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王子の記憶

「王子様よぉ!本気で俺たちだけであの島取ろうってのかい!」

ゴロツキの様な荒くれ兵士共が酒を飲み笑いながら俺に聞いてくる

「あたりめぇだろうがよ!あの島落とせば親父だって俺の言う事無視できなくなるぜ!」

「はっはー!うちの王子様はいつでも本気よぉ!それによぉこうなった時の王子様は必ず勝つんだ!俺の給料全額賭けてもいいぜぇ!」

「テメーらいい加減王子様って言うのはやめてくれや!俺のガラじゃねぇ!それになんかなよなよしたイメージで虫唾がはしるぜ」

「じゃあなんとお呼びすればいいんでしょうや王子様!無学な下々にお教えいただけますかってか!ガハハ!」

「なんかあるだろーよ!親分とかお頭とかよぉ!おめーらだって王子様のお子守り部隊なんていわれてうれしかねえだろ!」

「ちげえねぇや!おれはこれからお頭って呼ばせてもらうぜ王子様!」

俺はこいつらが好きだ、自分勝手で恐れを知らない、糞野郎共、こいつらといると狭い城に籠ってるのがバカバカしく感じる

第13猟兵軍団それが俺たちだ。猟兵と言っても狩人の経験がある奴なんざ数えるほどしかいねぇ、ほとんどは酒場で飲んだくれてた馬鹿や軍機違反者、恩赦を受けた元犯罪者

いわゆる懲罰部隊だ、そいつらを指揮するのがこの俺ディール様だ!

