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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第三章 紫陽花の季節

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●第四話 行動 

 学校の校庭にジャージ姿の2年生がずらりと集まっている。

 今日は林間学校の当日である。待っている生徒達は手持ち無沙汰な様子でお喋りしたり、その場に座り込んで退屈そうにしていた。

 集合時間は午前七時の早朝とあって、いつもの学校とは空気が違う。それは眠気なのか、高揚感なのか、新鮮味なのか――僕にはよくわからなかった。

 大型バスがすでに到着しており、途中まではこれで移動だ。


「やべーよ、冬月。オレ、目的地にたどり着ける気がしないぞ」


 明智が言う。


「安心しろ、明智。僕もあんまり自信がない。ま、リタイヤしたヤツは先生が車で拾ってくれるんじゃないか?」

「おお、その手があったか! オレ、桃山先生の車に乗りたいなぁ」

「悪いことは言わない。アレはやめとけ。ペーパードライバーだからどうしよう~って言ってたぞ」

「それがいいんじゃないか。わかってないな、冬月」

「いや、お前がわからん」


 事故っても知らんぞ。


「はーい、それじゃみんな、バスに荷物を積み込んでねー。そろそろ出発ですよー」


 桃山先生が言い、生徒達はついに来たかと、半数はあきらめ顔で乗り込む。もう半数は楽しそうにお喋りしているが、そういうのは体力的に余裕のあるヤツらだ。


「悠真、ポッキー食べるか?」


 前の席にいる真夜が差し入れをくれた。


「もらおう。サンキュ」

「今日は楽しみだな」

「楽しみ? 何が」

「何がって遠足だろ? 大自然の山だぞ? おいしい空気を吸って運動もできる。ああ、クマとかいないかな」

「いないいない」


 第一、そんなものが出た日には、林間学校は即中止だろ。命に関わるぞ。


 葵と話がしたいが、彼女は別の席に座っている。ま、それで良かったのかもしれない。学校では僕らが付き合っていることは内緒だから、自然に会話するのも難しいだろうし。


「到着~! はーい、みんな荷物を持って降りましょう」


 バスから降りてアスファルトを踏みしめると、少し地球が回って動いているような感覚に陥った。酔い止めを飲んできたが、僕は乗り物は苦手なのだ。


「悠真、平気か?」

「ああ、大丈夫だ」

「ならいいけどな」


 真夜が心配してくれたが、それほどひどくはないので少し時間が経てば治るだろう。

 周りを見ると、離れたところで葵も車酔いのようでヒザに両手を当てたまま下を見ている。


「大丈夫? 鈴崎さん」

「ええ、少し酔っただけだから」


 声をかけようかと思ったが、葵と親しい女子が側にいて、話しかけづらい。


「はーい、ここから目的地までは残り約十キロだそうですー。みんな、はぐれないように付いてきてね。何かあれば携帯で先生を呼ぶように。危ないですから、車道にはみ出ないように。車に注意してね」

「「「はーい」」」


 返事だけまともにして、みんなのんびりと歩き出す。途中で僕のペースが落ちたときに、追い越していく他の生徒にとって邪魔だろうから、僕は最初から後方で出発することにした。


