綺麗事
グロい表現あります。
混沌とした夢に取り込まれ、祐樹はうなされていた。
『現代のジャックザリッパーだよ』
渋谷が言うのが聞こえた。
内臓を引き摺り出され息絶えた全裸の女が血塗れの口から血を流し、こちらを見ていた。
久遠の声も聞こえる。
『彼は肉体の主導権を奪いたいのです
憎い女性を殺す為に…………………………………』
もう一人の祐樹が血塗れのナイフを舐めながら、こちらを見ている。
『お前を抹消してやる!! 』
と書きなぐられたノートが堕ちて行く。
祐樹はそれらの夢を振り切る様に眼を覚まし、飛び起きた。
起き上がった正面の壁に鏡が設置してある。
祐樹は自分を見た。
『あの雪原に陥る前に、ボクは見た
血塗れの部屋と切り裂かれた女性…………………………
その中に、ボクは気が付いたら立っていた
この手を血に染めて……………………』
祐樹は自分の手を見詰めた。
『現代のジャックザリッパーはボクだった…………………………』
祐樹は自分の膝に伏したまま動くことができなかった。
祐樹はハッとして頭を上げた。
『こんな事してはいられない!
こうしてる間も彼は…………………………………』
ベッドから降りてドアを開けた。
長い廊下の壁に祐樹の記憶を封印した沢山のドアが並んでいる。
祐樹は外の世界に戻った時の記憶を頼りに廊下を彷徨う内、開かれたドアを見付けた。
暗闇の部屋を、意を決して一歩踏み出した。
『堕ちる………………!! 』
しかし祐樹は、堕ちるどころか一歩部屋に踏み入っただけだった。
「今度はお前が封印される番だ」
声のした方に振り向くと鏡の向こう側に、もう一人の祐樹が立て膝を抱えて、こちらに鋭い視線をむけていた。
「オレはお前の理性って奴に、ずっとがんじがらめにされて来たんだ
今度はお前がそこでもがく番だ」
『彼がもう一人のボク……………………………』
「キミは………………………………
キミは本当に人を殺したの? 」
もう一人の祐樹は静かに言った。
「封印した記憶のドアを開けてみろよ
見る勇気があればだけど……………………」
もう一人の祐樹は立て膝に顎を載せたが視線は祐樹に固定されたままだった。
もう一人の祐樹は言った。
「お前にとっては忌まわしい記憶かも知れないが、オレにとっては数少ない存在の証だ」
祐樹は眼を伏せて言った。
「ボクがキミを産み出してしまった以上、責任はボクにある
一度ボクを返して欲しい
自首して罪を償いたい」
もう一人の祐樹は一層視線を鋭くして言った。
「誰かに救いを求めなければ居られないほど弱い癖に綺麗事ばかり掲げるなよ
憎しみがオレを生んだと思っているようだが、お前はそう認められる自分に満足したいだけさ
いつも無理な理想を自分に押し付けて綺麗でいたいだけなんだ
憎しみじゃ無い、お前の綺麗事を守る為にオレは生み出されたんだ」
祐樹はもう一人の祐樹を凝視していた。
もう一人の祐樹は無表情で続けた。
「女を殺したがっているのがオレだけだと思っているのか?
お前があいつに欲情するのは、あいつが死を司る死神だからだよ
お前はあいつの死の匂いに欲情してたんだ
オレが女を殺して一番満たされてるのは、オレじゃ無い
お前だよ」
祐樹は拳を硬く握った。
「ボクはそんな事、信じないっ!! 」
「認めたく無いなら、それでもいいさ
お客が来たから行くよ」
もう一人の祐樹は立ち上がった。
「もう一度返してやってもいい
お前の女神の、肉のオブジェを見せる為に」
『樹里亜? 』
祐樹は眼を見開いた。
もう一人の祐樹は笑った。
「そして今度こそお前は再起不能になる」
祐樹は鏡の向こう側から去って行こうとする、もう一人の祐樹に掴みかかろうと鏡を叩いた。
「やめろっ!!
樹里亜に手を出すなっ!! 」
もう一人の祐樹は構わず言った。
「一番穢い奴が手を汚さないって言うのは本当だな」
もう一人の祐樹は鏡の向こう側へ姿を消した。
祐樹は力の限り叫んだ。
「やめろっ!!
樹里亜っ!! 」
ここまで読んで戴き有り難うございます❗
私の処女作「ラプンツェルの接吻」と「ラプンツェルの接吻 聖流編」を読んで下さってる方がおられるようで、嬉しいです。
この二作は、思い入れがとても深くて、特に無印の方は、ラストでガチで泣きながら書いた作品です。
もう、キャラへの愛が深くて、逢いたくなって今でも読むんですよ。
私の渾身の作品です。
まだ読んで無くて、少しでも興味を惹かれた方おられましたら読んで戴けると倖せです。
初じめての作品なので、ちょっと文章が硬いですが……………………。
あ、長いので覚悟が要ります。
それではまた明日。