「そういやよ、さっき港で俺たちの事を海賊呼ばわりした三下兵士の野郎どうなったかねぇ!身ぐるみ剥いで教会の鐘の代わりに吊るしてやった奴!」

「今頃良い音鳴らしてるんじゃねぇかなぁ!助けて神様ぁ~ってよ!まあお前が元海賊なのは違いねぇ事実だがよ!」

「んでお頭、あの島国にはいつ着くんですかい?」

「んあ、そうだな帆船で1週間くらいだったからこの新築軍艦で3日くらいじゃねぇかなぁ」

「時代の進歩を感じるねぇこんな鉄の塊が浮いてるんだぜ?しかも5艘も!いったいどこで手に入れてきたんですかい?」

「親父の艦隊からぎって来た、どうせ見せつけるだけで使わねぇんだから俺たちが使っても問題ねぇだろ」

「お頭は本当親不孝者だねぇ全く!」

「ちげえねぇや!」

親不孝者…ねぇ…

俺は第一王子だが正室の子じゃない、妾の子だ

当時親父と正室の間に子が生まれなかった、祈祷師や占い師、とにかくなんにでも頼って10年間続けても子は生されなかった

夫婦仲は冷え込み親父は当時メイドだったお袋に手を出した、そしたら一発で大当たりだ

親父は俺とお袋を引き取り第一王子誕生と国内外に発表した

面白くないのは正室だ10年支え続けて共に子を生そうとしたのに裏切られたんだ

国は大いに沸いたらしい、だが俺の苦難はここから始まった

まず正室には母子共に虫けらのように扱われたとの事

次にお袋が流行り病で死んだ

最後に念願の男児が親父と正室との間に生まれた事

正室が男児を生したことで俺はもうお払い箱だ

正室にいびられる人生になるはずだった、だがその正室もお袋と同じ流行り病で死んだ

かくして残されたのが母親のいない腹違いの兄弟だ

二人も男児を抱えると起こるのが後継者争いだ

まだ乳飲み子だった俺達にですら長子か次子かで論争が起こった

後継者は長子であるべきとする教会派

死してなお正室の後ろ盾が残る弟を後継者とする元老院派

だがそんなことはお構いなしに俺たち兄弟は仲が良かった

よく城の中庭で国王ごっこをした

国王が勇者を歓迎するというだけのごっこ遊び

国王は人気がなくお互いが勇者になりたがった

やがて月日は流れ兄弟が15を迎え学園に入学した

成人になっても兄弟仲は良かった

弟の周りには主に帝国の生徒が集まってにぎやかだった

俺には北方連合の連中がしょっちゅう喧嘩を吹っかけてきて返り討ちにする毎日だった

喧嘩してる時だけは嫌なことを忘れられた1年の半分はそうやって過ごした

だが半年経った時親父は周りに急かされてついに決心したらしい

次期後継者を俺にすると

話は半日も経たないうちに広がり次の日には知らないものはいなくなっていた

俺の周りには昨日まで弟を囲んでいた帝国の生徒が輪を作り、弟は孤立していた

そんな弟に目を付けたのが北方連合の生徒だった

喧嘩を売られてないか心配だったがさらに性質の悪い方向へ進んでいた

北方連合でもここ最近革命が各地で起こり帝国と共に歩み融和しようとする派閥が大頭してきた

一人になった弟はそいつら融和派とつるむようになった

融和と言えば聞こえはいいがあくまで貴族中心の共産体制を作り国民の扱いは二の次だ

館に帰ると弟は北方の連中が言う融和を帝国全土で広めれば平和になり共に歩んでいけると熱弁してきた

弟の口から政治の話を聞きたくはなかったいつまでも純粋な兄弟でいたかった

俺は弟の口を遮り自室に戻った、正直弟の無考えな政治論にイライラしていた

それから俺は弟と口をきかなくなった、学園を卒業するまで…

卒業後はお互い得意なことに打ち込むようになった

俺は兵を率い盗賊や反政府組織の拠点を制圧することを主に行い

弟は融和について研究しそれを広めるために同志を集い布教活動をしていた

民衆は自分達を助ける俺を名君と称え自分たちに利のない活動を続ける弟を愚君と呼んだ

そうなると親父は弟を城から追放し、ろくに作物も取れず人々もやせ細った辺境の領主へと封じた

ある時弟の領地から山賊討伐の依頼が入ってきた

内心弟と再会し蟠りを無くせるのではないかと期待していた

現地に向かうと弟の領地は鴉ですら飢えるやせ細った地であった弟の城が見えてきた

兵量の半分を飢えた人々に分け与えるよう指示し入城した

城に入って最初に目についたのが煌びやかな装飾と肥え太った役人の姿だった

「領主に会いたい呼んできてくれないか」

役人に告げた

「領主様は現在健康状態が悪いため、お会いになれません」

弟が俺に会いたくないのだと解釈し内心落胆しながらもそれ以上は聞かなかった

役人から近々山賊や盗賊のリーダーが集う集会が行われると聞かされそこで頭領さえ打ち取れば後は烏合の衆だけだと説明を受けた

