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神々の記憶の中で、ただ君の平和を願う 〜戦乱の世で神の【記憶】を宿した少年と、天涯孤独の少女が世界の真実と闇に挑む物語〜  作者: 蒼宙 つむぎ


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3.届かぬ手 ルクスside

第3章 最後です。

明日から第4章が始まります。

穏やかな、クスリと笑うお話です。

『神様、お願いします。助けてください』

『神様、私の願いをかなえてください』

 いつも聞こえてくる“声”。

 助けてくれ?かなえてくれ?

 なんでも神様にお願いすればいいと思っているのか。

 ルクスは神の“種”なのだが、この“声”に辟易してこじらせてしまったのだ。

 こじらせて“種”がなかなか芽吹かない。心が黒く染まっていくにつれて、“種”が膨張する。だんだんと体が蝕まれていき、とうとう森の中で倒れてしまったところをエルサに拾われたのだ。


 ルクスはエルサと出会い一緒に過ごすことに安らぎを感じ、心が浄化されていくのがわかった。

 彼女からは“お願い”が聞こえないのだ。

(ああ……なんて心地いいんだ……)

 初めての感覚に顔がにやける。

 この安らぎを手放すことはできないと考えたルクス。

 どこに行くのもついていく気満々だ。


 エルサとともに村に向かったルクスは、人々の悪意や絶望に触れ、心が黒く染まっていくのを感じた。

(やばい!これまでよりも強くて、止められない!)

 “種”の膨張を抑え込められず、体がきしむ。神に“お願い”する声がさらに襲ってくる。

(やめてくれ!もう、聞きたくないんだ!)

 絶望の中、エルサに一瞬癒されるも、兵士の嘲りに再び怒りで心が黒く染まり、とうとう“種”が爆発し魔力が暴走。

 今まで光をまとった金髪が漆黒に変わる。

(くそ!くそ!人間が憎い!)

 神は神でも破滅の神になろうとしているルクスは、詠唱もなく魔力の矢を作り上げ、ためらうことなく放つ。

(殺してやる)

 その時、思いもしない事態が起きる。エルサが飛び込んできてしまったのだ。

「エルサ!?」

(なぜエルサが?)

 一瞬の出来事に状況が飲み込めない。

 何が起きた?

 無意識で倒れたエルサに駆けより抱きかかえる。

 赤い血がすごい勢いで広がって、止めることができない。魔力を込め作った矢で貫いてしまった。

(だめだ!だめだ!だめだ!エルサの命が消えてしまう!)

 大切な存在のエルサ。彼女が消えるなんて許せなかった。

 そんな絶望と後悔と悲しみと怒りを抱えながら、最後の言葉を交わす。

 初めてルクスはエルサから“お願い”を聞くことができた。

「っ!……あのね、私の分も生きて……誰にも報復せずに、悔しい気持ちは……“飲み込ん”で。……平和な世界をたくさん……生きて……」

(ああ……なんてやさしい“お願い”なんだ。こんなの、かなえるしかないじゃないか)

「また出会えたら……私とたくさんお話してね……私の王子様。私のこと、忘れ、ないで……ね……」

 もう涙が止まらない。止める必要もない。


 愛しいエルサが願うなら、俺は――。


次回、第4章に入ります

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