15話 俺と気付いた事
猫子ちゃん偏を書いてるのが楽しくて楽しくて、文月ちゃんの存在を忘れそうになってしまいました。
危ない危ない、文月ちゃんは一番好きなキャラなのに。
「ニャー」
落ち着かせるために猫子の頭を撫で続けて10分ほど経つと、猫子の部屋に一匹の黒猫が入ってきた。
「あ、誘波」
「イザナミ?」
「この子の名前」
猫子はそう言うと、その黒猫を膝の上に乗せた。
その猫の首輪を見て、俺はふと気づいた。
「あ、この猫…前に撫でた覚えあるな」
「え?わかるの?」
「あぁ、首輪が一緒だ」
丈は誘波の首に着いている白い首輪を指差しながら言った。その指の匂いを嗅ぐと誘波は甘えるように擦り寄ってきた。
「やっぱりそうだ。この人懐っこさは他の猫じゃなかなかいないからな」
「ニャァ〜ン」
(はぁ〜〜、誘波羨ましい〜!私も丈君にスリスリしたいのに〜!)
「あ、しまった。もうこんな時間か」
気付くと時刻はもうすぐ7時になろうとしていた。
「ご…ごめんなさい!!私のせいで…」
「まったくだ。勘違いにも程があるぞ」
「(しゅん…)」
猫子は眼鏡の両側を手で押さえるようなしぐさをし、反省するように、しゅんと落ち込んだ。
「まったく…ほら」
「えっ?」
手を差し延べると、猫子は顔を上げた。
「ここら辺の道は知らない。だから駅まで道案内してくれ」
「あ、うん」
猫子は差し延べられた手の意味が解らないようだった。
「ほら、立てよ」
「う…うん…」
猫子は赤くなりながら嬉しそうに手を取った。
廊下に出ると、猫子は弟の部屋の扉越しに「丈君を駅まで道案内してくるから、留守番お願いね」と伝えた。
「なんでドア開けないんだ?」
「あ…開けなくても聞こえるからよ」
「ふ~ん」
「じゃ、行こっか」
猫子と俺が階段を降りると、玄関が開き、1人の綺麗な女の人が入ってきた。
「あら猫子ちゃん、お出かけ?」
「うん、ちょっと駅まで」
「あら?そっち子は?……あ、その子が前に行ってた子?」
「う…うん」
「その人…猫子のお姉さんか?」
「いいえ、私猫子の母の学美です。気軽に名前で呼んでください」
「えええええ!?」
「お、お母さん!何で名前でなの!?」
「え~、だってその方が仲良くなれるじゃない?」
「だからって名前は!!」
「も~、猫子ちゃん、女の子がそんな大声出してたらはしたないわよ」
な…なんだか凄い人だな…。上手く言えないが、凄い人だな。
「ね…猫子のお母さんって、若くないか?どっちかと言うと、年の離れたお姉さんみたいじゃないか?」
「えっと…確か、丈君…だったかしら?」
「あ、はい。川野丈です」
「猫子ちゃんの事、よろしくね」
「お母さん!もう、丈君行こう…」
「それじゃ丈君、またいらっしゃい」
「あ、はい。失礼します」
学美さん…いや、猫子のお母さんに挨拶して、俺と猫子は家を出た。
「ゴメンなさい、あんな母親で」
「いいよ。優しそうなお母さんじゃないか」
「まったく、お母さんは余計な事ばっかり…」
「お母さん…か」
「あ!ご…ゴメンなさい!私、そんなつもりじゃ…」
「いいよ、別に。慣れてるし…今更そんな事でいちいち怒ったりしねえよ」
そう言って、猫子の頭を撫でた。
「うにゃぁ…」
撫でられると、猫子は気持ち良さそうに目を細めた。
しばらく歩いていると、電車の音が聞こえてきた。
「もうすぐ駅だよ」
猫子はそう言うと、チラチラとこっちを見てきた。
「なんだ?」
「ううん、何でもない…」
そう言いながらもチラチラと見ていた。
手をもじもじさせながら、握ったり開いたりしている。
(なるほど)
俺は黙って猫子の手を握った。
「うにゃっ!?」
「手、繋ぎたかったんだろ」
「う…うん」
猫子はその手を優しく握り返した。
