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国王陛下の側近
国王陛下が騎士団長の家を尋ねられ、件の娘を見初められた。
十五年前の因縁の娘を。
唐突な休戦から十五年が経つが、未だあちらからの接触はない。
もう既に奴は他界してしまったのではという者もいるが、不死者が死ぬというのはどうしたことか。
我が軍は着々と戦への準備を整えてはいるが、人類が奴らに勝てる見込みは非常に薄い。
あの小娘を国王陛下の妃として迎えるのは、娘を大切に育てよという奴の言葉への最大の報い方ではないのか。
この国で一番位の高い女性になるということなのだから、これ以上のもてなしはないと思われる。
国王陛下のいつもの我儘には辟易したが、ひょっとしたら一番いい方法なのかもしれない。
どうせ誰の言うことも聞かぬお人だ。
あの娘を妃に。
ついに人間でないものが王家の血に加わるわけか。
もうどうにでもなれ。
取りあえず騎士団長の養女として迎えよう。
あの男は実直で王の外戚になったとしても権力を持つことはないだろう。
それだけが不幸中の幸いだ。