16話 俺と猫子の本心
活動報告に書いた事の詳細を書きます。
1、小説全体の書き方を修正しました(1話〜最新話まで)
2、本文ごとに話数をつけました。
3、全体的に読みやすいように修正しました。
4、6話を修正してあります。
このように編集しました。読み直してもらえたら嬉しいです。
「猫子…」
「丈君…」
丈君が私を強く抱きしめる…痛いくらい強く…その痛みも嬉しい…。
私はそれを拒まずに受け入れる…。
「「………」」
互いに見つめ合い…そして、ゆっくりとその唇を近づけてきた…。
私は目をつむり…そして今……二人は結ばれた…。
「と、いう夢を見たの」
「朝っぱらからいきなり何を言ってんだ…」
俺は登校中に猫子を見つけ、声を掛けたところで、猫子に今日見た夢の話をされた。
なんとも、どうも、どうやら猫子は俺とキスをする夢を見たらしい。
俺としてはむしろ、襲ってくるのは猫子の担当のような気がする。既に一度襲われてるし…。
今更思えば、あの時は相当危ない状況だったのかもしれない。
下手をすれば、対人恐怖症が悪化したかもしれない。
だが。
いい方向に転がったのか、それとも悪い方向に転がったのか…それすら曖昧なところだが俺はある意味、それのお陰で人が嫌いじゃないと思えるようになった。
正直な猫子の気持ちを聞いて、感情の変化が激しい猫子を見て、他人に興味を持てるようになった。
そういう事なのだ。
「いい朝だったわ…夢のような朝…」
「夢から覚めた朝だろうが」
ちなみに、正夢にする気は無い。させる気はない。させてたまるか。
その時、ふと俺は思った。
(そういえば…コイツはどれだけ俺の事が好きなんだ?)
不良から助けられた、とか、似たような人を見つけた、とか、言っていたが、そんなものは一時の気の迷いみたいなものじゃないのか?。
だからコイツは、いつか俺の事をどうでもよくなるんじゃないか…?。
そう思った瞬間、足元に巨大な穴が開いたようにゾッとした。
まだ猫子と付き合ってから…いや、知り合ってから数日しか経っていないというのに、猫子が俺のそばから離れると思うと、凄く不安になる。
何故だ…俺は確かに人が嫌いじゃないと気付いた…猫子の事も嫌いじゃないとわかった…。
だけど、俺は猫子を好いてはいなかった。
嫌いじゃない、むしろ好意的だった。だが、恋人的な感情や、愛しているという感情は…持っていなかったはずだった…。
俺は知らずの内に…猫子の事が好きになっていたのか…?。
「……くん?…じょうくん?丈君?」
「!!」
「どうしたの?何だか難しい顔して…」
「いや…何でもねぇよ」
(あまり深く悩むな…考え込むな…混乱するだけだ…)
俺は自分に言い聞かせた。
だが、学校についてからも、教室に入ってからも、猫子が俺をどう思ってるかが気になって仕方が無かった。
「丈、どうしたんだ?」
「あ…いや、何でも無い」
そこに、進が声を掛けてきた。
進とも、最近は話せる仲に戻ってきた。嬉しい事だが、俺にはまだ進との仲を戻す資格は無いと、自分で思っている。だから、ゆっくりと戻していく。そう思っている。
「鈴鳴さんをジッと見つめてるけど…あの人がどうかしたのか?」
「いや…なんでもない」
「?そうか」
進は疑問そうな顔を浮かべていたが、そのまま自分の席に戻った。
猫子は女友達と楽しそうに話している。
俺はそれをただただ眺めていた。
昼休みになると俺は屋上でまた一人、ひっそりとパンを食べていた。
少しすると猫子がきて、二人で話しながら食べた。
主に話しているのは猫子で、俺は聞いているだけだった。
いや、話を聞いてすらいなかった…ずっと同じことを考えていたからだ。
(なんでコイツは俺を好きになった…気の迷いなら、早く覚めてくれ…今の内なら、俺もそこまでショックじゃない…でも…迷いじゃないなら…)
「丈君?…また、難しい顔してるよ…?」
猫子が心配そうに顔を覗き込んできた。
「いや…なんでもない…なんでも…ない」
「…何か悩み事とかなら、遠慮しないで話してね…私、力になりたいから」
猫子はそう言うと、黙ってしまった。
俺もただ、黙って猫子と一緒にいた。
放課後になると俺は教室でただ一人、ただ外を眺めながら朝から考えていることと同じことを考えていた。
こんなにも頭がいっぱいになるほど考え込んだのは、文月の時以来だ。
初めて文月を家に置いてきぼりにして学校に来たときは、文月のことで頭がいっぱいになった。今もそんな感じだ…。
時間はどれくらい過ぎただろう…もう何時間も過ぎてるかもしれない…外は赤い夕焼けだった。
「丈君…」
「猫子…」
考えていると、猫子がいつの間にか隣に立っていた。
「朝から、どうしたの?…ずっと、難しい顔して…」
少し怖がりながら猫子が聞いてきた。
俺は、朝から思っていることを猫子に聞いてみた。
慎重に、言葉を選びながら。
「猫子、いったい、俺のどこを好きになったんだ…?」
「え?」
「不良から助けたのがきっかけと言ってたが、あれは俺があの不良が気に食わなかっただけ。猫子が俺を見つけた時に思った『同じような人間を見つけた』なんて、一時の気の迷いだろ…。どうして…俺を好きになったんだ…。迷いだったら…いつかお前は俺のところから離れていっちゃうんじゃないか…」
猫子は窓に近づいて、外を眺めながら答えた。
「確かにそれは気の迷いかもしれない…だけど…」
一息置いて、続けた。
「だけどね、私もわからないんだ…なんで丈君を好きになったのか…いつから好きになったのか…。だけど、好きになっちゃった……わからないけど、丈君の事を考えていると嫌な事も忘れて良い気分になれるし…私、丈君にだったら何されても良いと思ってるのよ」
「猫子…」
猫子は振り向き、窓に背を向けて、両手で頬を押さえて恍惚の表情で続けた。
「私は丈が好き…誰よりも、何よりも…。私の全てを丈にあげたいし、丈の全てを貰いたい…。きっかけなんて私にもわからないけど、私が丈を好きというのは…迷い無い私の気持ちよ…。だから安心して、私に全てをゆだねて…私を見て…」
普段の俺なら、こんな狂った愛みたいなセリフを聞かされたら、何て答えるんだろうな…。
でも今は、この愛に狂ったようなセリフですら、安心に変わる。
そうか…猫子はとにかく俺を好いていてくれたのか…それがわかって良かった。
「ったく…それじゃまるで危ない人だぞ」
俺は苦笑しながら言った。
猫子はニヤリと笑い、その恍惚とした表情が高揚してさらに艶かしい表情になった。
だが、その危険と思えるような表情でも、今の俺は愛せる自信があった。これが鈴鳴猫子なんだ。嘘偽りの無い、猫子の本心。だから、猫子を抱きしめた。
猫子も抱きしめてきた。
「丈…好き…大好きよ。貴方の匂いも…ぬくもりも…」
「ありがとう」
キスはしなかった…する資格は、俺にはまだ無い。
もっと猫子を知って…それからだ。
ゆっくりと知っていこう。ゆっくりと猫子を知ろう…人を知ろう…そう思った。
「ふきゅぅ…!『遅い…!』」
文月は凄い不機嫌な表情でドアが開くのを待っていた。
これからもちょくちょく修正が入ると思います。