衝撃は止まらない
「とりあえずオリーブオイルかけるぞ?」
「マストじゃろ」
「粉チーズもいっときたいですわね」
「それもマストだな」
「ミートソースにはホットソースもおススメです」
「やる」
という訳でようやくパスタに辿り着く。
なお、この後には追加で注文された肉料理が届くもよう。
ちなみにこの時点で金額は考えないことにした。
全て姉貴基金からの支払いだし、気にして楽しめない方が損という考え。
ちなみに俺は小エビのタラコソースを注文してる。
これが美味いんだ。
「カルボナーラには半熟卵もだな」
「ミートソースにも欲しいわい」
なお、トッピングもバンバン追加されている模様。
まぁ……いいよ。
「思った通りのクオリティだな」
「だから! こんな値段で!! 食べられるなら!! 苦労はしない!!」
「落ち着きなさい。周囲の目もありますわ」
「一応消音の障壁を張ってはいるから、外部に個々の会話が漏れることは無いが」
「気持ちは分かるが気をしっかりと持て。持たんぞ?」
キノコとホウレン草のクリームパスタを食べたラベンドラさんが取り乱すも、咄嗟のフォローで周囲に乱心するエルフが認知された様子はない。
にしても、そこまでなのか……。
「クリームがボソボソとしていないし、キノコやホウレン草の風味もフレッシュ。麺もしっかり小麦の香りが感じられて、舌触り、喉越しともに滑らか……」
「ゆで加減もしっかりしてますし、何より値段相応以上の出来ですわ」
「カルボナーラもソースは滑らか、チーズの香りからコクに至るまでまがい物感はない」
「ミートソースも肉がゴロゴロと入っておる。やはり値段がバグじゃな」
だそうですよ?
まぁ、正直パスタはクオリティ高いと思う。
小エビのタラコソースとか、絶対他店じゃあこの値段で食べられないし。
……プリッとした海老の食感と、歯切れのいい麺の食感。
タラコの塩味と磯の風味が、クリームソースと良く調和して麺に絡むんだ。
刻み海苔も憎いよね。タラコの磯の風味の手助けをしてるんだもん。
「イカ墨はどうだ?」
「生臭さは無く、風味だけが残っていますわ。丁寧に処理されているのでしょうね」
「やはりなんでも美味いのか……」
と、驚いているラベンドラさんの元に、注文していた肉料理達が登場。
……ハンバーグが四百円ってマジで何事だよね?
ここだけは異世界組の反応に同意するわ。
「……全然小さくないな」
「ここまで来ると、逆にどうやって採算が取れているのか不思議でしょうがありませんわ」
「野菜もソースもたっぷりかかっておるな」
「……待て」
で、運ばれてきた肉類たちを見てマジャリスさんが何かに気付く。
なになに? どしたん? 話聞こか?
「あまりにもメニュー表通りの料理過ぎないか?」
「何がですの?」
「見た目だ。盛り付けから配置、量に至るまで、メニューに載っているものとまるで一緒だ!」
「確かに……」
「付け合わせの量や向きすらも同じですわね」
……そんな驚く事か? と思ったけど、海外だと写真詐欺というか、サンプル詐欺みたいなのが多いって聞くな。
いや、多いというか、むしろ写真通りの物が出てくる方が少ないというか……。
異世界でもそうなのか。
「こんなの、約束された勝利みたいなものですけれど、食べますわね」
「赤ワインを片手に持っておいた方がいい。どうせ飲む」
「ですわね」
という事で先鋒、リリウムさん。
チキンチーズステーキを切り分け、そのまま一口。
あの……一回、二回と肉を噛む度に頬が緩んで目元も緩みまくってるんですけれど……。
エルフの威厳はどこ行った? あ、本編に忘れてきた? それも序盤に?
あ、そう。
「鶏肉なのに固くなく、どころか柔らかくて噛む度に肉汁が溢れますわ!!」
「ワインとは?」
「無論合いますわ! 舐めていますの!?」
舐めてないと思います。
あと、逆切れ良くない。
「ハンバーグも固くなく、むしろ柔らかい。これも噛む度に肉汁が溢れてくる……」
「野菜とかかっているソースがまた絶品じゃな。いい塩味で肉の味に負けとらん」
「付け合わせのポテトをソースに付けて食うと美味い」
分かる。
グリル系に付いてる付け合わせのポテト、かなり美味いんだよな。
それを肉汁やソースに浸すともう……。
俺も頼もうかな……。
だいぶお腹一杯だけど。
「コーンも甘いな」
「このコーンの盛り合わせは無いのか?」
「無いですね」
「何故だ!? こんなに美味いのに!!」
コーンバターは居酒屋メニューだからじゃないですかね?
それか、イタリア料理には無いから。
無いは言い過ぎか。
「パスタも、肉料理も、コスパバケモンじゃろ、これ」
「それらだけに限らない。ワインも含めて全てがコスパバケモノだ」
「しかもメニューが豊富ですわよ? もし私たちの世界にあったら、全メニュー制覇するまで通いますわ」
「退店せずに食い切るまで居座るも視野」
黄金伝説かな?
でもまぁ、この人達ならやりかねないんだよなぁ。
……という訳で、
「ピザに生ハムやモッツァレラチーズを乗せたり、ほうれん草のソテーの乗せても美味いですね」
ピクッ。
「ペペロンチーノにもホウレン草のソテーは合うでしょうし、アレンジも含めれば完全制覇はどれだけ先になる事やら」
ピクピクピクッ!
悪魔の囁きを発動。
俺がアレンジ案を言う度に、耳を動かすの面白いなこの人達。
「……次回試そう」
「近い内に必ず! 来ますわよ!!」
「次はピザを攻めよう」
「あ、パスタは追加料金払えばペンネに変更できますよ?」
「……ピザもパスタもいこう」
この人達の反応見るの、楽しい。




