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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第一章 そして僕らは家族になっていた

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●第三話 恋が咲いた日

「鈴崎さん、僕と……つ、付き合ってください!」


 一本桜の下で、僕は生まれて初めて本気になっていた。

 結果がわからないときほど怖いものはない。

 しかも自分が傷つくだろうとわかっているならなおさら。


 それでも――

 たとえ、どのような結末になろうとも、今日の光景を生涯忘れることはないだろう。


 僕は自分を変えたかった。

これまでの自分を変えるには、何か新しいことをやらなくちゃいけない。それは恐れずに挑戦すること。傷ついたっていいのだ。負けたっていい。

 それがこのどうしようもない僕の心を、止めてさえくれるのなら。


 目の前に僕の心が囚われている彼女、鈴崎葵がいる。

 玉砕覚悟の破れかぶれ、お前には絶対無理と言われての反発だった。いや、たぶん僕は人生初の恋で舞い上がってどうかしていたに違いない。


 告白した瞬間、一斉に桜が風に舞った。

 心臓が音を立て痛くなるほど鼓動し、胃が冷えて締まる。耳の奥から血流のゴーッと言う音まで聞こえ、今、頭にヤバイほど血が上っているのが自分でもわかった。

 そんな僕に対して鈴崎は――消え入りそうな声で聞いた。


「えっ! ……あ、あの、私なんかでいいんですか?」

「いいよ! というか鈴崎さんじゃなきゃダメなんだ!」


 僕ははっきりと言う。

 他の誰でもない、目の前の女の子だから。

 腰まで流したロングストレートの清楚な髪。さりげなく小さな花の髪飾りでおしゃれも欠かさず、かといって派手でもない。それなのに行動のすべてが映える振る真夜いになる女の子。何よりも人を馬鹿にしたりしないその純真でひたむきな性格。僕にとっては彼女が理想にして奇跡だった。


「……」


 しかし――鈴崎は下唇を噛むと、うつむき黙り込んでしまった。

 ああ、やってしまった。

 迷惑だったよね……。

 わかってはいたんだ。僕みたいな何の取り柄も無い陰キャがいきなり唐突に告白なんて、身の程知らずもいいところ。コミュ力の低いヤツはこういうときに|やらかす(、、、、)んだよな! ちょっと優しくされただけで脈があると錯覚してしまうのだ。

 できることなら3秒前の僕を思い切り右ストレートで地の果てまでぶっ飛ばしてやりたい。除菌スプレーで全身くまなくシュッシュッしてやりたい。どうして上手くいくとか、断られても大したことないやと思ってしまったのか?


「わ、わかりました。冬月くん、ふつつか者ですが、今後とも末永くよろしくお願いします」


 ほらな? フラれた。

 しかも僕を気遣って「今後も末永くお友達でいましょうね」的なニュアンスだ。でも、一度告白してしまえば、以前とは同じでいられるはずがない。お互いに意識して、ふつつか者とは名ばかりの――あれ?


「え? ちょ、ちょっとストップ、鈴崎さん、それってひょっとしてもしかして僕と付き合ってもいいという返事なの?」

「ええ……そのつもりなのですけど……ごめんなさい、私、今、頭が真っ白で、こういうときに答えるべき言葉が全然思いつかないの。間違ってますよね?」

「いやっ! そんなの、伝わればいいんだよ。全然正解だから。完璧だし、凄く……嬉しいよ!」


 僕は両手を振り回し、激しいオーバーリアクションになっていた。何やってるんだ、ヒップホップが好きな第九の指揮者ですか。


「あ、ありがとう。安心した……。冬月くんと一緒にいると、世界が良い方に変わる予感がするんです。でも、完璧だなんて、ちょっとあなたは私のことを褒めすぎだと思います」


 何を言ってるんだ、この子は。君は褒められて当然だから。

 学力もクラスでナンバーワン、運動は今ひとつのようだけれど、ファッション雑誌で掲載されたりしているというのに、それで褒めないヤツがいるだろうか。


「それで……冬月くん、こんな初歩的でつまらないことを聞いて本当に申し訳ないのですけど……お付き合いって次に何をすればいいのでしょう?」

「それは……ええと……ええっと……?」


 僕は考え込む。鈴崎も困り顔で考え込む。

 そう、僕らは恋人同士がどう付き合うかなんて、自分達にはあまりにも縁遠い話だと思っていたから、何も知らないのだった。


 桜色の季節――。僕らは『恋人同士』という未知の領域に足を踏み入れていた。


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