「暖かい…」
「そうか?熱いだけだろ」
口ではそう言いながらも、俺はこの手を離したくないと思っていた。
猫子の手は俺より冷たかったが、その手には温かいものがあった。温度とかそういうものではない。
文月を抱きしめた時にも似たようなものを感じた。
心が落ち着く、なんだか温かい。
良くわからないが、そう感じた。
だから離したくなかった。だが、手を繋いですぐに駅が見えてきた。
「あそこが駅だよ」
「あぁ…」
猫子は繋いでいる手の力を抜いた。
だけど俺は手に少し力を入れて歩き続けた。
(もう少しだけ…繋いでいたい)
猫子は最初、俺が手を離すと思ったのか、手を緩めたが、俺が離さないと気付いてまた握り直した。
最近、気付いた事がある。
俺は人が嫌いなわけじゃない…人が信じられなかっただけだ。
今までは人の事を嫌いだと思っていたが、そういうわけじゃない。
他人といて楽しくなる時もあるし、褒められれば胸がくすぐったくなったりする。
大鷹先輩と一緒にいるとそういう気持ちになることが良くあったが、今まで先輩は特別な人と思っていた。
だけど、そうじゃなかった。
たとえ信じられなくても人が嫌いではないんだ。
進も、星名も、大鷹先輩も、猫子も、俺の好きな人なんだ。
好きな人なら、信じる事、できるかも知れない。
そう気付いた。
これも、全部文月に出会ったからかも知れない。
あいつと出会ってなかったら、香葉と話すことも無かったし。
勝手にカバンに入って学校についてこなければ、乱川とまともに会話することも無かったし。
勘違いで猫子が告白してくることも無かった。
「ハハッ…」
「どうしたの?」
「いや、何でもねぇよ」
気付くと駅はすぐ近くにあった。
「それじゃ、またね。丈君」
「あぁ、また明日な。猫子」
「…!…うん!」
「じゃな」
猫子の頭を撫でてから俺は猫子と別れた。
「やっと家に着いた」
家に着く頃には時刻はすでに8時を回っていた。
「ただい…まぁ!?」
「…………」
ドアを開けて玄関に入ると、文月が頬を膨らませていた。
「た…ただいまぁ」
「きゅぅん!!」
「いだだだだだだ!!!噛み付くなぁぁ!!!」
「ガジガジガジガジ」
「ゴメンなさい!ゴメンなさい!許してぇ!!」
「がうぅぅ(どこ行ってたの!!)」
「よしよし…ゴメンゴメン…遅くなってゴメンな」
「きゅぅ…(ボク、寂しかったんだぞ)」
「よしよし、ゴメンな文月」
文月からお仕置きを受けたが、文月はすぐに甘えるように擦り寄ってきた。
俺は文月を撫でて慰めた。
「文月、いい加減左手を離してくれ…歯型がつきそうだ」
「カジカジ」
文月はまだ許してくれないみたいだ。
丈君を駅まで送った帰り道、私は丈君が握ってくれた手を見つめながら歩いていた。
(丈君が握ってくれた手…温かかった…まだ感触が残ってる……丈君の汗も…)
私はその手を舐めた。
(丈君の…しょっぱい……好き…大好き…)
その猫子の目は…病的と言っても過言ではないほどの目だった。
〜次の日の朝・川野家〜
朝の日差しが顔に当たってぼんやりと目が覚める。
だが身体が重い…まだ凄く眠い。
(眠い…凄く眠い…それもそうだ。昨日は帰る時間が遅かった……。寝る時間が2時間も遅れた…その分凄く眠い…このまま寝てようかな……)
いつもの生活リズムが2時間もズレるだけでこんなにも違うのか…。
眠気の海に再び身体を沈めようとすると、顔に湿っぽい何かがあたった。
それは何度も顔を触ってくる。
目を開くと、目の前に文月がいて、何度も顔を舐めてきた。
"顔に触る湿っぽい何か"は、文月の舌だった。
「く〜ん、く〜ん」
文月は甘えるように鳴きながら顔を舐め続けた。
「わかったよ…起きるよ…」
俺は文月をどかし、体を起こした。
