美味いものは美味い
「中華系の甘辛い味付けが赤ワインと合う」
「麻婆も捨てがたいですわ。香りも辛味も絶妙ですのよ?」
「中華で言うなら小籠包だ。中から溢れるスープと肉汁は最高だぞ?」
「王道の餃子じゃろ。水餃子の具が海老のやつが美味いぞい。皮はモチモチ具はプルプル。酒が進んで進んでしゃあない」
このホテルビュッフェ、ある程度のエリアに分かれてて、エリアごとに提供されてる料理の種類が違う。
肉類やオムレツなんかは鉄板焼き? コーナーにあったけど、今四人は中華エリアに足を運んでる。
ちなみに鉄板焼きコーナーの料理を取って来てたリリウムさん曰く、
「後でまた取りに行きますわ」
とのこと。
他の三人も頷いてたし、後々またテーブルが肉まみれになる予感。
「お刺身美味しー」
「寿司も美味いよね」
で、俺と姉貴は和食コーナーから海鮮を選んで持って来てる。
新鮮な生エビはプリッとしてて甘みが強く、肉厚で噛めばジュワッと肉汁が溢れるし。
鯛は昆布締めされてて、昆布の旨味と鯛の身の甘みがシャリと馴染んで美味い。
マグロは筋がない綺麗な赤身で、ねっとりとした強いうま味が最高。
ワサビも香り高くて、醤油に付けなくても十分に美味いんだこれが。
「というか」
「ん?」
「ちまきとやらも美味しいぞ!」
「皮だけを食べる北京ダックとやらも美味い」
「酢豚や回鍋肉も文句のつけようがありませんわ!」
「青椒肉絲も酒が進むわい」
なおも中華コーナーを練り歩き食べまくる四人を見ながら、姉貴がポツリ。
「あの四人連れてきて正解だったわね。この調子なら、全料理レビューしてくれるわよ」
「まぁ、あの人らだからねぇ」
事前に説明しただろ。
食べ放題なんだったら、この人らはとんでもなく飯を食うんだって。
……ちょっと違うな。
別に食べ放題じゃなくても食うからな。
でも鳥辺境伯とか、スイアイの時は、店員さんが怖がるレベルで食ってたからな……。
それを考えると、まだ大人しいのかもしれん。
「次は何だ?」
「エッグベネディクトがありましたわよ?」
「む、食う」
「バーガーもあるのか。いくつか持って行こう」
「ハンバーグもとりあえず全部のソースで試したい」
そんな姉貴との会話の後、俺がまた料理を取りに行っていたら、後ろを通り過ぎる四人。
ハンバーガーを……いくつか?
普通は一つなのでは? 翔は訝しんだ。
さて、次は何を食べようかな。
「んー……一足先にローストビーフでも貰いに行くか」
あの人らのようには食べられないから、俺は早々にメインに入ることにする。
という事で、ローストビーフを取りまして。
ソースは何にしよう……シャリアピンソースにするか。
「ん~……。あー、美味いわ」
焼き上がり、しっとりとした赤身肉。
そこにかかる、玉ねぎたっぷりのシャリアピンソースの相性のいい事いい事。
玉ねぎの甘さ、バターのコク、赤ワインの香り、その全てが、肉の味を引き立てることに作用してる。
そこに流し込む赤ワインですよ。
バター、玉ねぎ、牛肉と相性がいい食材しか無いから当然の様に赤ワインも合う。
口の中で肉汁と赤ワインがマリアージュを見せ、新しい味わいに変化するってもんよ。
「ローストビーフも美味しそうね」
「そういう姉貴はハンバーグか」
「美味しそうだったからね」
なんて肉とワインを堪能していたら、姉貴がハンバーグを持って登場。
かけてあるのはチーズソースか?
重そうだな……。
「わ、すっごい。肉汁溢れてくる」
「え、美味そう。俺も取って来よ」
真横で、ナイフを入れた瞬間に流れる肉汁を見せられたらもうね。
俺も食べるしかないじゃんね。
という事でハンバーグを取りに行こうとすると、
「まだまだ食べたい料理ばかりだな」
「ですわね」
四人とすれ違う。
……だけども――あれ?
さっきハンバーグがどうだの、バーガーがどうだのと言ってたよね?
今持って行ってたプレート、そこにカツだのパスタだのポテトだの乗せられてたように思えたんだけど気のせいかな?
なんか、セルフでお子様ランチ作ってなかった?
この場合エルフ様ランチになるのかな?
「えっほえっほ、もっとお酒を一杯飲まなきゃ、えっほえっほ」
すれ違ったドワーフについてはスルーで。
もう十分飲んどるやろがい。
というか、今持って行ってたのはウイスキーだな。
ハイボールっぽかった。
いや、だから何だという話だけれども。
「んー……普通にデミグラス……いや、サッパリ和風にしよう」
で、ハンバーグを取ってソースで悩む。
結局、大根おろしを乗せて和風醤油ソースに決定。
他にはワサビソースやら、トマトソースなんかもございました。
「えっほえっほ、空になったグラスにお酒を注がなきゃ、えっほえっほ」
で、席に戻ってる途中にすれ違ったドワーフはもちろんスルー。
もう飲んだの? ハイボールを?
流石にピッチが速すぎんか?
いやまぁ、ドワーフ的には普通なんだろうけれども。
「……は?」
で、席に戻ったらですよ。
ガブロさんが座っていた席の前に、そびえ立ったタワー。
唐揚げとフライドポテトとフライドチキンがまるでジェンガの様に組まれてますが?
品を持てと私は出発前に言いましたよね?
「大丈夫なのかこれ……」
主にホテルスタッフの視線とか。
「残さなきゃ大丈夫よ」
「取り過ぎると他のお客さんが取れなくなるでしょ……」
「あー……。翔、めっ! って言っといて」
「聞くわけないだろ」
ドワーフは子供じゃないんだぞ。
エルフじゃあるまいし。




