12 月明かり
妙に静かな場所だと思ったが、
よく見渡すとそこは全く音もない
真っ白な空間が続いている事はわかった。
ぼんやりとした夢見心地の様な
感じがしていたんだけど、
途端に今度は耳なりの様な
大きな音が聞こえてきて
そのうちに頭の中がスッキリして来た。
おかげで良く自分を観察できた。
上も下も分からない真っ白な世界で、
さっきまであったはずの怪我は今も無い様だと分かって安堵した。
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目が覚めると同時に
左腕から焼ける様な痛みが襲ってくる。
全身も痛いし、
右腕は痛みはあるものの傷はピッタリと塞がって腕は繋がっていた。
左腕は肘から先がないが
止血はされているみたいだ。
不思議と左腕の痛みは無くて
ただ全身が気怠いのはきっと血を
失い過ぎたからだろう。
そこで斬られた時の事を鮮明に思い出してしまって
吐き気を覚えた。
ずぶりと剣が腕を切り裂く瞬間、背中を深く斬られたあの熱い感覚が今更に襲ってくる。
全身に嫌な汗が吹き出して、
そこでスルトは死ななかったんだと思って
アディの悲しそうな顔が脳裏によぎる
時刻は夜明け前か
「アディ…」
隣ではアディが寝息を立ててベットに
突っ伏している。
そっと顔を覗き込むと、
月明かりに白く美しい美貌には
泣き腫らしたあとが見えて、
なんとなく申し訳ない気持ちになる。
『おはようスルト、もう大丈夫な様ね』
起き上がる事はまだ出来なかったが
部屋を見回すと、
見慣れないお姉さんが壁際の椅子から
立ち上がって、
甘ったるい声で話しかけて来た。
ど、どなた?
『もー焦ったわ〜いきなり血だらけになってスルトがころがってるんだもの』
彼女は心配そうな顔をして
息がかかるほどの至近距離まで近づくと、
じっと僕の目を見つめる。
月影に照らされて見える顔は、
美しく柔らかな雰囲気の女性。
ただし妖しく光る瞳は明るい虹色。
「貴女が治療して助けてくれたんですか?」
『そうよ。でも現状ではコレが精一杯ね、
左腕は消失してしまっているから…』
そうか…
あの状況の中誰か分からないけれどこの人は
精一杯助けてくれたんだ。
「ありがとうございます…あんな状況から救って下さって感謝しています」
『元気出してね。でも安心して頂戴。
必ず腕も元通りにしてあげるからね』
とても優しい声で
ちょっと困った様な悲しそうな表情をした
彼女はそっと僕を抱きしめてくれた。
なんだか初対面なのに妙な懐かしさを
覚えた僕はきっと彼女を知っている。
ぎゅっと抱き返すと彼女は
美しい顔をピンクに染めて
優しい笑顔で笑った。
そして
ベットの反対側でアディは
鬼の形相で立ち上がっていた。