俺は軍の中から5人の強者を選び旅人に扮し集会場近くに宿を取った

6人はそれぞれめぼしい場所を見回り部屋に戻っておそらくここだというところに目星をつけ夜を待った

日が落ち暗闇が村を覆うと人の気配が外からしてくる

6人の中から1人斥候を出し、残った5人は戻るまで部屋の明かりを消し暗闇に目を慣らす

30分ほど経ち斥候が戻ってきた、どうやら目星を付けていた一か所が当たったらしい

窓からそっと抜け出し集会場に向かう

斥候の話だと敵の数約20との事でそれぞれ油断無きよう目を配る

6人はそれぞれ別れ、見張りに当身をし騒がれないよう十分注意をしながら集会場に入る

「ここまでだ!投降するなら悪いようにはしない!全員おとなしくしろ!」

場がざわつく、その中から斧を持った痩せた男が襲い掛かってきた

「役人の犬が!これ以上やられっぱなしでたまるかよ!」

剣を構え応戦する、こいつ…強い

強者のオーラが肌身に刺さる

攻撃を受けるのがやっとだ、隙を見計らうも中々見つからない

「クソッ役人の犬のくせに粘りやがる!とっとと倒れろ!」

男が大振りの体制を取る、見つけた!振り下げた斧をギリギリでいなす

体勢を崩しよろける男、すかさず蹴りを入れ込む

倒れた衝撃で斧が吹き飛んだ

「ここまでだ、投降しろ」

「へっ犬コロに殺されるのは癪だが降参する気なんざさらさらないね」

剣を首元に突きつける

「待って下せえ!オル!この方は敵じゃねぇ俺たちの味方だ!」

後ろから小柄な男が駆け寄ってきて剣の刃を掴んだ

男の手から血がしたたり落ちる

「兄貴!何やってるんだよ!刃から手を放せよ!」

「じゃあ降参するんだ!じゃねえと死んでも離さねえ!」

「わかった!降参だ!降参する!だから兄貴やめてくれ!」

兄貴と呼ばれた男が刃から手を放した、こちらも剣を下げる

「ありがとうごぜぇます!ありがとうごぜぇます!」

「まず話を聞かせてほしい味方かどうかはそれから決める」

あたりがスンと静かになる、ほかの連中も一通り終わったようだ

「これで全員か?女子供も交じっているな」

「へぇ、総勢24名でがす…」

「一応縄を掛けさせてもらうぞ」

「じゃあ話を聞かせてもらおうか」

「へい、あっしらが山賊盗賊の頭領って言うのは真っ赤な大嘘でございやす、あっしらはここいらで生まれた農民でございやす」

「農民?にしてはそっちの男の斧の腕が桁違いに高かったが…」

オルと呼ばれた男のほうを見やる

「そいつはあっしの弟でして、学園都市で斧術を習って傭兵としてあちこち回っていたんでございやす」

「なるほど…だがなぜ傭兵をやめて農夫になったんだ?」

「見りゃわかるだろ、ここにいる連中は皆痩せこけちまって鍬も振るえねぇんだ」

「俺は運がよかったんだよ、成人して学園に行ける連中はここいらだと珍しいんだ義務だなんだ言っておきながら行けるのは役人の息子くらいさ」

「だがお前は学園に通ったんだろ?それはなぜだ?」

「それは兄貴が俺のために金を作ってくれたからだ、朝も夜もずっと働いてな」

「両親を早くに亡くして残ったのは弟だけでやんした…あっしの食い扶持全部つぎ込んでも将来は楽させてやりたかったんでやんす…」

「それなのにこいつぁ傭兵をやめてこの土地で暮らすなんざ言い出して…こんな土地にしがみついてもいいことなんざねぇのに…」

「よくわかった。でもなんで今日こんな集会をしたんだ?」

「それは…」

なにやら話辛そうな顔になったな…オルに目線を向ける

「ぶっ殺すつもりだったんだ!あのクソ役人をよ!」

「その通りでございやす、このあたりで腕が立つのはこいつくらいなもんでして…役人の私兵も何度も追っ払ってくれたんでございやす…」

「あいつら私兵じゃ勝てねぇって中央に援軍を頼んでのこのこやってきたのがあんた達だったんだ」

「そうか…でもなぜここにいる人達を?一人で乗り込んでも良かったんじゃないか?」

「あっしたちは弾避けでございやす…いくら腕が立つといっても多勢に無勢、弓やクロスボウで狙われたらいつかは当たってしまいますんで…」

「つまりみんな覚悟の上だったわけか…」

「まあ結果こうなっちまったがな」

恨めしそうな視線を向けてくるオル

「そう睨むな、あの役人は俺が持って帰って中央裁判所で裁判を受けさせる」

「へっこんな僻地にやってくる将兵が頑張ったって良いトコいくらかの罰金刑だろ」

「コラ!オル!こちらの隊長さんが頑張るって言ってくれてんだ!結果はどうあれ一泡吹かせてもらえるだろうさ」

「ん?お前達俺の事を知ってるんじゃなかったのか?」

「え…?へぃ、食料を分けてくれてわりぃ人じゃないのは知っていやしたが隊長さんのことまでは何も…」

