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一章・一話 この二人が赤い糸で結ばれていたなんて、誰が思ったでしょうか

「おい、とっとと行け。何で姫様はお前なんかを。

 姫様。年が同じの彼に、興味でも引かれましたかな?」



 主人に背中を蹴飛ばされ地に手をつく形となっても、

 アルスは今更何の屈辱も感じない。


 そんなことよりも今だこの状況が理解出来ていない。




「貴様、言葉を慎め。」




 この国の第一王女、カヤ・ハンハリーを侮辱する男の言葉に、側近のエルゼは怒りを覚える。


 ……が、本人であるカヤの表情は凛としたままだった。




「エルゼ。こんな人相手にしないでいいの。」




 とっさに、アルスはカヤの方へと顔をあげる。



「……立って。」




 カヤの不機嫌そうな、いや少しがっかりしたような顔に、アルスはほぼ無意識に立ち上がった。




「あの、どうして……。僕を買ってくれたんですか。」





 カヤ姫と言えば、噂が奴隷の僕の耳にも入る人だ。


 最悪な国王、劣悪な王子とは違い

 心優しく美しい姫君だと。


 商人から聞いては、それなら奴隷制度の廃止にでも尽力しないものかと思ったことがある。





「買った、ということになるのね。

 ……大丈夫。私はあなたの自由を奪ったしない。

 どこへでも行って、好きに生きて。

 ただ1つだけ、どうか自分の信念を曲げないでいて下さい。」




「しん、ねん……。」




 何かを思うアルスの顔を見たカヤは、用は済んだと言わんばかりに歩き出した。


 こんな汚い路地裏を歩く彼女の背中は、なんとも不釣り合いだ。


 遠くなる彼女の姿が見えなくなる寸前のところで、ようやくアルスの脳は動く。




「ありがとうございます……!」




 この声は多分きっと届いていないだろう。

 そして姫様が振り返るはずもないけど、僕は気が済むまで頭を下げた。




 何故助けてくれたのか。

 一体どんな理由があったのか。

 分かることは何もない。



 でも、ただのお姫様の気まぐれだったとしても僕はこのチャンスを絶対に物にしてやる。


 僕は必ず五つのダンジョンをクリアして、王権を手にいれるー。







 ◆◆◆


 10ヶ月後ー。



 アルスは冒険者として、日々ノーマルダンジョンで鍛練に励んでいた。



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