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19 旅の始まり

早朝の北門でカイさんや、

ギルド受付嬢のウリンに

オルネアやバーンズ、

馴染みの門番と別れを告げた後、

馬車で街道を走る。


この地方は一年の大半が穏やかな気候が

特徴で農業や酪農に適した土地である。

そんな大陸東方の

過ごしやすい夏を過ぎて、秋にかかる頃。


北側の街道沿いにはどこまでも広く

金色の稲穂が続き、遥かの遠くからは森が続く、

その景色はまるで金色の海を渡る様であった。


夏の熱気が落ち着きを取り戻し、

秋の風がそよぐ気持ちの良い気候となり、

静かな稲穂の騒ぐ音が旅人の頬を撫でる。


間も無くオルタナ大陸東方には冬が訪れる。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


僕達は、一面金色の小麦畑を馬車に乗って

目的地を目指す。


一帯で栽培されているのはソーシ麦と言うらしく、実が大きくひいた粉から出来るパンは香りが良いと言う特徴があり、リム王国の主要産業の一つとなっている。


『綺麗じゃの…ワシはこう、平和な景色が好きじゃ』

馬車の後ろで足をぷらぷらさせながら

何処か遠くを見つめるアディ

太陽に照らされた白く美しい横顔と

透き通る瞳が少し虹色がかって見える。


思わず見惚れてしまったが、横からフランがしなだれかかってじっと僕の目を覗き込んできた。

やはりその若干切れ長の瞳も虹色だが、アディとは違い少し明るい様に見える。


『黒トカゲにしては、感傷的です事』

若干からかう様な口調でフランは話すが、

アディはすっと笑うと

『ワシじゃて、いっつも破壊の限りを尽くすばっかりじゃありゃせん。大体ワシを怒らせるのが悪いんじゃ、やれ喧嘩がどうじゃ、こっちが偉いなどと小競り合いばっかりしおる。その上森は荒らす、川は汚すと…人族も魔族も自分勝手じゃ』


『私達が守る世界だもの可愛い子供の様なものね』

『そうじゃ。本来ワシらは生き物や植物が平和に暮らすのを愛でるのが好きなんじゃ』


そう言うとしばらく金色の麦畑を見つめる。

金色のキラキラした色がアディの不思議な色の瞳に映ってやっぱり綺麗だと思った。


夕方頃には渓谷の入り口前までたどり着く。

今晩はここで野宿となる為、僕らは夕食の準備を始めた。

カイさんが持たせてくれたソーセージと

芋で作った保存食をスープで煮た物を作る。


『中々。スルトの料理はうまいぞ』

「ありがと。簡単な物だけどね、物資を分けてくれたカイさんやウリンに感謝だよ」

訳2週程は節約して移動できるだけの物資を

用意してもらい、その中にはポーションや防寒具などこれから必要な物もある。


夜間は既に気温が大きく下がる季節になっていて、防寒具が無いと大変な事になる。


夜は焚き火を囲い順に見張りをする事になったが、黒曜がキャンプを囲う様に陣取っている為、結局朝までこの辺りの弱いモンスターは近寄らなかった。



翌朝は快晴で渓谷沿いの平坦な街道を走り、

途中モンスターの襲撃はあったが、なんだか妙に張り切ったアリスとオリビアがすぐに倒してくれた。

夜は黒いネグリジェのモンスターと半裸のモンスターが交互に襲って来るとか?

毎夜僕の布団に潜り込もうと攻防戦を開くのはやめてほしいんだけど…寝不足です。


そんな時はこっそり布団を抜け出して、

黒曜のそばで毛皮に包まれて眠る事にした。


それから旅の途中では


夜空に浮かぶ沢山の星の川とか

空一面の流れ星に、

薄く発光する花が一面に咲く月の花の群生地


美しい景色を超え僕らは西へと進む。


増水した川が渓谷を分断し足止めを食ったが予定通り2週間弱で目的の中継の町へ到着した。


僕達は早速宿を取る為、詰所へ向かう。

リム王国の国境の町ブルードン。

これより先は森が続き、川の上流である

ミラージュ大氷河の南端に行き着く。

道は険しさを増し、氷河では極寒の吹雪が

待っている。


ミラージュ大氷河の北端には妖精国があると言う噂だが、人類未踏の土地であり今の装備では足を踏み入れる事さえ叶わないだろう。


僕達は食事をとりつつこの先の情報を集める為、町の唯一の酒場へよる事にしたのだが、

その酒場でこの先の物騒な噂を耳にした。


人斬りの流れ者がエルフを狩って周っており、流れ者のその剣筋は恐ろしく、すれ違い様に気付けば切られていると言う事らしい。


アディがピクリと反応する。


それからたっぷりと料理を堪能して

宿へ戻る。

久々のベットはとても快適だった。


翌朝はこの先の行軍に備えて物資の調達に

市場などをめぐる、

今はフランと黒曜が一緒だ。


左手がないので、荷物持ちはもっぱら黒曜がやってくれている為、若干の手持ち無沙汰を感じつつ買い物をしていると、フランに


『みんなそれぞれの役割をしっかり果たして上手くいっているのはスルトのおかげですわ』


(フランは優しいなあ…とっても美人だし気遣いだって凄くしてくれる)


フランを抱きしめて髪に顔を埋める。

『---!』

フランが真っ赤になってクネクネしている。


「フランはとっても優しい子だよね。僕はそんな優しいフランが好きだな」

『すッすすす !?』

暫く悩ましげにクネクネしながら真っ赤な顔でぶつぶつ呟くフラン


『もう!腰が抜けましたわ。スルトにはかないませんわ』


フランはとても楽しそうに笑った。


ソーシ麦: 育成が早く、環境変化にも強いリム王国の特産品。麦酒の原料となる事から周辺国では需要が高い。加工品原材料としても重宝される。


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