魔法少女は人気者!?
あれから却子はあっという間にクラスの輪の中に溶け込んでいた。
[忘さんってなんでここに転校したの?]
[なんか変わった名前だね]
[忘さんは可愛いね]
クラスメイト達が却子が座っている席に集まって隣から却子に色々質問しているのが聞こえて来る。
確かに却子がウチの学校に来たのかは謎だ。
何の前触れもなく突然来たのだからな。
だから俺は何も知らないし、何も聞かされてない。
ただ却子からは魔法少女に関して1つ言及した事がある。
それは、
『私が魔法少女だというのは極力外部に公言しない様にしないといけません。でないと悪の組織に身バレする恐れがあるので』
[わかった。気をつける様にはする]
却子が魔法少女だとバレない様に口止めされていたのだ。
何も考えてなさそうな却子だが、意外と細心の注意は払っている様子。
ただその隠し事がいつまで続くかはわからない。だからこそ一層注意深くならなくてはいけない。
───休み時間
[うっひょー]
[行くぜ行くぜ]
廊下で複数の男子がふざけて走り回っていた。
クラスが違って接点もない人達だから誰かは知らない。
全員とは言わないが男子は基本何歳になっても変わらない。まるで小学生みたいで見てられない。
[コラッ男子、廊下を走らないで]
気が強そうな1人の女子が複数の男子に向かって注意する。
だが男子達にはその声が聞こえていなかった。
すると恐れていた事が起こってしまった。
それは、
[ああああああああああああ]
1人の男子が右側の開いていた窓から転落してしまったのだ。
[まずいどうにかしないと]
[私に任せて下さい]
ずっと傍観していた俺達はすかさず落ちた男子を助けそうと急ぐ。
却子は先陣切って男子を救おうと奮闘する。
[マジカルマジカル〜、ウオウオウオ]
却子は魔法を唱えた瞬間男子は光輝いた。
すると目を疑ってしまう様な出来事が起こった。
[きゃあー、なんでアリになっちゃうんですか〜。もうダメですー]
なんと落ちた男子はアリになってしまったのだ。
アリはものすごい速度で地面に落ちていく。
こんな小さいのにはっきりと見えていた。
却子は失敗を確信し、泣きべそをかく。
だがここで思いがけない光景を目にする。
[あれ?俺はいったい何をしていたんだ?]
なんと落ちていた男子は地面に落下したものの、全く痛がる素振りを見せずに人間に戻っていたのだった。
しかも窓から落ちてからの記憶が全くない様子。
[あれ?どうなっているんですか?]
却子も今の状況が理解出来ずに困惑している。
確かにアリになっただけで無事になるとは到底考えられない。
そう思ったのだが、一件落着してよかった。
あの件から少し経ってスマホでアリの事調べてみたところ、アリは体重に比べて体表面積が大きいから、落下する時に空気抵抗を大きく受けるため、落下速度が遅くなるから高いところから落ちても助かる様だ。
却子は失敗したかの様に思ったが、結果的には成功したのだから却子は人助けに大いに貢献したんだ。
ナイスだな。
と、心の底から却子を褒め称えたのであった。