殺した可能性
楽しんで読んで戴けたら倖いです。
祐樹は眼を覚ました。
ベッドの横の机に置いてある目覚まし時計に手を伸ばし見ると六時半だった。
『ゲッ、寝坊した!
早く朝ご飯の支度しなきゃ! 』
リビングに行くと父の利朗がソファーに座り新聞を読んでいた。
「父さん、おはよう
ごめん、寝坊しちゃった
直ぐご飯の支度するから」
祐樹はキッチンで米をとぎ始めた。
『変な夢だった
妙にリアルで………………
あの匂い、まだ鼻の奥に残ってる』
「祐樹
身体の具合はもういいのか? 」
利朗は立ち上がって祐樹を見ていた。
「身体? 」
祐樹は振り返った。
「この一週間、食事の支度どころか、ロクに口さえきかなかったぞ」
「そうだっけ? 」
利朗は心配そうに祐樹を見た。
「再婚に反対ならいいんだぞ
あの人が気に入らないなら………………………」
祐樹は笑って言った。
「そーんなの気にする歳じゃ無いよ
澤田さんだっけ?
いい人じゃない
父さん、ボクを抱えて苦労して来たんだもん
反対なんてする訳無いじゃない
大丈夫
きっと上手くやって行けるよ」
ご飯が炊けると仏飯と水を持って利朗の寝室にある仏壇に供え、手を合わせた。
遺影を見上げた。
『祐樹君と私だけの秘密よ』
祐樹の嫌な記憶が蘇る。
『祐樹君、上手よ
もっと指を動かして、舌もよ』
『忘れたい事が忘れられたら、どんなに楽だろう
毎朝、あの遺影を見る度思い出す』
祐樹の脳裏に鏡の映像が蘇る。
『あれは夢だよ!! 』
祐樹は頭を手で覆った。
祐樹の母親は祐樹が小さい時に病気で他界していた。
後妻の玲子は祐樹に性的な虐待を確かに強いていて、祐樹はそれを忘れる事ができず、未だに苦しんでいた。
祐樹は玲子を憎んでいた。
殺したかも知れない…………………。
可能性が全く無い訳では無い。
玲子がベランダから落下し、目撃した近所の住民が駆け付けた時、祐樹は茶の間の隅で蹲っていた。
そして玲子が堕ちた時の記憶が、すっぽり抜け落ちていたのだ。
『どうして、あんな夢を今になって
見たりしたんだろう…………? 』
学校に行こうと玄関のドアを開けると向かいに住む倉橋佳子がスーツ姿で出て来た。
倉橋家は祐樹が生まれる前から、祐樹の両親と交流が深く、母親が他界した後も何かと祐樹は世話になっていた。
「おはよう、おばさん」
「あら、おはよう
祐樹君」
二人は並んでエレベーターまで歩いた。
「おばさん、仕事してるの? 」
「保険の外交始めたの
山本さんに入りたい人居たら紹介してくれるように言ってくれる? 」
「いいですよ」
立ち止まりエレベーターが来るのを待った。
「そっかあ、おばさん仕事始めちゃったら、もう料理教えて貰えなくなるなー」
祐樹は残念そうに言った。
「あら、祐樹君に教える事なんて何も無いわよ
もう立派な主婦ね
いいお嫁さんになるわよ」
祐樹は眉を吊り上げて抗議した。
「一瞬、ウェディングドレス姿の自分、思い浮かべちゃったでしょ! 」
「ジョークよ、ジョーク」
佳子は笑った。
エレベーターの扉が開き、二人は乗り込んだ。
「本当に祐樹君は偉いよ
男の子なのに小学生の頃から家の事頑張って
山本さんも、こんないい息子さんが居て倖せね」
祐樹は照れて頭を掻いた。
「そう云えば樹里亜は? 」
樹里亜は倉橋家の長女で祐樹の幼馴染みである。
佳子は視線を落として言った。
「あの娘、夕べは友達の処に泊まるからって帰って無いの
最近アルバイトを始めたんだけど、恐ろしい事件が多発してるから心配なのに、家に寄り付かなくて………………」
「ボクから、何か言っておきましょうか? 」
「そうね
祐樹君の言う事ならきいてくれるかも知れないわね」
一階に着いて扉が開き二人はエレベーターを降りた。
「おばさん、仕事頑張って! 」
「有り難う
祐樹君も勉強頑張って! 」
佳子は笑顔で手を振った。
読んで戴き有り難うございます❗
最近、同じく小説書いておられる方と仲良くさせて戴てるんです。
小説投稿してて、こんな素敵なお友達できるなんて思っても見なかった事なので、凄く嬉しいです。
水渕さん、いつも感想有り難うございます❗




