3/11
兄
冬の朝起きたら妹が出来ていた。
母は陛下からの大切な預かりものなので妹と思って可愛がってあげるのよと言った。
赤ん坊に興味などなかったので近づかないことにした。
少し大きくなり、人間らしくなると今度は人形じみてきて何やら不気味に思われた。
陛下からの大切な預かりものという母の言葉が、落としたら割れてしまう陶器のように思われ、できる限り遠ざけたかった。
弟はそうではないらしくいつも妹と一緒にいた。
顔は似ていないのに、黒髪や黒い瞳同じような表情、いつもどこでも隣に並んでいることから男女の双子の人形のように見えた。
母からは妹と思ってと言われたが、俺はあの美しい生き物を一度も妹などと思えなかった。
今も思っていない。
ただの貴重品、陛下からの賜りもの、そう人間ではなかった。
そしてそれは間違いなどではなかったのだ。