「おい、悠真、何してるんだ、行くぞ!」

「先に行ってくれ、真夜」

「ああ? 遅れても知らないぞ。じゃ、先に行ってるからな!」

「ああ」

「悠真、何してるんだ、女子が誘ってくれたのに行かないとかありえないだろ!」


 明智が茶化して真夜の声真似をしながらやってきた。


「キモいからやめろ、明智。それに、あいつのペースに巻き込まれたら――死ぬぞ?」

「マジか」

「マジだ。中学からずっと運動部だしな。あいつ毎朝ランニングしてるんだぞ」

「なっ、大葉さんって見た目と違ってわりと努力家なんだな……朝にランニングなんてちょっとオレは真似できねーわ」

「僕も中一のときに付き合わされたけど、二週間でマジ泣きして勘弁してもらったからな」

「それは格好悪いな。だが、二週間も頑張ったのが偉いぞ」

「ああ。さて、そろそろ僕らも行くか」


 行きたくは無いのだが、置いてきぼりも嫌なので、しぶしぶながら行列に付いていく。葵を探してみたが、もう先に出発したようで、彼女の姿はない。


「ところで、冬月、お前、クラスに新しい友達ってできた?」


 少し歩いたところで、明智が聞いてくる。


「いいや」


 恋人はできたんだけどな。


「よしっ! オレとボッチ同盟を結ぼうぜ」

「嫌な同盟だな。それに、同盟が組める時点でボッチと言えないんじゃないのか?」


「いいんだ。勘違いするなよ、冬月、オレらは自分から孤高を選んでいるんだ。友達は量じゃないぞ、質だ。信念もなくノリで群れてキャッキャしてる愚かなヤツらなんてこっちから願い下げだ。ところで、お前、昼休憩に教室見に行ってもどこにもいないし。どこで食ってるんだよ?」


「あー、まあ、どこかだな」


 文芸部の部室で葵と二人きりなんて情報はトップシークレットだ。


「何だよ、それ。ひょっとしてオレを避けてるのか?」

「いや、そうじゃないぞ」

「ならいいが、あんまり変なところで飯食ったりすんなよ」


 明智が心配してくれた。


「ああ。それは大丈夫だ」

「そうか。そういえば、来馬が大葉さんに告白するって息巻いてたぞ」

「ふーん?」


 ま、昔から真夜はああ見えてわりとモテてるんだよな……くそっ。


「え? それだけ? お前らって付き合ってるんじゃないの?」

「明智、何回説明させるんだ。真夜と僕はタダの幼なじみだって言ってるじゃないか」

「いや、でも、普通の幼なじみっていつもいつも話したりしないと思うぞ」

「まあ、家が近所だからな」

「そうか。本当に兄妹みたいな関係なんだな」

「まあ、そうかもな。僕も最近まで――いや、妹なんていなかったからわかんないけど」

「ま、まさか、お風呂を一緒に入ってるなんてことは……」

「バカ言わないでくれ。いくら幼なじみでも、高校生同士がそんなことするわけないだろ。一緒に入ってないから」


 小学校低学年の頃までは真夜と一緒にお風呂に入っていたが、前の母さんが離婚してからは一緒に入ってないな。なんでだろ? まあ、それは別にいいんだけど。

 最初のうちはのんきにお喋りしていた僕と明智だが、次第に二人とも歩くのがつらくなり口数が減ってきた。

 さすがに十キロの道のりは長すぎる。しかも、山道とあって傾斜がキツい。周りは木ばかりになり、ずっと代わり映えしない景色がずっと続いている。


「うわ、見ろよ、あれを」


 そんな中で明智が道路に何かを発見したようだが。


「むむ」

「はは……嘘だろ、冬月、頼むから嘘だと言ってくれよ」

「そう言えたらいいんだけどな」


『七塚山山頂まであと3キロ』という看板を発見し、僕と明智は両ヒザに手を突いて、絶望した。まだ残り3キロもあるのに、僕らの足は限界を超えている。あちこちが痛いし、足が棒のようで歩きにくい。


「もー嫌だ。もー歩かないぞ」


 明智がその場に座り込んでしまった。


「おい、明智、一度座り込むと、かえってつらくなると思うぞ」

「いいよ。もうオレはここで野垂れ死にするんだ」


 大袈裟な。どうせ先生か誰かがあとで迎えにきてくれるだろう。


「じゃ、明智、僕は先に行くからな。みんなを心配させたくないし、先生を見つけたら報告しておいてやる」

「ああ、頼んだ。ま、頑張れ」

「おう」


 坂の山道を地面だけ見ながら歩く。顔を上げて道のりを見てしまうと萎えるからな。

 体中に汗が滲み、息が上がってきた。あと何キロだ? 本当に僕は今、何をやってるんだろ?


「あれ?」


 心の底からウンザリしてきたところで、目の前に見覚えのあるロングヘアの女子が見えた。葵だ。だが、彼女は脇の岩に足を崩して変な感じで座り込んでいる。靴も片方は脱いでいた。


「葵さん、どうかしたの?」


 僕は異変を察して声をかける。

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