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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第一章 そして僕らは家族になっていた

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●第二話 僕が恋に落ちた少女(1)

 僕らが家族になる二週間前――。


 気がつけば、僕は鈴崎葵の姿を目で追っていた。彼女がちょっと頭の角度を変えるたびに黒髪がふわりと揺れ、その艶が綺麗に変化する。


 いつからだろう? こんなにも鈴崎がきになるようになったのは。


 今も真面目に黒板をノートに取り、真剣な眼差しをしている。僕はそんな彼女の瞳が好きだ。

 そこには純真さだけがあり、一点の曇りも無い。打算や欲望とは無縁。もはや人間すら超越しているのではと思わせる何かがあった。


 賭けてもいい。世界のどんな美術品よりも、鈴崎は美しい。

 その顔はため息が出るほど整っていて、長いまつげからのぞく瞳は、人を射貫くような力がある。普段は目立たないが、バランスの取れたプロポーションで足もすらりとして完璧なのだ。


「ぬばたまの夜渡る月のさやけくは。これは、もし夜の月がもっと輝いていれば、あなたの姿がよく見えていたでしょうに、といった意味の和歌です。では、時間が来たので今日はここまで」


 授業が終わり、教室が解き放たれたように騒がしくなった。


「ねえねえ、葵、昨日のドラマ、見た?」

「ドラマ? ううん……私、テレビは見ないから」

「ええ? ホント、葵って変わってるよねぇ。タレントや歌手を知らないとかさあ、そんなの世の中でやっていけないよ?」

「そ、そうかな。でも私、芸能界ってどこか縁遠いし、興味も湧かないっていうか……」

「もったいないなあ。その顔で、まぁ、ちょっとトークが絶望的だけど、葵は素質はいいもの持ってるんだしさ、モデルとかも狙えるよ」

「そ、そんな、私なんて全然だよ」


 鈴崎が慌てたように手を小さく振って否定する。


「そんなことないって。ナナ・ティーン『今日の街角美少女』に選ばれた鈴崎葵ならいけるっしょ」

「あ、あれは、野良猫を可愛がってたら、カメラマンの人が写真撮っていいですかって言われて、私それは猫だと思って――」


 鈴崎は雑誌に写真が載ってしまったようで、昨日はクラスの何人かの女子にもてはやされていた。本人はずっと困り顔で、何とかしてあげたかったのだが。女子同士の会話に入れるはずもなく、僕にできることは何もなかった。


「はいはい、そういう清純派アイドルっぽい言い訳はいいから。あ、昨日、駅前のカラオケでさぁ~」


 とりとめもない友人達の会話でも、鈴崎葵は控えめで可愛い。見ているだけで癒やされる。


「よう、冬月、お前何見てるんだ?」


 急に友達の斉藤に話しかけられ、僕は焦った。


「な、何も。黒板を見てただけだよ」

「そうか? あのおっぱいの大きい女子を見てただろう。けしからんヤツだ」


 断じて違う。僕が見てたのはその隣だ。しかも、胸の大きさなんて本当にどうでもいい。女子をそういう分類で見るのは失礼だ。


「見てない」

「ホントか? まぁいいや。しっかし、なんで学年が変わるとクラス替えなんてするんだろうな」

「さぁ?」


 僕もそれは理不尽な仕打ちだと思う。せっかく数少ない話し相手ができたとしてもリセットされ、友達作りが苦手な人間にとっては大変な負担だ。名前も覚えなくちゃいけない。まあ、鈴崎とまた一緒のクラスになれたからラッキーだったけれど。


「オレ、冬月しか知り合いいねーぞ」

「安心しろ斉藤、僕もだ」

「嘘つけ、お前は大葉さんがいるだろうが」

「ああ、真夜は幼なじみの腐れ縁だからな」


 幼なじみでも女子は例外だ。


「フン、オレも幼なじみの女の子がいればなぁ。あ、そうそう、女子と言えばこれ、今週のファッション雑誌なんだけどさ」


 そう言って斉藤が僕の机に雑誌を広げてみせた。


「あのな、僕がファッションのフの字にも無縁なのはお前も知ってるだろ。というか、お前もそんなのに興味あったのか?」


 対戦ゲーム仲間の斉藤は見るからに典型的な眼鏡オタクだ。休みの私服はジャージか安物のよれよれのシャツ。そんなところに掛ける金があったら即ゲームを買うぞと断言しそうな、そんなヤツ。


「いや、ないけど、そうじゃないって。これ、このページ。見ろよ」


 僕の机に斉藤がその雑誌を広げてみせると、『今日の街角美少女』というページで、女の子が猫と向かい合って少し屈んだ姿勢で写っている。彼女はカメラ目線でもないので適当に撮ってあとから許可をもらったような、そんな微妙な雰囲気が漂っていた。


 僕は目が釘付けになったが、写っているのは――他ならぬ鈴崎葵だった。


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