帰るべき罪
残酷なシーンあります。
祐樹はシャツを羽織り窓に凭れ、代わり映えのしない雪に覆われた白い景色を眺めていた。
「何を考えているんです」
黒いシャツとズボン姿で久遠が訊いて来た。
祐樹は久遠を睨んだ。
「キミこそ何を考えているの? 」
久遠は小首を傾げ祐樹を見詰めた。
「ごめん
なんかイライラして…………………
ねえ、はぐらかさないで教えて
ここは何処なの? 」
久遠は言った。
「君が帰る場所を思い出したら、教えてあげましょう」
祐樹は眼を伏せた。
「時々ふと頭を掠めるんだ
もう、思い出さないんじゃないかって」
「僕には今の言葉が、もう思い出さない方がいいんじゃないかと
聞こえましたよ」
祐樹は久遠に視線を戻した。
「それもいいかも知れませんね
人間には知らない方が倖せと云う事もあるでしょうから」
祐樹は鋭い視線を久遠に投げ掛けた。
「それはどう云う意味?
思い出さない方がいいってこと?
キミはボクが何者なのか知っているの? 」
久遠は無表情で言った。
「例えば……………………と云う話です」
久遠から眼を逸らせて祐樹は窓ガラスを指先で触れた。
ちらつく雪を眼で追った。
「ボクは、キミは優しいと思うよ。
こんなボクを許してくれて、受け入れてくれるんだから」
「祐樹、ひとつ憶えておいた方がいい。
世の中には冷酷で無責任な優しさもある。
それと、優しいと言われるのを好まない者もいる」
久遠は踵を返し部屋を出て行った。
祐樹はベッドに横たわり眠っていた。
細胞の様に自分の頭が分裂する夢を見て眼が覚めた。
酷く気分が悪かった。
「久遠? 」
振り返るが、いつも傍で眠っている筈の久遠の姿は無かった。
脱ぎ捨ててあるズボンを穿いて部屋を出た。
廊下に久遠の姿は無い。
祐樹は試しに建ち並ぶドアの一つを開けた。
いとも簡単にドアは開き、暗い部屋に制服が飾ってあるのが眼に入った。
『学校の制服?
久遠て高校生だったんだ』
部屋に入り、制服を近くで見た。
『この制服見憶えがある……………
…………………そうだ!
この制服、ボクが通っている高校の……………………!! 』
そう思った瞬間、祐樹の頭は深い霧が晴れる様に記憶が鮮明になって行った。
余りに急激に記憶が蘇ったので、祐樹は軽い眩暈を起こした。
軽くかぶりを振った。
ふと気配に気付いて入り口を振り返ると久遠が黒の上下姿でドアの柱に腕を組んで凭れ、こちらを見ていた。
「鏡をご覧なさい」
部屋が明るくなった。
照明のせいでは無い。
部屋の奥の畳一畳分もある鏡に映写機の様に映像が映っていた。
ベランダの外に女と小学低学年くらいの少年が居た。
『あれは、うちのベランダ…………………』
女は踏み台に乗って洗濯物を干していた。
その傍で少年は洗濯物を女に渡す手伝いをしている。
『あれはボクだ
そしてあの人は…………………』
久遠は話し始めた。
「君はあの女性に随分酷い事をさせられていましたね
性的虐待……………………
それは毎日続いた
そして君はある夜見てしまった
あの女性と君の父親との情事を……………………
女性は頻りにせがみ、君の父親は彼女にせがまれるまま彼女の快楽の為に奉仕していた
君は子供心に思った
この女性の奴隷の様だと
君の中に新しい感情が芽生えた
憎しみと云う感情です
君は報復に出た」
鏡に映る少年は女を突き飛ばした。
女はバランスを崩し手摺りを越えて五階のベランダから転落して行った。
祐樹は思わず叫んでいた。
「やめろーーーーーーーっ!! 」
祐樹は久遠を振り返り言った。
「どうして?!
どうしてキミがそんなこと知ってるの!!? 」
「君は帰る場所を思い出したようですね
ここは君が封印した記憶が並ぶ、君の精神世界ですよ……………」
祐樹は絶句した。
混乱を極め、祐樹はただただこの場所から一刻も早く離れたかった。
祐樹は久遠を回り込み出入口に近寄った。
「キミは誰?
何者なの?
ボクをどうする気なの? 」
久遠は構わず言った。
「君は知りたく無いかも知れないけれど、殺意と共に君の中で生まれたものがもう一つある…………………………………」
祐樹はそれには耳を貸さず部屋を出て廊下を走った。
『ここを出なきゃ!
とにかく帰らなくちゃ! 』
廊下を延々走り回るが玄関どころか階段すら無い。
突き当たりの部屋のドアが開いていた。
祐樹はそこを目指して走った。
部屋に一歩踏み出した途端、祐樹は暗闇に飲み込まれる様に真っ逆さまに堕ちて行った。
何処までも堕ちて行く。
堕ちる事に抵抗するのを諦めるまで。
暗闇の中を何処までも。
どこまでも……………………………………。
「なんだ、お前…………………
戻って来ちまったのかよ…………………………」
「……………………………」
誰かの声を聞いた気がした。
読んで下さって有り難うございます❗
最近アルルカンと云うヴィジュアル系ロックバントにはまっております。
アニマと云うミニアルバムをこの間買って聴いたのですが、Aliveと云う曲が目茶苦茶気に入りまして、毎日聴き捲ってます。
アコースティックバージョンで、voの暁くんの繊細な詩の世界とヴォーカルが切ないです。
それではまた明日。