連れてきた兵士5人がお互い顔を見合わせて笑い出した

「こら!笑うな!俺だってちょっとは傷つくぞ!」

夜が明け領主城へ凱旋する6人を役人が出迎える

「おお、お疲れさまでした!これで民草も安心して暮らせます!」

「ああ、さすがに疲れたがな」

「それではご朝食を用意いたしますのでどうぞ中へ」

「ああ、でもその前にな土産を持ってきたぞ」

「はい?土産とは?」

「おいオル、出てきてもいいぞ」

「へいよっと」

急なことに顔を青ざめる役人

「なに簡単なことだ中央の裁判を受けさせるのに連行しようと思ったんだがな、こいつを倒せたなら全部見逃してもいいぞ、1分待ってやる」

「は、はい!裁判を受けさせていただきますぅ!」

「よし、お前ら連行しろ、おっと弟の部屋の鍵だけ受け取らせてもらうぞ、どこにある?」

「こ…こちらになります…」

ジャラっと城の鍵束を受け取ると弟のいる領主の私室に向かった

「くそどの鍵だかわからんな…」

順番に試していくが全然開かない、いっそぶち破るかと思った矢先カチッと鍵が開く音がした

「よし!入るぞ!」

バンと扉を開けた!中に入ると暗く、いろんなものが地面に散乱している

ベッドには誰かが横たわってる様子、最悪のケースが頭をよぎる、おそるおそるシーツを掴み引っぺがした

「ん…あれ…兄さん?」

「ああ、久しぶりだな…!」

グッと力を込めて弟を抱きしめた

「ハハハ、苦しいよ兄さん」

久しぶりに見る弟の顔は青白く手足も細くなり骨も浮いていた

「役人たちから何かされなかったか?もう大丈夫だからな」

「うん?いや特に何もされてはいないよ、近年不作だから民衆の食べるものがないと聞いたからね、新しい肥料の開発をしていたんだよ」

「そうかそうか、優しいなお前は…」

「少し外に出ような紹介したい人たちがいるんだ」

兄弟二人そろってエントランスを抜け外に出る

「うわっまぶしい!久しぶりに日を浴びたよ」

「みんな!弟だ!出てきてくれ!」

「へへぇ…!あっしらにはもったいない事で…」

「今度から彼らがお前の面倒を見てくれるこの土地の民たちだ」

「民だって?ちょっといいかな兄さん、すぐ戻るよ」

「弟様が元気そうで何よりでやしたね殿下」

「ああ、痩せてたのが少し心配だがお前たちが面倒見てくれるなら俺も安心できる」

「お待たせ!こっちが根菜の肥料薬、これが芋の肥料薬だよ、およそ2倍のスピードで作物が実るはずなんだ使ってみてくれるかな」

「へぇ!それはもうありがたいことでやす、早速畑を耕しやす!」

「兄さん、僕はねこの枯れた土地を帝国で一番豊かにしたいんだ…父上には話したけど兄さんにはまだだったね」

「もし僕が不平な裁定をされたと思ってたらそれは間違いだよ」

「そうか…じゃあ俺は皆が笑って暮らせるような国を作るか!」

「お互い先は長いけど頑張ろうね兄さん」

さて俺たちの任務は終わった

あとは帰って拘置所に役人をぶち込んでそれから…

「待ってくれ!いや…お待ちください殿下!」

後ろから呼び止められる、あれは…オル?

「あー…私はこの度不敬をいたしまして殿下にとっては大変なご迷惑をおかけしまして…」

「いつものしゃべり方でいいぞ、オル」

「ありがてえ!俺ぁあんたに大分な借りが出来ちまった!借りは返してえ!どうか俺をあんたの部下にしてもらえねえか!」

「気にするな一々皆に借りを返してもらってたら俺が困る、だがまあお前が来てくれるなら頼もしいことこの上ない、よろしく頼むよオル」

「任せといてくれ!あと俺の名前はオルドーってんだあんたならオルでもいいが出来りゃ名前で呼んでくれ!」

「おうお頭!何やってんだ一人で!みんなお頭がいねぇからつまんなそうだぜ!」

「いやな、昔の事を思い出してたんだ、お前とタイマンしたことあったろ?あの時お前の攻撃を受けてたら剣にひびが入っててな、やせっぽちのお前に受けた攻撃でヒビが入るんなら今のお前だったら俺死んでたのかなってよ」

「なんだそんなことか!俺はつええからな!今なら一発で剣をへし折っちまうかもな!…まあお頭が受ける攻撃は俺が受けるって決めたからよ、剣にヒビが入るなんざ金輪際ねぇよ」

「フッ、言いたいこと言ってくれるなお前は、もうやめだ、やめやめ!下行って馬鹿どもと一杯やるかね!いくぞオルドー」

「よっ待ってました!そうと決まれば新しい酒樽引っぱり出してこなきゃな!

始めまして初投稿になります

楽しんでいただけたら嬉しいです

どうかお付き合いください

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