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神々の記憶の中で、ただ君の平和を願う 〜戦乱の世で神の【記憶】を宿した少年と、天涯孤独の少女が世界の真実と闇に挑む物語〜  作者: 蒼宙 つむぎ


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3.届かぬ手(2) ~エルサの回想~

戦争の描写が少しあります。

苦手な方、ごめんなさい。

 エルサの父は前国王の側近で、宰相として活躍していた。

 だが、数年前に前国王がはやり病で崩御され、王太子が国王になったあたりからすべてが狂いだす。現国王がわがままな発言を繰り返し、隣国の国王と口論になることも多かったのだ。

 都度、宰相である父は諫めるも、現国王はただ笑い飛ばすだけ ——そして、愚かな王は父を更迭し、貴族席を剥奪。その日、伝統ある侯爵家が歴史から消えることになった。

 その数日後、とうとう戦争という最悪の事態になる。


「エルサ、大事だから覚えておいてほしい。やられたからってなんでもやり返すのはいいことではないんだ。時には我慢というか、あきらめというか、……そうだな、“飲み込む”ことも大事なんだ」

 戦火から逃げる際、父が真剣な顔でエルサに伝える。

「“飲み込む”?」

「そうだ。“飲み込む”んだ。例えば、戦争になったからといって、武力で報復するのはよくない。そういう時は政治で報復するものだ。お父さんも神様じゃないから報復するなとは言えないのが悲しいけどな」

「ふ―ん。戦争の時は戦ってやり返しちゃいけないのね。でも、どうして?」

 エルサは叩かれたら叩き返してもいいと思っていたから素直に疑問に思った。痛い思いをしたらやり返したくなる。なのに、なぜだめなのだろう。

「小さな喧嘩ならいいんだ。命を落とさない小さな喧嘩なら。やり返しを繰り返しても疲れていつかやめるだろ?でも、戦争は国同士の戦いだ。戦争の時は疲れた人の代わりがたくさんいるから、いつまでたっても終わらないんだ。誰かが“飲み込ん”で戦うのをやめないと、罪のない人たちばかり犠牲になる。それはいいことではないだろ?」

 エルサは戦争というもがわかっていなかったが、悪くない人の命が犠牲になるのは間違っていることは理解した。

「うん、なんとなくわかった。こういう時は“飲み込む”ね」

「約束だぞ、エルサ。たとえお父さんとお母さんがいなくなってもやり返すな。お父さんとお母さんはエルサが大事なんだ」

(お父さんとお母さんがいなくなる?なに?なんでそんなこと言うの?)

 急に“いなくなる”なんて言われて悲しくなり、そんなことをいう父に腹立たしく思い、大声で泣き出した。

「ごめん、ごめん。もちろんいなくなるつもりはないよ。でも、絶対いなくならないとも言えないからね。だから、約束だ。報復はしない。“飲み込む”って」

 泣きじゃくるエルサを抱きしめ、父が願いを込めて伝えた。

(やさしい大好きなお父さん。お願いだからいなくならないで)

 エルサは泣きながら父に最後のお願いをしたが、かなえられることはなかった。


次は暴力的な場面があります。

しばらく重めな話です。

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