4、バルドへイム王国(8)
エルサとグランツのかわいいエピソードです。
8.筋肉は正義です
グランツ様にけがをさせてしまってから1週間が過ぎました。
私はあれから居てもたってもいられず……毎日グランツ様のお見舞いをしています。
勿論今日も第1騎士団へ差し入れをもっていざ出陣!
「グランツ様!お加減はいかがですか?今日もよろしければこちらを召し上がって……」
第1騎士団の執務室へ向かった私はノックもそこそこにドアを開けて声を掛けました。
「エ、エルサ嬢!」
(すごく焦ったお声ですね、グランツさん。どうしたのかしら?)
いつも冷静なグランツ様の慌ててる声にどうしたのかと部屋を見渡すと……、上半身裸ではないですか!!
「キャー―――!」
お父様の上半身裸とはわけが違います!お年頃の男性です!私は見たことありません!!
恥ずかしくなって顔が熱くなる。目も開けられない。
(どうしよう。もうお嫁に行けなくなるわ……。じゃなくて、グランツ様を傷物にしてしまったわ……ん?違う?)
大丈夫、通常運転です。
「お嬢様、大丈夫ですか?グランツ様、さっさと服を着てください。お嬢様のお目汚しになりますわ」
(まったく、男性はどこでも服を脱いで……。はしたないですね)
冷めた目ですごく失礼なことを考えているセレナであるが、執務室で着替えていたので問題はないはず……。
「お嬢様、これしきの筋肉でしたら大したことございませんわ。ゴードン様の素敵な筋肉に比べたら……ん“!!!」
セレナは思わす思ったままのことを口にしてしまって、顔を赤らめる。
「お父様の素敵な筋肉……?」
「ゴードンさんの素敵な筋肉……?」
エルサとグランツの声が重なる。
(ああ!やってしまった!気を抜いてしまって本音が漏れてしまったわ!)
赤くなりすぎて頭から湯気が立っているのを二人はじっと見つめる。
「セレナ、お父様の筋肉が好きだったのね……わかるわ!あの背筋は素敵ですものね!」
エルサは懸想というものがわからないので筋肉のことのみ拾い上げる。
「エルサ嬢はモリモリの筋肉が好きなのか?」
「ええ!筋肉は正義ですから!あ!!グランツ様!!私ごときがグランツ様の裸を見てしまいすみません!責任をきちんと取りますので!」
(グランツ様をきちんと娶らねばいけません。頑張らねば!)
いろいろよくわからない発言と妄想をするエルサと一人悶えているセレナ。
そして、
「エルサ嬢。責任とは?あ、俺の裸などお目汚ししてしまったな。すまなかった」
グランツは会話のキャッチボールが得意ではなかった。エルサのおかしな言葉を拾い上げられていない。
グランツは自分の腕を見つめる。そこそこ鍛えてはいるがゴードンのような筋肉はついていない。自分の筋肉がエルサの好みに合わなかったのかと、大きな体で子犬のように落ち込む。
「いえいえ!グランツ様も素敵な胸筋をお持ちです!肌にも張りがありますし、この腕の筋肉も素敵ですわ!こう、力を入れると筋が立つようなところなんて……いいですわ……」
エルサは隠れマッチョ好きだ。そして、グランツの筋肉を恥ずかしいと言いながらも隅々までチェック完了しているちょっとした変態だ。
三人ともがそれぞれに変な方向で思考を……いや、妄想を膨らませているとイーサンが入ってきた。
「グランツ、次の遠征の支給品のチェック終わったぞ。あれ、エルサ様じゃないですか。今日もお見舞い来てくれたんですね。それは差し入れですか?グランツ、食べていい?」
場の空気を読めるイーサンはカオス状態を察したのか、声をかける。
「お前にはやらん。すべて俺がいただく」
「けちだな~。エルサ様、グランツってばエルサ様のことになると融通が利かないんですよ~。」
「イーサン!!うるさい!お前だけ今日は残業するか?」
「おーこわ。エルサ様、こんな奴ですがよろしくっス。じゃ!」
二人の芽生えそうで芽生え切らない、始まりそうで始まりきらない空気をほんのちょっとかき混ぜてさっさと逃げるイーサン。
(グランツ、頑張れ!脈ありだぞ!)
その夜、グランツから相談を受けて何かと世話を焼いてあげるいい奴である。
次回、二人の距離がさらに近づきます。
ちょっと甘い?かも。
12:00と20:00の2回投稿予定です。
よかったら見てください。




