表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

いいひより

2話の少し前の話。


あと、本編の前書きで書くと何か違うなぁと思ってココでいうんですが…。

本編の感想、反応、ばりばり待ってます。


本編は、タイトル含め硬派に見える作品かもですが、日常シーンもギャグシーンも普通にありますので、ゆるい目でお願いします。


「しりとりしない?嫌なら」


「いいです」


キッパリ断られて、ちょっと傷ついた。

「ひィ」と声を上げる。


昼下がり、ぽかぽかのいい天気……ではないな、普通に。

雲は灰色だし、雨降りそうだし。


チラッと瀬古ちゃんを見下ろす。

二人掛けのベンチに腰掛け、週刊誌を読んでいる。


どうして隣に座らないのかというと……俺が緊張するから。どっか行けよとか思われそうで。

ないとは思うけど、舌打ちされたらヤだし、ベンチの横に突っ立っている。


俺は空を見上げた。

コーヒーに牛乳を入れたみたいな、微妙な模様の雲が広がっている。


「雨は好き?意外といるよね、雨が好きな人」


瀬古ちゃんは手を止めた。眉をひそめる。


「……います?そういう人」


「いるよ。えっと、テレビとか。俺もちょっと好きだし」


瀬古ちゃんは「ふーん」と息を漏らした。


「興味というか、好きも嫌いもないです。天候に」


「えっ。ないの?今日はいい天気だなぁとか」


「……洗濯日和とか、雨が降ると傘が必要ですし、関心はありますよ。大人だから」


「あぁ……」


昔の頃をふと振り返る。


「……俺、小さい頃はなーんにも考えてなかったかも。雨の日はびしょびしょに濡れて帰って」


「何考えてんです。風邪になって肺炎にでもかかったら?」


「あはぁ。今はそう思うよ……。好きだったんだよ、あの特別感」


「わざとじゃないですか」


「そ、ばかばか。____あ。気づいたんだけど、雨が好きな人って、雨の独特な雰囲気の……特別感が好きなんじゃない?」


新しい発見という風に瀬古ちゃんを見ると、何のリアクションもしていなかった。


「でしょうね」


「あれ?そうか……」


別に、大した事ではなかったらしい。

情けなくて、ひ〜と思った。


「私はやっぱり雨は嫌いです。大人として」


「電車が止まるとか?」


「そういう事ス。スーツは濡れるし、電車は遅れるし。あと、傘って持ち手がゴツいと手提げ鞄を落としかけるんですよね」


俺は、雨の日の自分の醜態を思い出した。


傘を忘れ、段差のない場所で転び、帰って母親に叱られる。

……俺ってひどいな、と思った。


でも、何となしに口を開いて尋ねてみた。


「それは雨の、えっと、被害が嫌いなんじゃない?」


「……?」


瀬古ちゃんは初めて俺と目を合わせた。


「んぁ、どういう……」


目がきょとんとしている。

目が丸いとかわいいな、と心の中だけで思った。


「雨のダメなところは抜きで、雨は好き?」


「……____」


瀬古は空を見上げた。

何かを思いつこうと、わずかに眉間に皺が寄っている。


「……雨、見るのは好きです。いえ、違いますね。うまく言語化できるかは分かりませんが……」


「たぶん、俺のがひどいから、言いなよ」


「雰囲気が仄暗いでしょう。街が」


「ほのぐらい?」と聞くと「薄暗い感じです」と教えてくれた。


「街の、騒がしい音は雨音に呑み込まれるし。街の広告とか、ネオンの光が鈍くなって……」


ふと、その光景が頭の奥で広がり出す。


雨に包まれる都会。

その中に一人突っ立っている自分。


「……意外と、嫌いじゃないかもしれません、雨。街の、時に煩わしいほどの情報から守ってくれるから」


少し間が空き、「変な事言っちゃいましたね」と瀬古ちゃんは視線を週刊誌に戻した。


恥ずかしがってるのか、俺は鈍くてよくわからないけど。


「伝わったよ。俺よりましだから」


フッと、鼻にかかるように笑われた。


「それでもやっぱり、降られるのはヤです。降られて嬉しいのは、誰かさんくらいでしょうね」


「あはは、雨に降られてもう喜んだりしないよ。……かっぱ着てたら別だけど」


「……。それ、はしゃいでないですか?」


雨の話をしていたのに、なんだかんだ雨は降らなさそうな空模様だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