか、そんなの関係なかった。文月は俺の家族だ…。そして…俺は文月を…
愛している。
夢を見た…
その夢で、俺は白い浴衣に橙色の髪の女の子と二人きりだった。
俺より少し幼げな女の子。
青い空、緑の草原で、その女の子は…微笑んだ。
「私も、大好き」
そして、やわらかく、唇が、触れ合った…
一日たって次の日の朝。
昨日は文月と一緒に風呂入った後、一緒に寝た。
俺も文月も、二人してくっ付いて寝たから、起きたときは汗でびっしょりだった。
今は朝食を終えて、俺は昨日泥だらけになった制服の変わりに予備の制服に着替えて、文月は俺の布団で丸まっている。
俺は家族の愛も、人を愛する心も知らないで育った。
だから、俺はどっちの意味で文月を愛してるのか、わからなかった。
けど、そんな事どうでもいい。ただ今は、文月と一緒に居られる。それだけで幸せだ。
「それじゃ行ってきます、文月」
「きゅぅん…」
文月は寂しそうな目で俺を見た。
(もう…寂しい思いなんかさせない)
「…おいで!文月!」
「きゅん!!」
文月はカバンに飛び込んだ。
そのまま俺は、晴天高校に向かった。
昨日の雨が嘘のような…晴天だった。
学校について、俺は屋上で猫子に昨日の事を知らせた。
「そっか。帰ってきたんだね。文月ちゃん、連れてきちゃったけど、丈君はこれでいいんだよね?」
「猫子…その、なんだ…」
「何?」
「あ…ありがとう…」
「お礼なんて…あ…」
猫子はそこで、悩むように顎を触った。
「どうしたんだ?」
「ハイ」
猫子は目をつむり、少し背伸びをして俺に顔を近づけた。
「お礼は…これで」
「ば…バカ!!そんな事…で、できるか!」
顔が真っ赤になるのがわかった。凄く顔が熱い…。
猫子も顔が赤いが、まだその体勢だった。
俺は、猫子に顔を近づけて…
おでこにキスをした。
「こ…これで満足か!」
「……にゃぅ」
猫子は少し不満そうな顔をしたが、それでも嬉しそうだった。
「ほら、行くぞ」
「あ、待ってよ」
俺は歩き出して、その後ろに猫子も付いてきた。
俺はそこで急に振り返り、猫子の顔に自分の顔を重ねた。
「ちゅっ……これで…満足か?」
「……」
猫子は自分の唇を触り、そしてとても嬉しそうな顔をした。
「にゃはは〜〜」
「も…もうしないからな!」
「にゃぁ〜〜、もっとぉ〜〜!」
「や…やめろぉぉぉぉーーー!!」
この先も…猫子はこのままなんだろう…。
でも、それが猫子の本心…本当の猫子なんだ。
俺は、これから少しずつ…変わろう。
猫子と文月がいれば、変われる…そう思えた。
俺の時間は恋で始まった…そして俺の恋は…キツネの文月で始まった…。
俺とキツネの恋物語は…今始まったのかもしれない。
オマケ
丈「ご愛読、ありがとうございました…俺とキツネの恋物語も…コレでおわ…」
青空「(おわ…)らせるわけ無いだろう〜〜〜〜!!!」
丈「青空!?え!?コレで終りじゃないのか!?」
青空「あっはっはっは〜〜、こんなところじゃ終わらないぞ〜〜〜」
丈「でも、題名に書いた…【最終話】はどうするんだ?」
青空「こんなもんはな、丸めてゴミ箱にポイだ!!」
丈「あぁ!【最終話】がゴミのようだ!!」
青空「変わりにこれ貼り付けとけ【19話】」
丈「もう終わりでいいんじゃねえか?面倒くさいし」
青空「いや、そうは言っても、向こうの人達が出たがってるし」
???「そうだよ!まだ俺出てないじゃないか!」
???「そうやで!ウチだって目立ちたいんや!」
???「あたしも〜、早く出たいなぁ〜」
青空「ほらほら〜、まだ出ていない人達も待ちきれない様子だぞ〜」
丈「はぁ…面倒くせぇ…」
青空「俺とキツネの恋物語の読者達!『俺キツネ』はまだまだ終わらないぞ〜」
丈「略すな」
青空「ほら、一緒に言うぞ」
丈「はいはい…」
青空&丈「それでは!また次回お会いしましょう!!」
第一部、終り。
第二部に続く。
まだまだ、俺とキツネの恋物語は続きます!!
次は第2部、学校編をお楽しみください!!




