ハードルを下げよう
賢い僕は考えました。
姉貴がホテルのビュッフェになんて招待してくれやがったおかげで、あの人らは高い料理の味を覚えてしまった。
――だったら、うんと安い食べ物を与えて、上がりまくった味覚のハードルを下げてしまおう、と。
とはいえ、安い食べ物として傷んだ食べ物とかは流石にアウトなので。
買って来たのは小学生の味方、駄菓子!
だがしかし、たかが駄菓子と侮るなかれ。
いや、懐かしい駄菓子屋に行って中を見て回ったんだけど、予想以上に酒に合う駄菓子が多いな? と。
となれば、普通の食事後にビールと駄菓子の酒飲みセットでも与えてやればいいんじゃないかなって。
という事で食後にビールとグラスを持って四人に突撃。
「酒か?」
「食事は終わったはずだが?」
とまぁ、ガブロさん以外は俺がビールを持ってきたことを疑問に思ってるね。
「今日はどちらかと言うと甘いお菓子ではなく、お酒に合うお菓子の方が多いので」
「ほぅ」
俺の言葉に、既に一本目のビールを空にしたガブロさんの眉が上がる。
いや、はえぇよ。
「酒に合う菓子が多い、という事は、今日の菓子は複数あるという事か?」
「ですです。普段のケーキとかよりも何倍も安いので、結構買って来ましたよ」
という事で駄菓子のお目見え。
懐かしかったのも相まって結構買って来ちゃったんだよね。
「ほぅ」
「確かに、色々な種類があるみたいですわね」
「わしの勘が言うとる。これは酒に合うぞい」
で、飲兵衛ガブロさんが真っ先に手に取ったのは、巨大カツ。
よく分かってるじゃないか、この飲兵衛は。
「魚肉のシートをフライっぽくした駄菓子ですね。ソース味がついてるのでそのままどうぞ」
「うむ」
というわけで包装を剥き、大きく一口。
ザクリ、という音がしっかりするのが巨大カツのいい所。
「むほほほほ。このソースの濃さが良いなぁ。酒に合うぞい」
「む、魚肉か。……薄いからかあまり魚感を感じないな」
「衣があるおかげで噛み応えがしっかりあって、全然満足しますわね、これ」
「小腹が空いた時とかに食べたいかもしれん。……喉は乾きそうだが」
「その喉が渇く所にビールを流し込むのが最高なんですよ」
というわけで俺もビールを。
……プハー。
こんなのが子供の駄菓子として売られてますからね?
普通にツマミですよ。
「お次はこれじゃ」
で、またしてもクリティカルを引くガブロさん。
選ばれたのは、じゃがフライ。
薄く伸ばしたポテトシートに衣をつけて揚げた、ザクザクした食感と濃いめの味付けが酒に最高に合う。
これも多分駄菓子じゃなくてツマミ。
「随分と薄いな」
「先ほどカケルが値段は安い、と言っていた。安くするためには材料は薄くするか小さくするしかない」
「なるほど」
まぁ、それもあるだろうけど、だったら分厚いの一枚とかもあっていいと思うんだ。
それが無いって事は、じゃがフライはあの薄さの方が美味しいと企業側が判断したという事。
……だと思う。知らんけど。
「んむ! このパリパリとした軽い食感と味の濃さはビールが無限に進むな!」
「……これなら微発泡のワインにも合いそうじゃないか?」
「合わせるなら白だろうな。いや、ビールも美味いのだがな?」
「どうしてもワインと合わせたくなってしまいますわよねぇ」
まぁ、エルフはそうよね。
むしろ、今大人しくビールを飲んでる方が珍しいまである。
「複数枚入ってるのが嬉しいな」
「一枚では無いというだけで満足感が違うからのぅ」
「薄いせいか割れていたりするのが残念ではあるが」
「それはしょうがない部分ですかねぇ……」
なんと言うか、綺麗な状態でいてくれるのが普通過ぎて、半分に割れてたり、三分の一くらいで割れていたりすると妙にガッカリするんだよな。
駄菓子の安さなのに、完璧を求めてしまう……。
「ん? なぁ、カケル?」
「? どうかしました?」
「これはどう考えてもツマミじゃろ?」
「駄菓子です」
「いや、言い逃れ出来んくらいにツマミじゃろ?」
「おやつって書いてあるんで駄菓子です」
ガブロさんが手に取ったそれは、しっかりと『おやつ』と表記されているサラミ。
なお、個装。
「普通にワインにも合わせられると思うのだが……」
「おやつですねぇ」
何度も言わせるな。
企業がおやつと謳っている以上おやつなんだよ!!
「ふっつーにサラミじゃな」
「赤。微発泡」
「ビールに当たり前に合いますわね」
「つまみサラミに改名した方がいいんじゃないか?」
「そうなると子供たちが手に取りづらくなるでしょうが」
サラミが好きな子供だっているかもしれないでしょ!
何なら、俺が子供のころは結構買って食べてたぞ。
……安いから、値段調整とかにピッタリだったんよ、おやつサラミ。
「……なぁ」
「分かってます」
「これって……」
「駄菓子です」
「いやでも」
「スーパーでもお菓子コーナーにあるんで断固として駄菓子です」
「……絶対に酒に合うぞ?」
「ジュースにだって合いますよ?」
ガブロさんが手に取って俺に見せつけてくる駄菓子。
それは――ミニースターラーメン……であった。




