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義理の兄妹になっても僕らは両想いなので、学園でも家でも隠れて付き合うことにしました。  作者: まさな
■第三章 紫陽花の季節

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●第三話 ロックオン

 一週間後、いよいよ生徒会総選挙投票日。


 僕はクラスで使用されているSNSグループで控えめに対立候補をプッシュしておいたが、どれほどの効果があったかは疑問だ。とはいえ、アンチ新見の意見が多かったのでそれほど心配はしていない。


 書いた用紙をアルミの投票箱に入れ、結果を待った。

 講堂に集まっての開票発表。

 去年の生徒会総選挙がどうだったか記憶にさえ残っていないが、今回は新見の過激政策が目を惹いたのか、生徒達もざわついており、緊張感がここまで伝わってくる。


「ま、恋愛禁止と言ったって、学外まで生徒会が見張れるわけないじゃん」


 そんな談笑が聞こえて来たが、確かにその通りだろう。

 問題は、実質葵一人でしか活動していない文芸部が潰され、僕らの昼の聖地が奪われるか否かにある。


「では、集計が終わりましたので、投票数と生徒会長を発表します。投票数154票、2位に15票差で新見果穗さんが生徒会長に当選しました」

「マジか!」

「ええーなんでー!?」

「おい、どうなってるんだ!」


 生徒達もこの結果は意外だったらしく、口々に驚愕の声があがる。僕も青天の霹靂だ。だって、クラスではアンチ新見のほうが多かったはず。


「ククク、オレの工作が実を結んだな」

「明智? お前……まさか投票用紙をいじったりしたのか?」


「なっ、愚かな。オレがそんな滅茶苦茶なことをするわけがないだろう。そうじゃない。買収のほうだよ。ネットで拾ったちょっとえっちいアイドル写真を男子に配ったからな。食いつきは良かったぞぉ」


「それか……卑劣な」


「フン、何とでも言え。ネットを探しまくって、好みのアイドルの写真を集めるのがどれだけ大変だったか。この一週間はほとんど寝てないくらいだ。くぁ……」


 そのエネルギーをリア充に対する復讐よりも勉学に向けたほうがいいだろうに、まぁ、もう決まったものは仕方ない。

 別の手を考えるか。


「と言ってもなぁ」

「そうですね……」


 楽しい昼食の時間を終えたものの、僕と葵には良いアイディアが浮かばない。


「一応、有名な文豪作品の紹介文をまとめた文集を作ってみたんですが」


 葵がプリントを閉じた文集を出してきた。


「ああ、いいね」


 文芸部として真面目に活動していれば、部費は削られないのだ。

 と、部室にノックがあった。


「は、はい」

「生徒会会長の新見です。失礼します」


 二人の生徒会メンバーを引き連れて部室に入ってきたのは新会長の新見だ。

 いよいよ、ここに来たか……。

 僕はゴクリと唾を飲み込み、しかし、部員でもないので成り行きを見守ることしかできない。


「ふむ、なるほど、ここは昼休憩も部活動をやっているようですね」


 新見が部室の中をゆっくりと見回しながら言う。ちょうど文集を広げていたところで、タイミングも良かった。これが仲良くお弁当だと確実に悪印象だっただろう。


「は、はい。頑張っています」

「ですが、二人だけですか。登録では五人いたはずですが」

「はぁ」


 残りの四人は一度も見たことがない。葵も言っていたが登録だけの幽霊部員だろう。


「それに」


 窓のサッシをつーっと指でなぞる新見。怖っ。


「あら、ここはちゃんと掃除をしてるみたいですね」

「も、もちろんです」


 葵、ナイス。さすがだ。


「ですが、記録を見る限り、文芸部には活動実績がほとんどありません。文化祭の文集だけでは、廃部は免れないと思います」

「そ、そんな」


「ちょっと待ってください、会長。記録だけって、葵――オホン、鈴崎さんは毎日きちんと部活動をしているというのに、いきなり廃部なんてあんまりじゃないですか。横暴だ」


「これは正当なる生徒会総選挙で決まった全生徒の総意です。ご理解ください」


「くっ」


 ここで諦めるしかないのか?

 乱暴ではあるが、生徒会会長の言い分には理がある。

 文芸部でもない僕が、部の存続を訴えたところで……いや、だけど、本当に葵は放課後に部活動をちゃんと毎日やってきたのだ。たとえ少数であろうと、その真摯な気持ちは他の活発な部にだって負けていないはずだ。


「会長」


「申し訳ありませんが、私も忙しいのです。それではこれで」


「待った! 部活動の活動記録、実績があれば、考え直していただけますね?」


「それは、ええ、皆が納得できる活動の実績さえあれば、こちらとしても廃部に追い込む理由はありません。ただ、部員数やこれまでの活動実績からしても、映写部、ゲーム部、文芸部、この三つは文化祭での出展も小規模なものばかりで無理ですね。出展に集まった人数もそれぞれ十数人だけで反響も無かったと聞いています」


「じゃあ、今年の文化祭でしっかりとした出展をやれば、そこで百人くらい閲覧者が出てくればいいですよね?」


 希望が見えてきた。十月の文化祭。そこに葵と一緒に文芸部の大きな活動を何か考えれば良い。まだ六月、時間はいくらだってある。


「いえ、公約にもあるとおり、部費の予算変更は来週までに決定します」


「ええ?」


 そんな。


「では、まだこれから他の部も視察予定なので、失礼します。抗議や嘆願については、文書で生徒会の目安箱にいれておいてください。では」


 生徒会長が去って行く。

 部室に残された僕と葵。

 たった一週間で僕らに何ができるのだろう?


 いいや、だけど、僕は諦めたりしない。

 葵とうなずき合い、僕らは作戦を練った。

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