4、イーサンへ ~グランツからの手紙~
残り、あと2話です。
「くそ!このままだとすべてが終わる!」
未曾有の危機とはこのことを言うのだろう。城下町には魔物があふれかえり、崩壊した建物と犠牲者が山となっている。
かく言う自分も、先ほど魔物からの攻撃を腕で庇い、食いちぎられてしまった。
イーサンは死を覚悟し、目をつむった。
痛みもなく、咆哮も聞こえない。
そっと目を開けると、すぐ目の前にいたはずの魔物がいない。辺りを見回してもどこにもいないし、光っているように見える。
(何が起こった?)
優しい光の雨が降っている。
両手で光を受け止めようとし、左手がないことを思い出す。だが、違和感があった。
血が止まっている。止血などする暇もなかったから何もしていない。
無くなった腕を見るときれいに塞がっている。
「は?なにこれ!」
他の傷も塞がっている。
自分の身に何が起こったか、なぜなのか、全くわからない。
困惑していると、装備していたサイドポケットに紙が挟んであるのが見えた。
(さっきまでなかったぞ、紙なんて)
わけがわからないが、一つ一つ状況を確認するしかないと思い、歩きながら紙を開いてみた。
グランツからの手紙だった。
ゆっくり歩みを止め、目を通す。
全てを理解し、涙があふれ、手紙を持つ手に力が入った。
望んだ未来ではないが、最善の結末。
これしかないのだと納得し、走ってゴンザレスを探す。
「ゴンザレス様!火急の要件につき、人払いをお願いします!」
「イーサン、なんじゃ改まって。そんな物言いできたのじゃな」
ゴンザレスは右足の手当てを受けていた。いや、欠損した個所をきれいに隠したというべきか。
「……もちろんできますよ。ゴン爺、二人だけではなしがあります」
「そのようじゃな。皆、下がれ」
テント内でせわしなく働いていた人たちが出ていくと、持っていた手紙をゴンザレスに渡す。
「ゴン爺、二人は戻りません。この結末を俺では国王に説明できません。力を貸してください」
イーサンは深く頭を下げた。
「わかっておるよ。……そうか、二人は戻らんか。寂しくなるの」
「……大切な友が、いなくなりました……」
ゴンザレスはゆっくり紙を開き、指でなぞりながら読んだ。
そして、大きくため息をつく。
「そうだな。友と呼ぶのはな。相手は神じゃからの。……国王両陛下にはわしが話す。最後の“加護”で見たと言えばなんとかなるじゃろ。――それより、イーサン」
「はい」
「まず、この後手紙は燃やせ。エルサ嬢のことは伏せろ。何も言うな。以上」
「はっ!」
全てを背負ってくれたゴンザレスに最上の敬礼を送った。
イーサンは、最後にもう一度手紙を読んだ。
~イーサンへ
イーサン、手紙で別れとお願いをすることを許してくれ。
エルサは人々の悪意に心が壊れ、厄災となってしまった。
スタンピードを止められなくてすまない。
元に戻すこともできないから、生きている人々の傷は癒した。お前の左腕も戻せなくてすまない。
スタンピードは消した。代償としてこれまで授かっていた“加護”はなくなる。あと、俺が次の神の座に就くことで今の状況になった。これが俺にできる最大限だ。
方々に説明は難しいだろ。ゴン爺を頼ってくれ。きっと、なんとかしてくれる。ゴン爺にも謝っといてくれ。
これから、人々の心を導いてやってくれ。エルサと二人で見守ってる。
親友イーサンに出会えたことに感謝してる グランツ~
読み終え、丁寧に二つ折りにし、
両手で大事に挟む。
決別を終えた後、皿の上で火をつけ、
音もなくただ――
燃え尽きても、じっと見つめたままだった。
最終話も本日アップします