時計を見ると、時刻は午前6時10分と表示されていた。
「もう少し寝てたら完全に遅刻だった…ありがとな、文月」
「きゅぅん」
そう言って撫でると、文月は嬉しそうに鳴いた。
少し急ぎながら朝食を済ませ、寝坊の遅れを取り戻した。
何とかいつもの時間に登校できそうだ。
「きゅん…!」
「うん?何だ?」
玄関で靴を履いてると、文月が睨んでいた。
「どうした?」
「きゅぅぅ…!」
「わかったよ…今日は急いで帰るから、帰ったら遊ぼうな」
「…きゅっ」
俺はしゃがんで文月の頭を撫でようとした、だが文月はそれをイヤがった。
昨日の事をまだ怒っているようだった。
「だ…丈夫だよ。ちゃんと帰ってくるから」
「きゅん」
文月は鼻で俺の脚を押した。
「ゴメンな。行ってきます。文月」
俺はそう言って文月の頭を撫でた。
今度はイヤがらず、気持ち良さそうに目を細めた。
電車から降りて、学校行きのバスに乗ろうとすると、かなりの人数がバス停に並んでいた。
それを見た俺はバスに乗る気にならず、歩いて学校に向かうことにした。
周りを見ると、他にも歩いてる人が見え、それに続いて俺も歩いて行く。
「あ…」
しばらく歩いていると、猫子の姿が見えた。
見間違うはずが無かった。あのネコミミが何よりの証拠だった。
「…うん、よし」
俺は猫子に近づいた。
「おはよう」
「ひにゃぁ!?」
「な…なんだよ」
「お…おはよぅ…丈君」
顔が熱い…声なんて掛けなきゃ良かったと今更思ってる。
昨日、考えが改まって大丈夫かと思ったが…やっぱりいきなりは無理みたいだ。
その後、猫子と並んで学校へ向かった。猫子はチラチラとコッチを見てくる。
しばらく歩いていると、後ろから声が聞こえた。
「猫子ちゃ〜ん、おはよう」
「おはよう、巳茶ちゃん」
(猫子の友達か…なら、俺はさっさと消えるとするか)
早足でその場を離れようとすると、巳茶と呼ばれた女の子が俺の前に立った。
「何だ?」
「へぇ〜、川野君って良く見ると普通だね」
「どういう意味だよ」
「別に〜、ただちゃんとクラスメイトの顔を見たいと思っただけだよ」
「クラスメイト?…お前って同じクラスだったか?」
「お前じゃない、紅 巳茶よ。それじゃ、改めてよろしくね」
紅 巳茶は握手をしようと手を伸ばした。
少し迷ったが、俺はその手を取って握手をした。
「お、以外…」
「何がだ?」
「川野君なら拒否ると思ったから」
「別にいいだろ……はっ!!」
物凄い視線を感じる…。
「うぅぅ…!」
視線のは猫子のものだった。
猫子は悔しそうな目で握手をしてる手を睨んでいた。
「大丈夫だよ猫子ちゃん。取ったりしないから」
「はぁ…」
俺は猫子の頭に手を伸ばした。
「うにぁあぁあぁ」
「これで満足か?」
「うん…」
猫子は嬉しそうに笑った。
こういうところを見ていると、文月を思い出す。
この顔が、俺は嫌いじゃなかった。
「うわぁ〜…朝からやるねぇ〜」
「にゃは!?」
「大丈夫だよ〜、ちゃぁんと黙ってるから」
「お願いだよぉ、巳茶ちゃん…」
「はいはい、それじゃ私は邪魔をしないように先に行ってるからね」
紅はそう言うと走って学校に向かった。
「ふぅ…めんどくせぇ」
俺が歩きだすと、猫子も黙って隣についてきた。
猫子はそれだけでも幸せそうな顔だった。
教室では話しかけるなと釘を刺し、席に着いた。
そこに、進が近づいてきた。
「おはよう。丈…」
「あぁ、進か。おはよう」
「最近…どうだ?」
「…」
俺は少し悩んでから
「色々と楽しいぜ」
と、答えた。
「「「…っ!?」」」
…教室が静まりかえった。
「あっ…。そ…それくらいだ…!」
俺は乱進ら目を反らした。
「そ…そうか。じゃぁ、また」
そう言って進は自分の席に戻った。
ゾクッ…!!
