アメノサ「全員……消す?」
「ズルズル」
「……」
「……」
「カケル、これもう三つ」
「いつまで食べるの?」
『無頼』さん、なんか〆のさっぱり冷しそうめんを大層気に入られたみたいで。
さっきからそうめんばっか食べてるんだよな。
「お前に言われたくはねぇ」
「私のはデザート」
ちなみにそんな『無頼』さんに冷ややかな視線を送るアメノサさんも、デザートを三巡目? 四巡目かも、に突入。
十分いつまで食べるの? の範囲に入ってると思うよ? うん。
俺? 俺はつつましく杏仁豆腐の五個目を完食中だよ。
「ふぅ……」
「終わった?」
「ああ。次はうどんだ」
えぇっと? 〆のそうめんの後にうどんまで食うの?
この人の胃袋はどうなってんだ?
さっきまで散々肉と米食ってただろ。
「……化け物」
そんな『無頼』さんにアメノサさんの容赦ない呟きが。
いやまぁ、完全に同意ですけれども。
「炭水化物は別腹だろ」
「聞いた事無いですが……」
そんなものを別腹にするな。
どう考えてもメインだろうが。
別に分けるな。
「カケル、チョコバニラソフト」
「はいはい」
これにはアメノサさんも呆れ顔。
ちなみにこの後、『無頼』さんは冷やしうどんを五杯平らげました。
……ここまで来ると恐怖が勝つよね。
*
「いやぁ、食った食った」
「これで満足してなかったら国の財政の為に国外追放してる」
「その分稼いでるだろうが」
……そういえば、『無頼』さんって『Sランク』の冒険者だったっけ。
忘れてたなぁ。
「また行きたい」
「だな」
「お気に召したようで何より」
会計を済ませ、俺の家までの車の中。
そりゃあもう満足そうな二人の姿に、連れて行って良かったなぁ、と実感。
「今度はスイーツだけの食べ放題の店とかがいい。あればだけど」
「今回肉だったンだから次は魚だろ」
スイーツ専門店、ありはするんですけれどね。
ちょっとエルフ達を連れて行った後なので、あまり行きたくは無いというか……。
帰り際の店員さんの視線とか怖かったもんね。
「まぁ、考えときます」
「期待してる!」
「あンま負担になンねぇとこでいいぞ」
ありがとう『無頼』さん。
あなただけだよ、そう言ってくれるのは。
「じゃ」
「今日も美味かったぜ。ごっそさン」
家に着き、一往復用の魔法陣を起動し、その中へ入っていく『無頼』アメノサペア。
……ああは言ったけど、次はどこに連れて行こうかな……。
食べ放題……近場……検索っと。
*
「……カケルの世界のご飯の匂いがしますわね」
「『無頼』とアメノサが帰ってきたようだな」
「どんな鼻してるんだお前ら」
『無頼』とアメノサが焼肉の食べ放題を堪能し、異世界へ戻ってくると。
すぐにその事を察知した食いしん坊のエルフ二人。
そんなエルフの反応に、半ば呆れるラベンドラは。
「何を食べたかは気になるな」
調理士として、二人が食べた物が気になる様子。
「クンクン……あまり酒の匂いはせんのぅ」
なお、食いしん坊エルフとは別ベクトルで嗅覚が異常な飲兵衛ドワーフは。
「こっちの世界でも飲み放題とやらのシステムが広まらんもんか」
「ドワーフがこぞって利用して店を潰すだろ」
異世界では……というか、ドワーフという存在のせいで実現不可能なシステムに思いを馳せ。
「失礼な。潰すものか。ちょっと倉庫の酒樽を空にするだけじゃぞ」
「それで店が潰れるのだが?」
無茶苦茶な事を言っていたりする。
なお、この四人が今何をしているのかと言うと……。
「魔法陣の準備出来ましたわ」
「アメノサの魔力を探知成功。いつでも跳べる」
『無頼』とアメノサ、二人が何を食べたのかを問いただすため、二人のもとへと転移をしようとしていた。
……そして――、
「キャッ!?」
「肉の匂い!!」
転移した先は、当然探知したアメノサの魔力の場所。
そこは……、
「あら……着替え中でしたの」
アメノサの私室であり……。
「すまない! 悪気は無かったんだ!!」
焼肉を終え、匂いが染みついた洋服を着替えている最中であり……。
「肉を焼いて食ったのか!?」
何よりも食欲を優先するマジャリスは、脱ぎたての洋服を手に取って匂いを嗅ぐ。
――おおよそ、デリカシーというものが存在しないその行動に、
「…………ッ////」
顔を真っ赤にしたアメノサは、
「てめぇらの血は!! 何色だ!!!」
三人に向けて手のひらを向け、九本の尻尾が、真っ赤に染まる。
なお、ガブロは転移直後に酒の匂いのする『無頼』の方へと走ったため、この場には居なかった。
――が、刺客と間違われて『無頼』と応戦。
ただ、素手での戦闘では流石に『無頼』に軍配が上がり……。
「いや、とっつぁんかよ」
「ぎゅう……」
のされて無力化された後に、『無頼』によって気付かれたのだが、それはまた別のお話。
*
「ねぇ、『無頼』?」
「なンだ?」
「カケルを婿にしたいって言ったら、笑う?」
「…………笑いはしねぇが無謀もいいとこだぞ?」
「知ってる」
「俺らの血筋はただでさえ特別だ。そこに、どこの馬の骨とも分からン血が入るのは、確実に反発される」
「分かってる」
「今でさえ婚姻の誘いは山ほど来てるだろうが。それら全部を蹴るとなると、相手側に格ってもンがねぇと……」
「だよね……」
「だがまぁ……」
「……?」
「応援はするさ。久しぶりに聞いた、姉の本音のわがままだからな」
「『無頼』……」
「振られたりして」
「『無頼』!!」




