10 ギルド
アリステルの一行は丁重に一室に通される事になった。
騎士団貴賓室の一室
満足気な少女がふかふかなソファーで
お菓子を食べている。
『あるじ殿コレは何と甘美な事か♪』
果物を砂糖で煮た物をのせたタルトを
口いっぱいに頬張ってニコニコなアディ
大人しくお座りしているでっかい大型犬
彼の口の周りはトマトソースでべったりだ
黒曜お前パスタ好き?
アリスとオリビアも目が覚めたみたいだけど
アディを怖がって隠れてる。
高級な部屋で挙動不審なスルトであった。
「お待たせ致しました、
私はギルドの組合長で
オルネアと申します」
「えッ!?ギルドマスター!?」
「アリステル殿は初めてでしたな?
ギルドでも噂は聞き及んでいたよ。
何でもそれは優しい冒険者がいて
受付嬢にも評判の様だと」
「えうー!?(照」
『ようわかっておるな若造。もっとあるじ殿の良いところを聞かせるが良い♪』
何だかアディはタルトのおかわりを食べながらご機嫌みたいだけどこっちは褒められて恥ずかしくなってきたよ。
「ハハハ(汗)してアリステル殿。
其方の綺麗なお嬢さんと
後ろの巨狼をご紹介頂けませんかな?」
『儂か?儂の名はティアマトである』
『こっちは黒の奴じゃ』
「!!」
「ティアマット様と言えば伝承の神竜とされておられる?」
『どうじゃかな?竜と言えばそうじゃ?』
虹色の瞳は試すようにこちらを見つめている
オルネアは時折見つめられるこのプレッシャーに嫌な汗が止まらなかった。
虹色の相貌と言えば疑いようすらない
これはギルドマスターの範疇ではないな…
「こっちの黒のと呼ばれたのはブラックウォールウルフの特殊個体だと思うんですが、契約して今は黒曜と名付けました」
「待ってくれアリステル殿?ブラックウォールウルフと契約を!?」
「な、成り行きで…」
「しかも特殊個体」
待ってくれ。この災害級クラスの化け物を使役だって!?彼の職業は確か召喚師だった筈だが…テイマーだったのか?
『ふむ特殊と言うよりも?黒の、
お主…希少種のブラックフェンリルであろ?』
「フェンリル!!」
伝承の狼種のフェンリルときたか!
いよいよ持って頭を抱える羽目になったオルネア。
彼らのご機嫌一つで国は滅ぶ。
今はオルネアの言葉一つに命運が委ねられているのだ。
あー無理。明日から有給だな
取れる訳もない休暇に
思いを馳せるオルネア。
(ヴォウ!)
フェンリルは肯定の様に鳴いた。
テイマーでは無いようだが確かにカード情報には【従僕ブラックフェンリル黒曜】
とある。
しかもその上には
【従神%#$$€€ふじこJP】
【従神2 @@¥&¥!!】
っphj(「¥66??っgh com
nnnnu))@4
「従神て(汗)」
初めて見るぞこんな表示
神を従える!?
その後が文字化けしてるぞコレ!
俺は今伝説の瞬間を
目撃しているのかも知れん。
テーブルの水を一気に煽るオルネア。
「待て!従神2!!何故ここにもう一つ…?」
『彼奴め!ぐぬぬぬ』
『まあ良い…コレは儂のことじゃ』
虹色の相貌がゆらめく
ジー
サッ
みんな目を逸らす。
触れてはいけない、アレは本気の目だ。
「と、ところでアリステル殿、
そちらのティアマット様方とはどの様な経緯で?」
「えーっと、魔の森で遺跡に迷い込んだんですが、そこで色々あって…その〜何と言うか、ティアマトと婚約?しました」
『儂が嫁じゃ!よしなにするが良いぞ』
白く美しい美貌の少女が薄い胸を張って
妖艶に微笑んでいる。
「!!?」
オルネア、バーンズ、カーネリアスは
絶句した。
『あるじ殿よ〜そうじゃ結婚したのじゃから
夫婦。と言えばぁ?やる事は一つよのぅ』
ハアハア
目がハートの猛獣が爆誕しようとしていた。
カサカサ!ババッ
ヒッ
スルトは逃げ出した。
アディからは逃げられない。
部屋は硬く閉ざされている。
「してティアマット様」
『む?何じゃ若造…』
妄想から引き戻されて不機嫌なアディに
ジロリと睨まれるオルネア
「こ、この街へはどの様なご用件で?」
「アディと黒曜の登録ってどうしたら良いのかなって」
スルトがオルネアに助け船を出す
「なるほど受付嬢が気にいる訳だ…」
小声でつぶやいたオルネアを
チラリとみたアディ。
「?」
「何でもないよアリステル殿」
「登録の件でしたな」
この大陸では冒険者がモンスターをテイム又は契約した場合、いずれかのギルドへ登録する必要がある。
公になる訳ではないが要は一種の安全策なのだろう。
アディは神とは言え幻獣神だし
黒曜はフェンリルって言うモンスター?だし
普通に登録?
絶対面倒の予感しかない…
つまり途方に暮れたスルト
「そうですなコレらを伏せた上での登録は
可能でしょう。」
「ほんとですか!」
「ただ…立場上といいますか上には報告せんといけませんので…」
「上に…ですか…」
落胆したスルトを見つめるアディ
『なにがいかんのじゃ?』
「人間社会と言うのは面倒でして…
色々と…まあ貴族連中は十中八九
絡んで来るでしょうなあ…」
リム王国の貴族連中も多分に漏れず悪辣な
者も多い。
表立って悪事を働かないまでも賄賂は横行しているし、法ギリギリの嫌がらせも多い。
ギルドだって中立な国家間組織ではあるが、関係なしにちょっかいかけてくる輩だってしょっちゅうだ。
多分中央が腐っているのだろうが、
干渉地帯という事で安泰なのが良くも悪くも
影響しているのだろう。
西には魔族支配地と霊峰オロム・魔の森奥深くを恐れてそれ以上攻めては来ない状態が100年近く続いているし
隣接国も狭いリム王国まで攻める余裕も意味もないので比較的平和な国なのだ。
悪政も食うに困る程ではないので民衆も諦めているのが実情なのだ。
つまり小心者の小悪党が沢山いる訳だ。
イライラしだすアディからゆらゆらと何か漏れてきた
『いつの時代も貴族王族と権利者と言うものはうっとおしいの!何じゃ?儂らのらぶらぶらいふに冷や水かける様な無粋な連中など儂が消し炭にしてくれるわ!』
建物がガタガタと揺れてるよ!
「らぶらぶらいふって(汗)そう言う訳にも行かないんだって!頼むよ〜」
焦るスルト
瘴気に包まれる一室、気絶寸前の騎士団。
貰ったお菓子を満足そうに食べながらブンブン尻尾を振っている大きい黒い犬。
もう飼犬だよ…黒曜、それ気に入ったの?
この後の面倒ごとの予感に頭を抱える
スルトであった。




