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いいひより

一話の、林枯が来る前の話。


あと、本編の前書きで書くと何か違うなぁと思ってココでいうんですが…。

本編の感想や反応待ってます。


本編は、タイトル含め硬派に見える作品かもですが、日常シーンもギャグシーンも全然あります。

この番外編も込みでゆるい目でお願いします。


「しりとりしない?嫌なら」


「いいです」


キッパリ断られて、ちょっと傷ついた。

「ひィ」と声を上げる。


昼下がり、ぽかぽかのいい天気……ではないな、普通に。

雲は灰色だし、雨降りそうだし。


チラッと瀬古ちゃんを見下ろす。

二人掛けのベンチに腰掛け、週刊誌を読んでいる。


どうして隣に座らないのかというと……俺が緊張するから。どっか行けよとか思われそうで。

ないとは思うけど、舌打ちされたらヤだし、ベンチの横に突っ立っている。


俺は空を見上げた。

コーヒーに牛乳を入れたみたいな、微妙な模様の雲が広がっている。


「雨は好き?意外といるよね、雨が好きな人」


瀬古ちゃんは手を止めた。眉をひそめる。


「……います?そういう人」


「いるよ。えっと、テレビとか。俺もちょっと好きだし」


瀬古ちゃんは「ふーん」と息を漏らした。


「興味というか、好きも嫌いもないです。天候に」


「えっ。ないの?今日はいい天気だなぁとか」


「……洗濯日和とか、雨が降ると傘が必要ですし、関心はありますよ。大人だから」


「あぁ……」


昔の頃をふと振り返る。


「……俺、小さい頃はなーんにも考えてなかったかも。雨の日はびしょびしょに濡れて帰って」


「何考えてんです。風邪になって肺炎にでもかかったら?」


「あはぁ。今はそう思うよ……。好きだったんだよ、あの特別感」


「わざとじゃないですか」


「そ、ばかばか。____あ。気づいたんだけど、雨が好きな人って、雨の独特な雰囲気の……特別感が好きなんじゃない?」


新しい発見という風に瀬古ちゃんを見ると、何のリアクションもしていなかった。


「でしょうね」


「あれ?そうか……」


別に、大した事ではなかったらしい。

情けなくて、ひ〜と思った。


「私はやっぱり雨は嫌いです。大人として」


「電車が止まるとか?」


「そういう事ス。スーツは濡れるし、電車は遅れるし。あと、傘って持ち手がゴツいと手提げ鞄を落としかけるんですよね」


俺は、雨の日の自分の醜態を思い出した。


傘を忘れ、段差のない場所で転び、帰って母親に叱られる。

……俺ってひどいな、と思った。


でも、何となしに口を開いて尋ねてみた。


「それは雨の、えっと、被害が嫌いなんじゃない?」


「……?」


瀬古ちゃんは初めて俺と目を合わせた。


「んぁ、どういう……」


目がきょとんとしている。

目が丸いとかわいいな、と心の中だけで思った。


「雨のダメなところは抜きで、雨は好き?」


「……____」


瀬古は空を見上げた。

何かを思いつこうと、わずかに眉間に皺が寄っている。


「……雨、見るのは好きです。いえ、違いますね。うまく言語化できるかは分かりませんが……」


「たぶん、俺のがひどいから、言いなよ」


「雰囲気が仄暗いでしょう。街が」


「ほのぐらい?」と聞くと「薄暗い感じです」と教えてくれた。


「街の、騒がしい音は雨音に呑み込まれるし。街の広告とか、ネオンの光が鈍くなって……」


ふと、その光景が頭の奥で広がり出す。


雨に包まれる都会。

その中に一人突っ立っている自分。


「……意外と、嫌いじゃないかもしれません、雨。街の、時に煩わしいほどの情報から守ってくれるから」


少し間が空き、「変な事言っちゃいましたね」と瀬古ちゃんは視線を週刊誌に戻した。


恥ずかしがってるのか、俺は鈍くてよくわからないけど。


「伝わったよ。俺よりましだから」


フッと、鼻にかかるように笑われた。


「それでもやっぱり、降られるのはヤです。降られて嬉しいのは、誰かさんくらいでしょうね」


「あはは、雨に降られてもう喜んだりしないよ。……かっぱ着てたら別だけど」


「……。それ、はしゃいでないですか?」


雨の話をしていたのに、なんだかんだ雨は降らなさそうな空模様だった。


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