視線感じた。
誰かのだかすぐにわかった。猫子だ。
見ると、猫子が熱っぽい視線を向けていた。
多分、最近楽しいっていうところに自分の影響を感じてるんだな。
(まぁ、間違いではないんだがな)
最近楽しいのは事実だ。文月や猫子といると楽しいし、笑えるようにもなった。
友達って…いいもんだな
一年前の俺なら絶対に思わなかった事だ。
そしてそのまま授業は進んで、昼休み。
俺は屋上でパンを食べている。学校に行く前にコンビニで買ったものだ。
暑い夏の日差しの下で食べると、素っ気ないパンもそれなりに美味しく感じるから不思議だ。
俺は屋上の床に直接腰を下ろし、柵にもたれながら座っていた。
ここは夏でも涼しい風が吹き抜けてとても快適だった。
風を感じながらモクモクと食べていると、誰かが屋上にきた。
ガチャン
見ると、それは猫子だった。
「えっと…一緒に…ゴハン食べたいんだけど……いいかな?」
「あぁ、いいぜ」
猫子は嬉しそうに近づいてきて隣に座り、弁当を広げた。手作りの弁当だった。
親が作ったのか自分で作ったのかはわからないが、すごく美味しそうだった。
昼食のほとんどがコンビニで買ったりしているから、その作った弁当が特別美味しそうに見えた。
「そういえば丈君って、いつもお弁当持ってきてないよね?」
「ん?あぁ、作るの面倒だし。買うほうが楽なんだよ」
『最近の若者の食生活は乱れている!コンビニで手軽に買えるのをいいことに食事を作らない!けしからん!このグラフを見てください………』
【食生活の乱れ:コンビニ弁当で済ませる若者】
文月は目当ての昼ドラが始まるまで、そんなタイトルのワイドショーを見ていた。
「まぁ、それだけじゃ栄養が偏るから、他の食事は少し考えるようにしてる…ってか、おばあちゃんの言いつけなんだ」
「おばあ様の…」
「様?」
「え!?ううん!なんでもない…」
「?」
猫子はモソモソと弁当を食べ始めた。
それにしても…
「暑いな…」
「そうかな?」
猫子は汗をかかず平気な顔をしていた。
(どういう神経してんだか…)
確かに風が吹いてて涼しいが、日差しが暑かった。
日除けできるようなところを探してみたが、出入り口の扉は小さく、他には特に無かった。
「いい天気で気持ちいいけど…あっちぃ〜…」
俺はワイシャツをつまんでパタパタと扇いだ。
「!!」
「ん?どうした?」
「え!?…い……いや…なんでも…(ジーーー)」
そう言いながらも、猫子は俺から目を離さなかった。
「(ジーーーーーーー)」
(いや…違う……見てるのは俺の胸元だ)
「あ…何見てんだ?」
「うにゃ!?に…にゃぁ!?べ…別にぃ…」
「……見たいのか?」
「にゃぁはぁぁべべべべ!別にそんにゃこと!!にゃにゃははは!?」
……女の子って皆こうなのか…それとも、猫子だけ?
「ん」
俺は第3ボタンまではずして軽く開いた。
「べ…別に見たいにゃんて…(ジーーーーーーー)」
「それならその視線、はずしたらどうだ?」
俺はすぐにボタンをかけなおした。
「あ…」
「露骨に残念そうな顔をするな」
人って、よくわからん。
(いや、きっとこれが今の普通なんだ…多分…)
数年間まともに人に接していないと、こうまで違う世界に見えてくるんだな。
※普通ではありません
食事を終えると、雑談が始まった。
雑談と呼べる会話、本当にたわいもない会話だ。
「ねぇ、丈君」
「あァ?」
「な…なんで怒ってるの?」
「え?いや、怒ってなんかねぇけど」
「でも今の『あァ?』って、言葉の最後が上がる言い方、怒ってるときによく使う口調だよね?」
「あ…あぁ、まぁな(なんで俺が気付かない事まで知ってるんだコイツは)」
「怒ってるのかと思ってビックリした…」
「んで、何の話だ?」
「あのね、最近面白いドラマがお昼にやってるんだよ」
「ふ~ん、どんな内容だ?」
「恋に落ちた恋人達、だけど二人は昔に生き別れた兄妹だったの。だけど二人の愛は揺らぐことなく、数々の苦難を超えていく…感動的な物語なのよ…」
「感動的…なのか?」
「そして今回は話の分水嶺なのよ。じつは彼氏の方には許嫁いいなずけがいて、彼氏はどちらも捨てられないのよ…そしてどちらも選ばれなければ死ぬと言う…本当にどうなるのかしら…最後はきっと感動できる話なのよ」
俺には泥沼的になる結末しか見えないが。
「一度見ればきっと夢中になるわよ」
「いや、遠慮しとく。昔から見てるし」
「昔から?」
「昔は良く遊んでるときに見てたからな。そう考えると本当に仲良いなアイツら。
「?」
【校内食堂にて】
「ブヘックシ!!」
「お兄ちゃん、風邪?」
「いいや…。誰か噂してるのかな?」
「クチュン…!」
「アハハハ、お前もか星名」
「んにゅ…エヘヘ…お兄ちゃんとおそろいだぁ」
そんな会話をしながら九流兄妹はベタベタしていた。
「ん?って言うか、何で学校にいるお前が昼ドラを語ってるんだよ?」
「録画して、家で見てるのよ」
「録画って…家族に見られたら引かれるんじゃないのか?」
「家族で見てるから大丈夫よ」
家族で…って事は弟君も見てるのか、泥沼ドラマ。兄妹もんを姉弟で見るのか。
弟君…そんなに猫子のことが好きなのか。
星名といい勝負だな。
…何の勝負なんだろう…
自分で突っ込むって、むなしいな。
そんな会話だが、やっぱり楽しかった。
たわいもない会話、なんでもない会話、数年ぶりの楽しい会話。
前に進ともまともに話しをしたが、あの時は焦っていて楽しい会話とは言えなかった。
だが今は…今だから言える。この会話が楽しい。
人が嫌いなわけじゃないと気付いて、良かった。
気付けば昼休みももうすぐ終わりそうだった。
俺と猫子は別々に教室に戻った。
(人が嫌いじゃないと気付いたが、やっぱり騒がれたり噂されたりするのはイヤだ)
そして放課後。
真っ直ぐ帰るため、一緒に帰ろうと言う猫子の誘いを断り、今は駅に向かって歩いているところだ。
バスには乗らなかった。と言うより、乗っても仕方ないと言うほうが正しい。バスが来るまでの時間を待っていると、結局歩いて駅に向かう時間とあまり変わらないからだ。
だからほとんど帰りはバスには乗らない。
"ほとんど"と言うのは、俺が学校の委員会に入ってるからだ。
晴天高校では〔部活〕か〔委員会〕必ずどちらかに入らなければならなかった。
部活に入ってない俺は、必然と委員会に入らざるを得ないのだ。
何の委員会というと、図書委員だ。図書委員の仕事がある時は帰りの時間が最終下校時間の6時になってしまう。だがその時間だとバスの待ち時間がほとんど無い。そういう時にはバスに乗って駅まで行く。
駅が近くになると、人の行き来が多くなってきた。
自然に前から来る人を避けながら歩く形になってきた。
その時、晴天高校の生徒が2人、ふざけ合いながら前から歩いてきた。
避けようとしたが、向こうは会話に夢中になっているのに加えて余所見をしていて、こっちに気付いていなかった。
そしてすれ違う時、肩がぶつかってしまった。
「痛てッ」
俺はそのまま無視して歩いて行こうとした。
(向こうがふざけ合っていたのが悪い)
無視しようとしたが、その生徒に肩を掴まれた。
「オイ、ぶつかったら謝れよ」
「あァ?」※怒ってないよ
振り返るとその二人は真っ青になった。
「ヒィ!川野!?」
「スススス…スイマセン!!俺達が悪かったです!」
「許してくださいぃ!」
「あ…イヤ別に怒ってなんか…」
だが向こうはすでに走り去っていた。
「まぁいっか。帰ろっと」
俺はそのまま家に帰った。
「ただいま」
「きゅん!」
玄関のドアを開けると文月が居間から出迎えに来てくれた。
俺は文月を抱き上げて頬ずりした。
「ただいま~、文月ぃ~」
「きゅぅん」
「さて、遊ぼっか!」
「きゅぅん!」
途中で夕食をはさみながら、俺は文月と遊びまくった。
「ほら、文月~」
「ハグゥ」
ボールを軽く投げて遊んだり、
「引っ張れ文月ぃ」
「グググ」
捻ったロープで引っ張りっこしたり、
「文月、文月、文月、文月~~~」
「きゅふぅ」
いっぱい撫でたりした。
文月も尻尾をたくさん振って、とても楽しそうだった。
最近かまってなかったからか、今日は凄い甘えてきた。
「はぁ~~、可愛いなぁ~文月~~」
「きゃう~ん」
続く
最近、弟がパソコンを独占するようになって、小説書く時間が少なくなってしまって。
なるべく短い時間で小説を考えないとな。